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レーシーなイメージの片持ちスイングアーム。 以前より多く見るのは2本より優位だから?【教えてネモケン088】

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最新スーパースポーツは、いつの間にか片持ちスイングアームが多く採用されています。
ということは、進化して2本スイングアームより優位になってきたのでしょうか?

A. どちらもメリットが違うので、優劣だけでは語れない部分があります!

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‘80年代からのファンならば、ホンダがV4エンジン系でレーシングマシンからスーパースポーツまで、プロアームと呼ばれる1本のスイングアームで、片側から後輪を支持する方式を唯一誇らしげに採用していたのをご記憶でしょう。
それがドゥカティやMVアグスタなどのイタリアンで使われはじめ、BMWではシャフトドライブの全モデルが片持ちスイングアームだったりトライアンフもと次々に採用、外国勢でいつの間にか少数派ではなくなっています。日本車でも最新のカワサキH2が採用しているので、もう技術的に片持ちのほうが上回ったのかと思えてきます。

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一世を風靡したホンダのプロアームは、ワークスマシン直系の限定マシンRC30で多くの憧れとなった

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片持ちだと後輪ホイールのデザインがアピールできることから、ご覧のMVのように素材から異次元を感じさせて楽しませてくれる

しかし、昔ながらの2本スイングアームも主流の座を譲ってはいません。MotoGPマシンとか、極限性能を求めるケースでは、依然として2本アームですよネ。ではどちらが優れているのでしょうか?
これはお互いメリットが違うので、どちらに軍配が挙がるというモノではないように思います。
片持ちスイングアームは1本だからといって、2本アームより軽量になることは無いでしょう。相応に剛性が必要なので、結局はあまり変わらない、もしくは若干重くなるケースもあります。これがMotoGPとかで採用されにくいファクターなんですネ。

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片持ちスイングアームのメリット、デメリットとは?

では片持ちだと何がメリットなのか、それは後輪を支えるアクスルまわりの剛性が確保しやすいこと、さらに鋳造などカタチを自由にデザインできて製造工程を減らせる、つまり部品点数が少なくて済むなどです。
アクスルまわりの剛性確保は、2本アームだと主に幅を狭めるため縦長形状を余儀なくされることから、後輪の車軸と90度の角度で組まれるアクスルホルダーと接する面積を稼ぎにくく、どんなにアクスルをボルトで締め上げても一体化されたような剛性は稼げません。
片持ち支持は、アクスルホルダーを大径にできて、これを円状に接するクランプで締め上げるので、接触面積の大きな一体化に近い剛性が確保できます。それと形状から鋳造パーツとなる場合がほとんどで、スイングアーム自体は剛体として捻り方向にはめっぽう強くできます。
ただ剛性を確保しようとするほど、アクスルホルダーの径も大きくなり、重量が嵩んでしまう宿命も背負ってはいます。
それと耐久レースなどで、タイヤ交換がセンターロック方式によるエアインパクト一発で瞬間的に終わらせることができるというメリットがあります。ホンダがプロアームへスイッチしていったのも、鈴鹿8耐での強みをアピールしたかったのは間違いありません。

よく言われがちな片持ちは左右非対称なので
コーナーによってフィーリングが違うというのは
気にする必要ありません。

確かに片持ちスイングアームは形状が左右非対称になります。だから右コーナーと左コーナーで特性が違って乗りにくい……というのは説得力がありそうですが、1本だからというのは理由になりません。
そもそも2本アームも、良くご覧になればわかるようにビッグバイクでは左右対称にはなっていません。
というか、できないのです。ドライブチェーンがセンターに位置しないのは当然ですが、これに対し捻られないよう形状を考案すると、結局は左右非対称になります。ましてやマフラーの取り回しなどに配慮したカタチになる位置的な問題も加わります。
その昔、ボクもNR750で片持ちレーシングマシンを経験しましたが、そのとき確かに左右で違いを感じましたが、これは初期の四角い断面のままだった1本アームだと左右に振動しやすかったからで、非線形という曲線や曲面を組み合わせたカタチを介在させることで共振を抑えたら解決しました。
もとよりバイクはエンジン位置など、目で見てもわかりますが意外なほど左右対称にできていません。左右で重さや質量もかなり違っています。でもほとんどの場合、慣性力による走行安定性がライダーに違いを感じさせていないのです。

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海外メーカーの設計者たちが片持ちを選ぶのは
新しさへの挑戦を感じさせる方式だから

最後にヨーロッパ勢の片持ち設計者たちが残してきた言葉を添えておきます。
ドゥカティやMVで採用をはじめたタンブリーニは『技術的にまだ可能性を秘めているのは片持ちだ、使いはじめればさらに良くなる。新しいコトへの挑戦は、バイクにとって常に必要な姿勢と信じている……』そう言ってました。
BMWのエンジニアは『シャフト駆動のメカニズムがスイングアームを貫く宿命という時点で、2本アームの選択の余地はない。いくつもの機能を兼ねて少ない部品点数にシンプル化していく、それはデザイン面でも新しさのアピールとなるはずだ……』

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Words:根本 健 Photos:本田技研工業,MV AGUSTA,DUCATI,カワサキモータースジャパン,BMW