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MotoGPマシンのカーボンブレーキはカスタムパーツで装着できますか?

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A.例外的に入手可能な超レア状態で、一般向けはまだ時間がかかりそうです

なぜMotoGPは、カーボンブレーキを装着?

カーボンパーツといえば、カスタムの頂点クオリティとして憧れの素材。
金属並みの強度と異様なほど軽量なため、性能が最優先のレーシングマシンでは、カウルやシートなど外装品から、ホイールにいまやフレーム素材まで応用されています。
ただ製造工程がほぼハンドメイドで、強度のために高温処理があるなど、時間もかかるのでとてつもなく高価です。

でもどんなに高コストでも、憧れの素材となるとカーボンパーツは、いつか装着してみたい衝動にかられますよネ。

ところがブレーキとなると、まだレース専用でカスタムパーツとして一部を除き一般的には発売されていません。なぜでしょう?

レース環境でしか性能発揮されないカーボンブレーキ

MotoGPマシンが装着しているカーボンのディスクブレーキは、ふたつの必然からすべてのマシンが装着しています。
ひとつは300km/h以上もの超高速域から、従来のスチール系ディスクブレーキより高温域が前提なため、強力で安定したストッピングパワーが得られること。
ヤマハのワークスマシンM1で、このカーボンブレーキを300km/h近くからかけたことがあるのですが、かけた瞬間ガツンと強烈にこないと思った直後、効きはじめたら両肩へ腕がのめり込むのかと思うほどモーレツなストッピングパワーでした。

もうひとつの必然は、カーボンですから軽量この上なく、ローター(ディスク)1枚でおよそ1,300gほどしかありません。これはスチール系のおよそ1/4しかないという軽さ。

いうまでもなく、ブレーキはローターもキャリパーもバネ下といって、サスペンションから下側の路面とダイレクトに接している部分。ここが軽ければ、路面の細かな凹凸にも追従できるためタイヤのグリップ力に大きく貢献します。

というほどパフォーマンスを左右するカーボンブレーキ、レースで必須なのはお分かりいただけたと思います。
しかしスーパーバイク世界選手権ではこのカーボンブレーキの使用が認められていません。世界タイトルを争う頂点クラスでも、装備できるのはMotoGPクラスだけなのです。
どうしてそんなことになっているのかという理由が、一般でカスタムパーツとして出回らない要因でもあります。

ライフが条件次第で変わってしまう

スーパーパフォーマンスなカーボンブレーキですが、200℃を越えてからが本領発揮。冷えた状態から強くかけないと温度が上昇せず驚くほど減速できません。
ただ最近はある程度は強めにかければ、タイムラグはわずか一瞬で、すぐ効きはじめる特性に改良されています。
以前はウエットだと冷えてしまうのでカバーがついていたり、割り切ってスチール系へ交換していたのが、最近ではそうでもなくなっています。

しかし適温がおよそ800℃と高温が前提なのに、1,000℃を越えると急激に摩耗してしまうという厄介な特性もあります。
高速サーキットで、以前より激しいブレーキングを繰り返し、予想できない摩耗でブレーキパッドが薄くなってキャリパーから落下した、などというアクシデントも2020年シーズンに起こりました。

これは、たとえばローターのカーボン複合素材と、パッドのカーボン複合素材が擦り合ってできた被膜が、制動力の強化を誘因するなど、複雑に高次元化していることもあります。
カーボンといっても熱処理など含め複合素材化がまだ進化している渦中で、すでにカーボン/カーボン/コンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)と呼び方もややこしいなら、数週間から数ヶ月も窯で焼く工程があるなど、量産できる性質のものではないのです。

これだけの手間と時間がかかれば当然ですが、フロントだけで100~120万円ほどするといわれています。一般公道での使用では安定した性能が得られないことを考えると、とても実用化の域にあるとはいえないでしょう。

クルマだと、スーパーカーなど高価ではありますが、カーボンブレーキを装着した一般公道仕様もあります。ただこれはレース用ほどシビアな材質管理をしない製品で、摩耗も通常のスチール系よりライフが長いなど性能も安定しています。

二輪でもレースパーツほど高性能を狙わなければ、スーパーカー用と同じように性能とライフが安定した製品も出てくる可能性はあります。そうなれば、カスタムパーツの目玉になるかも知れないので、ファンは目が離せませんネ。

Words:根本 健