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このバイクに注目
HONDA
CBR1100XX
1996~2002model

CBR1100XXスーパーブラックバード。縦二眼をスラント化でフラッシュサーフェイスしたデザインの放つ威圧感!勝者ホンダを30年牽引したエンジニアたちが集大成した究極のフラッグシップだった。【このバイクに注目】

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HONDA

世界をリードしたCB、CBR、VFR、RVFの歴史を積み上げた経験とこだわりのありったけを注ぎ込む!

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スーパーブラックバード。米空軍で超高々度を偵察飛行する目的で開発された最高速度記録3529.56km/hの米空軍SR71のニックネームだ。
その名にあやかったスーパーブランクバードのCBR1100XXが誕生したのは1996年。
機密の塊であるSR71の機体を撮影に使えるワケもなく、アメリカホンダがモックアップで再現してまでこだわった超々スーパースポーツには、そこまでするに相応しい幾つものストーリーがあった。

まず何より特別なのがその開発陣。「量産市販二輪車で史上最速」にはじまり「空力性能と動力性能の高さが瞬時に感じられるデザイン」や「感動を呼ぶ加速性能」に「高速クルージングでもスムーズかつ安定したコントロール性」などの目標を掲げていたが、リーダーからMOST PLEASURABLE BIKEを目指すというとてつもない高みを標榜する思いが伝えられた。
CB750/900FやVFRなどビッグバイクで世界を制覇してきた、その当事者のエンジニアたちにとって、どんなパワーもどんなスピードも乗るライダーがエンジョイできなければ価値が半減してしまう……それを知り尽くした男たちがこのバイクを節目に実現させたかったからだ。

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ホンダには世界のスーパーバイク・レースで得た、インライン4気筒もしくはV型4気筒でのノウハウが豊富で、1992年の超軽量なCBR900RRで軽快で鋭いハンドリングも経験済み。
しかしこの開発プロジェクトが狙うのは、レーシーなハンドリングではなく高速クルージングでの安定性を含む広範囲なスーパースポーツとしての位置づけだ。
それでは従来のCBR1000Fの延長線上にあるのかというと、威風堂々のフラッグシップにありがちな快適であっても操る醍醐味から離れてしまう。
ということで、製品ラインナップでは最速フラッグシップなのだが、基本はあくまでスーパースポーツ側に位置することで、構成されるエンジンや車体に込める要素を詰めていく開発がスタートした。

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こうして世界最速モデルの座を目指したCBR1100XXは、新開発の1,137cc水冷DOHC16バルブ4気筒から164psのハイパワーと、エアロダイナミクスに優れたカウルのボディによって300km/hを実現していた。
そんな世界最速の座を奪還したXXのフォルムは、ライバルたちのフラッグシップに漂う「艶やか」さや「グラマラス」、いわゆる「なまめかしさ」を纏わないひたすら合理的に空力を求めたルックス。
とはいえ、縦二眼のヘッドライトを思いきりスラント化したフラッシュサーフェイスなスタイルは、むしろシンプルさに凄みを感じさせ世界中のホンダファンのハートを射ぬいた。
販売初年度の1997年に予定していた7,500台を大幅に上回る18,000台と、大人気のスタートを切ったのだ。
もちろんホンダらしく最大の魅力は技術の粋を集めた逸品のエンジンで、それを象徴しているのが2軸のバランサー。
振動の少ない4気筒だが、ピストンの往復運動である1次振動はキャンセルされてもコンロッドがクランクピンで振り子運動する2次振動が1,000ccともなると250cc単気筒並みに生じるという。
これを打ち消すためCBR1100XXは、ふたつのバランサーを駆動。これによって6気筒並みのスムーズさに加え、コンロッドを短縮できるのと振動のなさでラバーマウントせず車体の強度メンバーとできたりと、軽量化とエンジンサイズのコンパクト化への貢献度が大きなメリットをもたらしている。
さらにCBR1100XXでは、ギヤチェンジのシフトタッチを大人向けの高級感を与えるための剛性や軸間スペースの確保だったり、趣味性として語れるクオリティにも徹底的にこだわった。

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その結果、CBR1100XXは実質300km/hに届く最速マシンであるだけでなく、オールラウンドにバランスの良いハンドリングを達成した。
それも、たとえばフロントフェンダーに中空の縁処理で高速での風圧に耐えたり、サスペンションの微細な特性までリカバリーするクオリティ、さらにはユーザーが何かの目的でカウルを外したときガッカリしないよう配線やパイピングなど見た目に粗雑とならないフィニッシュなど、予定されていた開発期間を延長する執着心の塊だったという。

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そこまで時間をかけた理由のひとつに、開発エンジニアたちの卒業作品めいたニュアンスがあったことも否めない。
通常ならば時間切れで諦める部分があっても然るべきなのだが、このバイクにはベテラン揃いが係わっていて、何がプライオリティなのか明確であればこだわりを貫き通すことか可能だった。

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こうしてホンダでなければ成し遂げることのできない、究極の超スーパースポーツが完成、ひとつの時代の締めくくり的な存在として輝いていた。
それほどまでに、エンジニアの愛が込められた開発ストーリーに支えられたスーパーブラックバード。
こんな濃密なバイクづくりはこの先も当面はあり得ない……細かな部分を知れば知るほど、注ぎ込まれた情念の深さに感銘させられるバイクだ。