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このバイクに注目
SUZUKI
1985~2008model

スズキの独自路線を象徴する油冷エンジンの真実【このバイクに注目】

Photos:
スズキ,iStock(Yaraslau Saulevich / Nitcharee Sukhontapirom )

油冷は大型のオイルクーラーで冷やすと思いがち、
実はオイルを燃焼室外壁へ高圧噴射、
境界層の熱を吹き飛ばす画期的な方式

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手に息をそうっと吹きかけたら暖まるのに、
勢いよく吹くと冷える温度境界層の原理を使う

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油冷エンジンは他にないスズキのオリジナル。オイルクーラーを大型化して、循環ンするエンジンオイルでも冷却する方式をみることはあるが、それとは基本的に原理が異なるのだ。
スズキが1985年にGSX-R750で開発した"油冷"は、エンジン内部に潤滑用の他にもうひとつのオイルポンプを持ち、これで燃焼室のドーム外壁へ高圧でオイルを噴射する独自の冷却方式。

エンジンオイルは冷却水と違って100℃を越える高温になる。その高温なオイルを噴射して、果たして冷却に効果があるのかピンとこない人がいるかも知れない。
しかしこれは温度境界層といって、燃焼室の外壁表面の高温を吹き飛ばして熱を奪う原理。

たとえば寒いとき手に息をそうっと吹きかけると暖まるのに、同じ体温の息を強く吹きかけると冷やすことができる。
これは手の表層にある体温で暖められた空気の層を、吹き飛ばすことで冷えるからだ。

GS750/1000に次ぐTSCCの後継を独自に模索した"油冷"方式

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GS750/1000で初の4スト・ビッグバイク戦線に加わったスズキは、Twin Swirl Combustion Chamber=2渦流燃焼室のTSCCエンジンでクラス最高峰のパフォーマンスを得ると、これに続く次世代エンジンを模索していた。

テーマは耐久レース参戦が人気のヨーロッパで、レーシーなパフォーマンスのイメージをオーバーラップさせる他を引き離す独自路線。
ハイパワーであることはもちろんだが、圧倒的な軽量化でライダーがライディングの醍醐味を楽しめるマシンであることが前提条件となった。

そこでエンジンは重く複雑になる水冷化ではなく、2輪車では例がなかったレース用エンジン技術のオイルを噴射して冷却する方式で、軽量コンパクト化を狙ったのだ。
”油冷”は、開発中にテストでも油温が全開で長時間の負荷でも上昇しないメリットが明確で、エンジン各部も軽量コンパクト化が可能で、GSX750Sの80kgに対し僅か67.6kgに収まっている。

さらにアルミフレームの採用で、デビューしたGSX-R750は179kgと400ccクラス並みの圧倒的な軽さと、1,430mmのコンパクトなホイールベースのビッグバイクで初のレーサーレプリカの誕生となった。

スズキがチャレンジしていた耐久レーサーそのままのデュアルヘッドライトにフルカウル、前傾したライポジにスポーツバイクファンに垂涎のマシンとなったGSX-Rは、750ccに続いて1100cc版も加わった。

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そして”油冷”は燃焼室をエンジン内部で強制冷却するため、基本は空冷であるとはいえ、他の空冷のようにシリンダーに深く長い冷却フィンを持たない。
全体に短いフィンを短いピッチとする”油冷”を強調する美しい外観となっていた。

ただGSX-Rはフルカウルでエンジンが見えない。そこで後から登場したネイキッドに搭載したGSF系、もしくはバンディットで、この美しいルックスがひと際目立ち、新たなファンを獲得していったのだ。

エンジンの美しさを引き立てる曲面を多用した華麗なネイキッド

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”油冷”のネイキッドは、短いフィンを短いピッチで刻んだこれまでに見たことがない独得の美しさで、多くのファンの心を掴むこととなった。
ビッグネイキッドのブームと相俟って、1995年にGSF1200が登場、翌年に750も加わり海外でも評価の高い人気機種となった。

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そしてレーサーレプリカのほうは、パフォーマンスの進化で水冷化を余儀なくされていったが、ネイキッドのほうは2000年にフレームを一新したBANDITのシリーズへと進化していった。
そして2001年に1400ccへと排気量をアップしたGSX1400がデビュー。後にマフラーレイアウトを変更するなど限定バージョンも加わり、2008年まで”油冷”は長寿エンジンとして生き存えていたのだ。

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