レース用ホモロゲートマシンが一般向けに売れてしまう時代!
スポーツバイクがレプリカとカテゴリーで区別されるほど、レーシングマシン直系にまでエスカレートした1980年代後半。
それは市販車でメジャーな250cc~400ccクラスから、鈴鹿8時間耐久レース人気から750ccで競われるTT-F1へと拡がりをみせてきた。
750cc以上はスーパースポーツといっても、1980年代以前はコーナリングを云々するカテゴリーではなかったが、ヨーロッパの24時間耐久レースの台頭と共に、レーシングマシン然としてきた経緯から、ヤマハでもFZ750からフルカウルを纏うFZR750へと発展、このマシンをベースに鈴鹿8時間耐久レースにワークス参戦するまでになった。
そして1987年と1988年の鈴鹿8耐を連覇したマシンをベースに、市販車ベースのこのクラスにベースマシンとなるワークスマシンのレプリカを開発することとなった。
その名も「OW01」オーダブリューゼロワン、1987年にホンダがワークスマシンのレプリカVFR750Rをリリースしたとき、RC30という型式名を併記して特別感をアピールしたのに倣い、ヤマハのワークスマシンが開発番号の前に冠するOWを使い、その市販化第1号という意味で開発コードのOW01を併記したのだ。
国内向けに限定500台でリリースされたOW01。ベースはFZR750だが、ボア×ストロークから異なる完全新設計エンジン。
もちろん海外向けにもOW01はリリースされたが、イヤーモデルとしては1990年からとなり、カラーリングもストライプが若干異なる仕様。
何れにせよカタログにはズラリと最新レーシングテクノロジーが並ぶ専門用語だらけ。
そのハイメカぶりにホンダRC30人気に対抗できるとヤマハ・ファンが高揚したのはいうまでもない。
ワークスマシン直系のレーシング仕様エンジンと車体まわり!
FZR750ベースとはいえ、ボア×ストロークが72.0mm×46.0mmと思いきりショートストローク化された749cc。
最高出力はフルパワー仕様で121PS/12,00rpm(国内仕様は規制値77PS/9,500rpm)で、この超高回転化に対応してピストンリングはトップリングとオイルリングのみの2本、そしてチタンコンロッドの採用とまさにレーシングエンジンそのまま。
5バルブの吸気側3バルブは2mm拡大のφ23mm、排気側2バルブも1.5,mm大きいφ24.5mmと極限設計の燃焼室を携えていた。
さらにバルブステム径をφ5.0mm→φ4.5mmと細くしながらバルブリフター径に至るまでコンパクト化、エンジン全体のサイズも縮小、因みにオイルクーラーも水冷化されている。
さらに排気系でもEXUPと排気管内に電動の可変バタフライを設け、排気の背圧コントロールにより高回転エンジンに生じやすい中速域の谷を解消、全域でトルキー且つハイパーなポテンシャルとしていた。
そしてヤマハお家芸だったアルミ鋼板によるデルタボックスのフレームも、シリンダー傾斜角を40°として、コンパクトなエンジンをリジット3点懸架、相乗効果で40%の軽量化と2倍以上の剛性を得ている。
サスペンションはオーリンズのレーシング仕様を奢り、減衰力のフルアジャスタブル化にガスショックと、考えられる最高峰の設定となっていた。
こうした仕様で200万円とリーズナブルでも当時としては高価な設定だったが、500台は予約抽選で売り切れるという加熱した人気ぶり。
海外向けはデリバリーが'89年には僅かで、翌年も継続されながら2002年モデルまで生産されていた。