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このバイクに注目
SUZUKI
GSX-F
1988~1992model

いちばん尖ってたスズキだけに対極GSX-Fでは思いきり「撫で肩」に!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

ヨーロッパでツーリングスポーツに特化したGSX600Fの国内向け400cc版をリリース!

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ヨーロッパのマーケットに向けて、スズキとそしてカワサキも、600~750ccのミドルクラスでツーリングスポーツを世代で様々なモデルを繰り出してきた。
何といってもこのクラスは最大の需要があり、タウンユースからツーリングまでユーザーもライフスタイルが多様だ。
しかもその時々で流行りもあるのだが、そこへターゲットを絞りきれてないモデルを投入すると知らん顔をされてしまう。
そんな経験からこの2メーカーは、同時期にコンセプトの異なる2機種を併売することもあった。
そんな鍛えられ方で育まれたミドルのツーリングスポーツに、日本国内ユーザーにもその良さを紙ってもらいたいと、いくつかチャレンジもあったが、レーサーレプリカもしくはネイキッドと、世界の潮流とはかけ離れたカテゴリーがメインストリームのライダーには刺さらなかった。
このGSX-Fも、輸出向けGSX600Fを400cc版に振り向けた好例のひとつ。
車名に排気量の400を含まずGSX-Fとしたのも、サイズがビッグバイク並みで大型免許なしでも乗れる大型車……的なニーズも狙ってのこと。
ただ日本のライダーにどうアピールしたら良いか?

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「近頃、つきあう女のタイプが変わってきた。なぜだろ。」
GSX-Fの雑誌広告で、こんなキャッチコピーがつけられていた。
これまで熱くなってきたバイクたちと違って、ちょっと大人の世界に足を踏み込んだバイクライフ、開発側からの思いはそうした急かされない過ごし方だったからだ。

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ただGSX600Fがお得意の油冷エンジンだったのと違って、400ccには当時まだ油冷がなかったので、GSX-R400の水冷4気筒をバルブ・タイミングやキャブレターの設定を中速域を重視して搭載、59ps/12,000rpmで3.9kgm/10,000rpmとスペック的にはハイパー仕様そのままみえるが、かなり実用域へ振った特性。
そして質実剛健をコンセプトにしたGSX600Fのシャシー(750cc版にも使っていたスチール角断面フレーム)とフルカウルは重さも嵩み、センタースタンドも装着した車重は乾燥で183kgとビッグバイク並みだった。

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見た目にもかなり大きな印象で、実際の走りはコーナリングも安定性があって曲がれる醍醐味を味わえるハンドリングだったが、スズキといえばGSX-R系のイメージが強かったこともあって、注目度は低いままだった。
対してレプリカ系には距離を置いていたカワサキから、同じようなコンセプトのZZ-R400が投入され、ツーリングスポーツの需要が徐々に高まる傾向がはじまりだした。
GSX-Fもこれにつられて徐々にニーズも増加、車名もわかりやすいようにGSX400Fへとあらためられることに。
いっぽうヨーロッパでは油冷600ccを本来の750cc版を搭載したGSX750Fをリリース、国内向けでも1989年に販売がスタートされた。
こうしてカワサキのZZ-R系とニーズを競う存在として海外共々進化を続けていたのだ。

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日本では圧倒的にZZ-R400が人気だったものの、スズキも1993年からフルカウルのエアロスタイルがより特徴的なRF400Rへ受け継がれ、目立ちはしないがスポーツツアラーも徐々に見かけるようになり、ようやくレプリカとネイキッドのみの選択肢に幅がでるようになっていった。