スズキ独自の油冷を思いきりナロウなフレームと208kgのスポーツ性に目覚めたネイキッドを目指す!

1995年、スズキはCB1000(Big1)やXJR1200のビッグネイキッド・ブームに対抗して、油冷1200ccのGSF1200を投入した。
狙ったのは先行するビッグネイキッドの真逆……大きくてドッシリした貫録で乗る大型バイクではなく、コンパクトで軽くコーナーを楽しむアップライト・スーパースポーツだった。
大きなネイキッドにはスポーツ性を求めない、1992年にリリースされたゼファー1100にはじまり、続いた2車も威風堂々をアピールしていたのにスズキは反発、それもこれも独自の油冷というパワフルで軽量な4気筒を持っていたからにほかならない。


1985年に登場したスズキGSX-R750は、フルカウルの思い切ったレーシーなルックスと、アルミフレームの超軽量マシンとして世界中から注目を浴びた。
しかし何より重要なエンジンが油冷方式という最大の特徴を、フルカウルで覆ってしまい見えないのがメカ好きなファンには惜しまれることのひとつ。
それがこのGSF1200からネイキッドに搭載され、見た目にも魅力としてアピールできるようになった。
この油冷方式、エンジンオイルを大型のオイルクーラーで冷却するだけに思われがちだが、実は画期的に凝った方式で潤滑用とは別のオイルポンプで燃焼室の外壁に高圧で大量噴射、このジェット噴射が境界層の高温部分を吹き飛ばして冷却するというもの。
このため潤滑オイルを5リットル以上(モデルで5.7リットルまで仕様違いが存在)必要とし、燃焼室のあるシリンダーヘッドからクランクケースへ戻す専用のトンネルを通り、水冷とは全く異なる構造となっている。
ベースはGSX-R1100で、ボアを1mm拡大して79.0mm×59.0mmの1,156cc、97PS/8,500rpmと出力を抑え、カムプロファイルを完璧に中速寄りとして最大トルクを9.8kgmを4,000rpmという低い回転域で得る特性へとチューン。
208kgしかない車重を、発進の度にウイリーさせる呆れた力強さを発揮してみせたのだ。

さらにそのダブルクレードル・フレームにも、開発陣は特別な思い入れを込めている。
エンジンのコンパクトな外観を活かし、ニーグリップまわりを思いきりナロウに狭めたレイアウトで、シート高そのものは795mmとけして低くはないのだが、この狭さのおかげで400ccネイキッドと変わらない足つき性を得ていた。
この幅の狭いフレーム・レイアウトのため、エンジン後部のマウント部分がピボット上で貫通箇所があり、これをカバーする樹脂プレートやアンダーループにマウントホルダーが目立つ、他にはない構成となっている。



ホイールベースも1,435mmと400ccクラスそのもの。
この操りやすさは異例で、バランスの良いデザインから過激なイメージは伝わりにくいが、腕に覚えのあるライダーでないと手に負えないキャラクターだった。
排気量から輸出向けが主力で、そうしたパフォーマンスに考慮して標準装着のタイヤを、ドイツのメッツラーのみとする割り切りよう。
そんなポテンシャルを引き出すヨーロッパのライダーからは、熱い人気で話題のビッグスポーツとして扱われていた。
また油冷を象徴する意味を込め、シリンダーやシリンダーヘッドに刻まれた冷却フィンは、ピッチが5mmと他にはない繊細なつくり。
鋳造工程の検品で落とされやすく、それもあって美しさはまさに溜め息モノだ。


当初はBANDIT(バンディット)のビッグバイクでのシリーズとして、国内向けではGSF750とGSF1200の併売でスタート。
その後に日本ではイナズマの車名のシリーズだったが、ヨーロッパではGSX1200として様々なカラーリングを纏い、ネイキッドのジャンルで人気車種として君臨していた。
国内ではデザインでBANDITのほうが好評なため、2000年に各部をリファインして継続モデルとして生産が続行されていた。
さらに2001年にはGSX1400と、油冷で最大の排気量まで拡大され、2009年まで油冷エンジンは存続していた。



こうしてビッグネイキッドといえば、スポーツ性とは縁のないジャンルとされていたのを、スズキは油冷を活用することでスポーツライディング派を目覚めさせ、海外では600ccクラスのユーザーも取り込む人気として当時の注目モデルだった。
エンジンは空冷で外観の美しさも楽しむのがスポーツバイクのあるべき姿、そんな原点復帰を世界中に示した存在として歴史に刻まれている。




