ゼファーとスーパーフォアを睨みながらXJRの位置づけを決める!
1980年、400ccクラスでヤマハ初の4気筒、XJ400が登場した。
ホンダCB400フォアが途絶え、久しぶりに登場した4気筒のカワサキZ400FXが、DOHCというZ1を彷彿させるハイメカ仕様で圧倒的な人気を得たのに触発され開発、国内向け400ccクラスで初の販売首位を獲得する大ヒットだった。
その後、水冷化したXJ400Zへと進化したが、レプリカブームの勢いにネイキッドは一旦は下火になり、そのブーム終焉と共にカワサキはゼファーをリリース、一世を風靡したのはご存じの通り。
このゼファーとホンダからCB400スーパーフォアが、日本国内の独得な価値観で時代を築いていくのに対し、ヤマハも新ネイキッドを画策していた。
そして開発したのは、水冷ではなく再び空冷の4気筒として1993年にXJR400をリリース。
エンジンはかつての水冷XJ400Zをベースに空冷化。ただベースといっても生産設備を共有化するため、クランクからミッションへと各軸間を同じくするくらいで全面的に新設計、バルブ挟み角を敢えて64°と大きくとってカムシャフトピッチ(間隔)の離れた大柄なDOHCヘッドの外観と、中速寄りにバルブ径を拡大したペントルーフ燃焼室だ。
シリンダー前傾角を14°に設定したボア×ストロークが55×42mmの399ccは、新しい馬力規制値上限の53ps/11,000rpmと3.5kgm/9,500rpmというスペック。
排気は4-2-1集合(エキゾーストパイプ部分で2番と3番を連結)、メガホン形状のサイレンサー内部を反転式として、低周波の力量感にこだわったエキゾーストノートを聴かせる。
フレームは完全なダブルクレードルで、エンジンマウントは3箇所ともリジット。
剛性感をたっぷり感じさせる取り回しと、前輪がリーンでやや遅れる弱アンダーステアのお得意ヤマハ・ハンドリングに徹した設定がされていた。
この全体のパフォーマンスは、ゼファーとは対極に対極あるスポーツ性重視。またホンダCB400スーパーフォアのような、クランクマスを極端に大きくして大型バイク的な穏やかさを狙うのとも違い、高回転時には腕に覚えのあるライダーには相応の刺激を楽しめて、中速域以下では開けて曲がれるワインディングのポテンシャルを高める特性へまとめていたのだ。
こうして、いかにもヤマハらしさを湛えた走りのキャラクターで、安定性をベースに安心してコーナリングが楽しめるスポーツ性に、ヤマハファンは小躍りしていたが、レプリカに慣れたテスターが多いバイク雑誌からは、狙いが不明確な印象からそれほど高い評価は得られずにいた。
足回りをアップグレードしながらXJR400Rへと進化……
そんな理解度を高めようと、ヤマハはXJR400にサスペンションをグレードアップしたSモデルや、ブレーキにブレンボ製を奢ったRモデルを加えていく。
カラーリングもそれまでの渋いブラックと明るいメタリックやキャンディートーンから、パールホワイト系にシルバーも展開、エンジンをブラックアウトにペイントしてカジュアルさとトラディショナルな新しさのアピールを試みていた。
またミニカウルをマウントしたRIIも加わり、スポーツ性を前面に打ち出したもののライバルと同じようにこの手法は功を奏さず、ネイキッドは潔くネイキッドのままを維持する流れへと明確化していったのだ。
そして1998年、XJR400はベースモデルもXJR400Rと"R"を車名に表記するモデルチェンジをうけた。
大容量化した燃料タンクなど、XJR1300の新デザインと統一感を感じるフォルムとなり、その後にヤマハのレーシングイメージでもあるブルー系にイエロー系もラインナップされ、燃料タンクのエンブレムに音叉マークを復活させるなど、トラディショナルさも加味したいかにもヤマハ・ファン向けな仕様へと変遷を遂げている。
しかし2007年モデルを最後に、空冷400ネイキッドは終焉を告げた。フューエルインジェクション化など排気ガス規制への手立ては残されていたが、空冷の冷却フィンが振動で鳴ってしまう面など、空冷デザインを守れない事情も継続を諦めた要因でもあったが、最大の理由は国内向け400ccクラスの販売台数の落ち込み。
コスト的に新規の開発が見込めないマーケットとなったのが一番の原因だった。