レース経験あるはずもないビギナーに、走行のモード切り替えが使いこなせるワケないので、触らないほうが良いですよネ?
A.ライダーに安心と醍醐味を与えるのがモード切り替えなのをお忘れなく!
尻込みしそうな何でも調整できる電子制御デバイス
最新パニガーレV4Sではエンジンブレーキの強さも任意に設定できる!
最近はデバイス技術がバイクの進化の中心といえるほど目覚ましいものがありますよネ。ハイパーマシンでライダーがミスを冒したときのリカバーにはじまった開発の流れは、いまや限界域だけでなく様々なシチュエーションでより扱いやすい設定も選べる汎用性の広い領域へ及んでいます。
そのおかげで、ボクでさえ尻込みする超パワフルなスーパーバイクに、楽しみながら乗れる新たな可能性を感じさせています。
そこまでして、つまりデバイスの助けで乗るくらいなら、パワーを抑えたシンプルなバイクで楽しむほうがイイというご意見もあるでしょう。それはそれで正しいとも思いつつも、やはりマシンを操ることだけに特化したスーパーバイクの魅力の片鱗を、多くの人が楽しめるいまの状況は素晴らしいと思います。
ただ仰有るようにトップエンドのマシンになるほど、エンジン特性から足回りまで実に細かく管理されていて、それを好みでチョイスできる設定が用意されています。
しかもマシンの動的な状態を感知して……など、解説を読んでいるだけで何のコトやらわからず、そこを理解しないと自分なりの設定ができないとしたら、そんな高度な仕様は宝の持ち腐れに過ぎないという気持ちになりますよネ。
しかし、これはサーキットでレースやスポーツ走行を楽しむ専用のもので、そういった状況で経験を重ねたら可能性として功を奏してくる、いわばオマケのようなものと考えておきましょう。
それよりも誤解してならないのはモード選択です。サーキット走行の機会があったからといって、モードをスポーツやサーキットにセレクトして走るのは、一般公道のワインディングに慣れたライダーでもいきなりでは面食らうはずだからです。
サーキットといっても、一般公道ではあり得ない高速コーナーばかりのコースとはかぎりません。ヘアピンが連続して、ギヤも2~3速がメインのコースなら、一般公道とシチュエーションは同じです。
実際、ボク自身が乗っても、ほとんどのコースで相当に乗り込んでからでないと、モードをスポーツやサーキットなどハイアベレージに選択したメリットを感じられる領域へ辿りつけません。なぜならエンジンレスポンスにしても敏感過ぎて、コーナーで開けるときに神経を尖らせていないといけないですし、足回りもコーナー入り口で動きを抑えてしまうので思うように曲がってくれず、立ち上がりでも意に反して膨らんでいってしまうからです。
これはレースでのセッティングと同じで、乗り込んで慣れてくると勢い良くリーンするため荷重が抜ける瞬間を利用したり、フルバンクで加速するとき体重を後輪イン側へタイミングを合わせて載せていくといった、極端な表現をするとコケそうにしたり滑りそうになる領域を使いはじめると、必要になってくる設定だからです。
パワフルさと強烈なコーナリングだけが高価なマシンのパフォーマンスではない
つまりサーキットといえど、せっかくの対向車もない環境で走りを楽しもうと思うのであれば、一般公道で慣れた設定で走り出すのがお奨めです。暫く走り込んで慣れてきたと思えてから、より高荷重を前提とした設定を試してみてください。そこで乗りにくかったからといって、ご自分のライディングを悲観することはありません。走る目的が違うのですから、これは自分向けではないと躊躇せず元に戻してしまいましょう。楽しんでナンボの時間を辛いまま過ごすなど、意味がありませんよネ。
自分のレベルはバイクが前提にしているライダーよりビビったり経験が低いので、頑張っていずれは乗りこなせるよう努力をする……などと思うこと自体ナンセンスです。
もっと言わせてもらうと、こうしたモードを選べるバイクを手に入れたら、暫くはレインモードで走ることをお奨めします。絶対に滑らない、そして路面追従性を優先した動きのよいサス設定は、バイクの重心位置やタイヤの存在感など、ライダーが安心や信頼を感じる入り口の情報をわかりやすく伝えてくれるからです。先ずこの状態で早くバイクに馴染み、そこからモードを試してみましょう。
さらに本音を付け加えると、大半のスーパーバイクは、一般公道をレインモードのままで充分楽しめます。思いきってコーナー立ち上がりで全開すると、フロントが路面から離れたような一瞬を楽しめたりするのですから、これで何が不足ということもないと思います。
最新のレインモードはそこまで高度なサポートをする巧みさを備えています。スーパーバイクだからこその軽量コンパクト、そして妥協のない曲がるために設計したシャシーやアライメントを、怖々ではなく楽しめるように環境を用意してくれるのです。宝の持ち腐れではなく、まさに最新の仕様だからこそ、以前では考えられない楽しみ方ができるのですから。