高速道路を使った長距離ツーリング人気が高まるヨーロッパで、ツーリングスポーツのエアロ化に対応した系統を国内へ400cc版で導入!
1990年代へ入る前から、ヨーロッパではビッグバイクで高速道路を使った長距離ツーリングをするライダーが増え、これがより手に入れやすい価格帯の600ccミドルクラスへも波及してきた。
国内ではレプリカ路線で急先鋒だったスズキも、海外ではより安定してボリュームゾーンも大きいスポーツツアラーを意識した製品展開で、まさにそこをターゲットとしたGSX600Fをリリース。
ヨーロッパでも耐久レースブームに乗って登場したGSX-R750で定評のあった「油冷」750ccを600ccにスケールダウンして搭載、ただ快適性を最優先するエアロフォルムを纏うコンセプトから、フレームはアルミではなくスチールの角断面パイプで手堅く構成、タンデムしやすいサイズということもあって人気を集めた。
この流行りを日本国内マーケットにも導入しようと、400ccバージョンを企画したのが1988年に登場したGSX-Fだ。
当初は新しいカテゴリーであるのをアピールするため、車名から排気量の400を省き、レプリカ一辺倒で熱かった400ccクラスへオトナの旅バイクへ誘う広告展開で市場導入をスタート。
ただ400ccバージョンはエンジンを油冷ではなく、GSX-R400の水冷4気筒を中速域を重視したチューンで搭載、59ps/12,000rpmで3.9kgm/10,000rpmとスペック的にはハイパー仕様そのままにみえていた。
しかし質実剛健をコンセプトにしたGSX600Fのシャシーとカウルは重さも嵩み、センタースタンドも装着した車重は換装で183kgとビッグバイク並み。
見た目にもかなり大きな印象で、実際の走りはコーナリングも安定性があって曲がれる醍醐味を味わえるハンドリングだったが、スズキといえばGSX-R系のイメージが強かったこともあって、注目度は低いままだった。
対してレプリカ系には距離を置いていたカワサキから、同じようなコンセプトのZZ-R400が投入され、ツーリングスポーツの需要が徐々に高まる傾向がはじまりだした。
GSX-Fもこれにつられて徐々にニーズも増加、車名もわかりやすいようにGSX400Fへとあらためられていた。
こうしてカワサキのZZ-R系とニーズを競う存在として海外共々進化を続けていた。
日本では圧倒的にZZ-R400が人気だったものの、スズキも1993年からフルカウルのエアロスタイルがより特徴的なRF400Rへ受け継がれ、目立ちはしないがスポーツツアラーも意外と見かける存在となっていった。