ハンドルからチカラが抜けずうまく曲がれません
A.左手の外指2本ホールドと手首をまっすぐで驚くほど曲がれます!
バイクの前輪舵角はハンドルではなく車体の傾きによるセルフステア!
よくハンドルからチカラが抜けていないと、うまく曲がれないといわれています。なぜならバイクはハンドルで前輪を左右に切って曲がる構造ではないからです。
ハンドルを切っても曲がれない……のは乗れば誰でもわかります。バイクは車体を傾けて曲がります。でもそのとき前輪はどうなっているのでしょうか?
タイトルの画像をご覧になるとわかるように、車体(後輪)が傾くと前輪がその傾きに促されて僅かに舵角がつきます。これを「セルフステア」といって設計時にフロントフォークの角度やブラケットのオフセット量をバランス良く設定することで、ライダーがイメージした曲がり方に従順な反応をするようにしてあるのです。
しかし、このときハンドルを押したり引っ張ったりの舵角を押さえるチカラが加わると、前輪が後輪の旋回に追従せず曲がりにくくなり、後輪も旋回力が弱まって曲がれる能力を妨げる結果となります。
この「セルフステア」を妨げないようハンドルからチカラが抜ければ良いのですが、そうはいってもハンドルは両手で掴まり上半身を支える箇所。チカラを抜くといってもどこをどうすれば良いのか、わかりにくくて当然です。
実は意外にカンタンで、まず左手首をまっすぐにします。
この手首の角度、長時間乗り続けると、いつの間に上半身の重みを支えるつっかえ棒の役割をしがちで、❌のように手首が曲がってくるライダーが圧倒的です。
しかしこの手首に角度がつくことで、ハンドルを押しやすくなり「セルフステア」を妨げてしまいます。まっすぐにしていれば、妨げることはありません。
右の手はスロットルを回したりで、ここへ体重をのせることはまずないので気にしなくて大丈夫です。
そしてもうひとつ、左のハンドルグリップを、親指のつけ根側で握らず、薬指と小指の外側2本でホールドします。
この左手首の角度と外側の指2本ホールドのセットで、ハンドルを押さえにくくなるのと、長時間のライディングで手の平が痛くならない対策の両方をクリアできます。
誰かとペアで前輪を抑えなくなる違いを実感してみましょう!
左手首と指2本で、ビックリするほど曲がりやすくなるのは、交差点の左折レベルでもわかります。
しかしお奨めは、誰かとペアを組んでひとりが前輪を左右に振ったり叩いたりして、その違いを実感する検証をしておきたいところです。
手首の角度と親指側と外指2本側との❌と⭕の組み合わせで比較すると、❌はハンドルで押さえやすくなっているのが前輪を揺すっている人にはよくわかります。⭕だとライダーも押さえようにも押さえにくく感じるはずです。
また❌だと小さな動きが振動レベルでは伝わりますが、⭕では僅かな動きも舵角方向の反応として感知することができ、慣れてくるとこれが前輪のグリップ感という信頼の絆になっていきます。
これらは前輪のキャスター角とオフセット量によるトレール量との設定で調整されていて、それぞれの機種でエンジン位置など重心との関係やホイール径など、複雑な要素をバランスさせていく重要な鍵を握っているのです。
この絶妙な設定をうまく使いこなすためにも「セルフステア」を妨げない、ハンドルからチカラが抜けたライディングが何より重要になるのです。
ツーリングに出かけたら、最初は数分おきに左手を確認、馴染んできても30分に1回はチェックというように、意識せずとも左手首がまっすぐで外指2本ホールドになるように馴染んでいきましょう!
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- 藤原 らんか,渕本 智信