A.フルバンクのままシフトアップするからです
ペダルの下につま先が入らない
レーシングマシンのギヤチェンジパターンは、一般のスポーツバイクと逆のパターン、1ダウン5アップではなく1アップ5ダウンが主流です。
理由は明解で、一般的な1ダウン5アップだと左コーナーをフルバンク中にブーツが路面に当たるのでシフトペダルの下に入らず、シフトアップができないからです。
レースではコーナリング中であろうとエンジン回転がレッドゾーンへ達すると、パワーがピーク域を越えてしまうため、次のギヤへシフトアップしないと加速が途切れてしまいます。
つまりフルバンク中でも、シフトアップが必要なシーンはいくらでも巡ってくるのです。
そこでシフトペダルを上から踏み込むシフトパターンにして、フルバンク中のシフトアップを可能にしたのです。
パワーシフターがレースでは必須
これをさらにクイックなシフトアップとして、加速を途切れないようにしたのがパワーシフター。
チェンジペダルに装着された感圧センサーで一瞬の点火カットをして、クラッチを切らずともスロットルも戻さず開けたままシフトアップが可能です。
これは市販の最新スーパースポーツでも装着するモデルが増えているので、その便利さは徐々に知られはじめています。
とくに苦手な人の多いシフトダウンで、エンジン回転差によるショックを緩和する空吹かし(プロはブリッピングと言います)も自動でやってくれる便利さです。
ということは、レーシングマシンだとコーナーでの減速、シフトダウンはペダルを踏み下ろすのではなくかき上げる操作になります。
今度MotoGPの中継で、コーナーへ突っ込むシーンを見たとき、左足首がかき上げる動作をしているのを確認してみてください。
ちなみにMotoGPマシンはシームレスミッションといって、一般のスポーツバイクとは構造の異なるシフト方法が使われています。
これはパワーシフターのような点火カットしてエンジン駆動力を一瞬途切る必要がなく、全力加速の駆動状態のままシフトアップできるレース専用仕様。走り出してしまうとニュートラルポジションは存在せず、停車時など必要なときはニュートラルスイッチを使います。
- Words:
- 根本 健