XJ600Sのネイキッドをヨーロッパのニーズに応え2年後にリリース!
1989年にネイキッド旋風を巻き起こしたカワサキのゼファーによって、日本国内マーケットは中型クラスを海外とは全く切り離さなければならなくなった。
なぜなら600ccクラスはアベレージ速度の高いツーリング仕様を求めるようになっていて、ネイキッドスタイルはタウンユース限定イメージから需要が減ってきたからだ。
この流れと敢えて空冷で2バルブDOHCと、性能よりトラディショナルなオートバイらしさがミドルクラスのユーザーに好まれると睨んだXJ600Sの開発がスタートした。
これには400ccバージョンが同時開発され、1991年にXJ400S Diversionとしてリリースされたのはご存じのとおり。
ネイキッドでは1980年にXJ400で大成功を収めたヤマハとしては、この1989年からの新ネイキッドブームには否定的で、ライフスタイルとして進化したトラディショナルを国内向けには提案したのだった。
続いて1992年、欧米向けにXJ600Sをリリース、ヨーロッパではDiversion、アメリカ・カナダではそれまでのライイナップに沿ってSecaのニックネームがつけられていた。
ただヨーロッパでは空冷DOHC2バルブであれば、むしろノンカウルでタウンユース・イメージのXJ600の後継機種が欲しいということになり、1994年からXJ600Nがヨーロッパ向けだけに追加されたのだ。
35°前傾の空冷DOHC4気筒2バルブはミドルクラスで手堅さの評価
新規に設計された空冷4気筒600ccエンジンは、吸気と排気をダイレクトに駆動するDOHCながら何と敢えて2バルブ仕様。
ボア×ストロークは58.5mm×55.7mmの598cc。最高出力は61PS/8,500rpm、最大トルクが5.6kgm/7,500rpmと、前傾35°でダウンドラフト・キャブレター装備で新しい世代をアピールしつつ、尖っていない実用域を重視したスペックだ。
フレームはダブルクレードルだが、タンクレールがそのままステアリングヘッドとを結ぶ新世代レイアウト。
リヤにモノサス装備でシンプルな構成なことから乾燥で187kgと扱いやすさを感じさせる。
排気の取り回しでエキゾーストをクロスさせながらエンジン下で4本を束ねるなど、排気効率とサウンドにも配慮、トラディショナルな雰囲気を醸し出すコンセプトが貫かれていた。
シリンダーの冷却フィンも目立つ存在で、エンジン音の反響まで反映させた形状とするなど凝ったつくりになっている。
その美しさは、いま見てもヤマハ空冷4気筒で抜きん出たレベルでといえるのは間違いない。
1994年のデビューから4年間はフロントブレーキがシングルディスクだったが、1999年モデルからはSバージョンと同じダブルディスクとなっている。
カラーバリエーションも、ヨーロッパのミドルクラスを意識した展開。
ただ国内では1993年から新ネイキッドのXJR400が存在することから、XJ400Nは生産されなかった。
ただ唯一の例外として、XJ400SをベースにネイキッドとしたXJ400Lが、教習所専用の車輌として少数だが生産されていたので、一部のライダーのは見覚えのあるモデルかもしれない。
欧米のユーザーが、基本設計から手間をかけた内容をよく見極め、長距離ツーリングの頻度が低いユーザーを中心に、その手堅さが評価がされていたのも、マーケットをよく知っているヤマハならでは。
これがその後に高い評価でヒットした、FZ6S/Nへと受け継がれていったのだ。