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このバイクに注目
HONDA
VT250F
1984~1986model

2世代目VTZ250F/Zはまさかの40PSで売れまくった!【このバイクに注目】

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HONDA

250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ!

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ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリースした。
何とリッター140PSの35PSを11,000rpmの超高回転で発生、レッドゾーンも12,500rpmとGPマシンそのままに思わせるハイメカ・エンジン。
35PSといえば1980年に排気ガス規制で消え行く運命といわれた2ストローク250ccで、衝撃的な復活の狼煙をあげたRZ250の最高出力と同じだった。
この目を見張るパフォーマンスに、ホンダファンならずとも注目のバイクとなり、凄まじい勢いで瞬く間に増えていったのは忘れられない。

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そのVT250Fが2年後にモデルチェンジ。マスコットカウルをボディマウントのハーフカウルへと大きくルックスを変えたが、一番の驚きは4ストの市販250ccではさすがに限界と思わせていた35PSを、何と40PSと大幅に上回るパワーアップをしてきたこと。
しかも発生回転域はさらに高い12,500rpmで、レッドゾーンも13,500rpmと破天荒な常識破りの塊り。
このパワーアップは、ハイイナーシャポートと呼ばれるキャブレターからのインテークマニホールドに、2バルブへ流入部分にフィンをつけ整流する構造を採り入れた効果という。
それは高回転時のみならず、流速が下がる低回転時にも充塡が効率良くできるため、中速以下の粘りなどあらゆる回転域で功を奏していた。
さらにコンロッド剛性を高める表面硬化処理が施され軽量化、ピストンも133gから121gへと大幅に軽くしている。
点火もデジタル式フルトラジスタ方式で、アイドリング回転域と高回転域の2段階から全回転域に応じてリニアに適応する内容へとグレードアップされていた。
またフレームも、角断面のパイプにより高剛性で軽さも得る最新の手法でダブルクレードルのまさにスーパースポーツのシャシー。
他にも後輪が17インチとなりフロントのインボードディスクも冷却風を取り込む解放面積を大幅に拡大していた。

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ボア60.0mmでストロークが44.0mmと超ショートストロークの248ccは、低い回転域からでも扱いやすくなった特性と共に、前輪のアライメントや後輪の17インチとのコンビネーションで、VT250Fはクイックでやや過敏な初代とは違い、落ち着いた安定感が支配する、粘りのあるハンドリングとして評価が高かった。

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そしてNewVT250には、カウルを持たないネイキッドのVT250Zがラインナップに加わった。
ボディマウントされハーフカウル仕様となったNewVT250Fに対し、カウルを持たないシンプルなトラディショナルさが人気で、さらに広範囲なユーザーから支持され、早々とシリーズ10万台を記録する好結果の連続だった。

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因みにドラムブレーキに見えるインボードディスクについて少し触れておこう。。
当時は鋳鉄製ローター(ディスク)が真綿感覚という、かけはじめのタッチを高く評価され海外メーカーで採用する例もあったが、露出しているので濡れた後に乾くと錆が発生するのを日本メーカーはネガティブに判断、錆びにくいステンレス素材を使い、効きやタッチを犠牲にしていた。
それを払拭するホンダ独自のカバーされた構造のシステムとして、鋳鉄ローターが使えるよう開発されたオリジナルのブレーキシステムだった。
後にステンレス系でもタッチが大幅に改善されたことから、インボードディスクは姿を消したが、その人間の感性に馴染みやすいタッチは忘れ難い。

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安定した人気のVT250系だったが、パワーをさらに43PSヘと高め、フレームをクレードルタイプから角形ツインチューブとした1986年モデルへと世代交替。
1988年にはアルミ一体成形のフレームを持つSPADA(スパーダ)も誕生、1991年にトラディショナルなXELVISに変身を遂げたが、そのVT250のVツインもいつの間にか20年を越え、あらためてトレリスフレームにマウントしたベーシックスポーツとして、シンプルなルックスのVTRとしてリファイン、2017年に生産中止されるまで実に35年間ものロングランを記録していた。