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Q. エンジン始動後すぐに高回転の空吹かしはダメ?【教えてネモケン132】

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回転計のレッドゾーンが16,000rpmからのバイクを買いました。サーキットまで運んでもらい、自分で乗ったら怖くて回せないので、憧れの高回転エンジンのサウンド聴きたくて、始動してレッドゾーンのギリまでギョーン・ギョーンと空吹かし。そしたらエンジン壊すと注意されました。レッドゾーン守ってるのに、そんなに脆いものなのですか?

A.エンジンが始動してすぐの冷えているとき、いきなり高回転まで回すとエンジンオイルが行き渡る前で、あちこちに引っ掻き傷をつくるかも知れません。それにレッドゾーン手前でも、空吹かしだと無負荷でレスポンスに勢いがあり、バルブがピストンに当るかも知れません。

エンジンが暖まってからスロットルを捻ろう!

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レースシーンを観ていると、マシンのエンジン始動後にギャオン・ギャオンと高回転域でスロットルを開け閉めしてウォーミングアップしているように見えます。

でもその前に2,000rpmとか低い回転を一定にキープしたまま、エンジン全体が暖まるのを待っている時間があります。
静かなので気がつきにくいですが、メカニックがシリンダーボディなどに手を当てて、暖まっていくのを確かめています。
なぜそのようなもどかしい時間が必要なのでしょうか。

エンジンオイルは、始動直後だとすべての部分を潤滑できません

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エンジンを停止すると、潤滑していたエンジンオイルは高温で液体のような状態で、エンジンの下の方へ流れて溜まっています。
これが長い時間を経過すると、エンジンの丈夫にあるバルブ駆動まわりですっかり乾いた状態になりがちです。

それにピストンが上下するシリンダーの筒の中も、同じように乾いた状態に近くなります。
そんな状態で、いきなり高回転域まで回したら、数秒後にポンプから勢い良くオイルが圧送されてくるとはいえ、金属が擦れる様々な箇所で傷がつきやすいなどのリスクはあります。

空吹かしだとレッドゾーン手前でも、バルブがピストンへ衝突するリスクも

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エンジンは1回の燃焼でピストンを押し下げる力を回転に換えて、バイクやクルマを走らせます。
この1回の爆発をたくさん繰り返せば出力は増えるので、高性能なエンジンほど高回転化されるのです。

しかし、その高回転化にも限度があります。
ピストンは往復しているので、あまり高速でシリンダーと擦れると熱膨張で焼き付くかもしれません。

それより心配なのが吸気と排気のバルブ。強いスプリングで引っ張りあげて燃焼室の密閉性を維持しているのですが、この開けたり閉めたりの往復を駆動するカムの形状に、高回転域で追従ににくくなるとピストンが高い位置にあるときバルブが開いたままになることもあり、衝突すると破損してエンジンブローというマフラーから白煙が出て、分解修理をしないと2度と運転できない状態に陥ります。

エンジンによって仕様が違いますが、この危険になる回転域を示しているのがレッドゾーン。
この手前が最もパワーが出ている領域なのですが、レッドゾーン手前でシフトアップが必須となります。

ただ回し過ぎのミスを冒さないように、最新のエンジンにはレッドゾーンで点火カットして、それ以上回らないようにするフェイルセーフ機能が標準化されています。
しかし空吹かしだと、エンジンに負荷がかかってないため、回転が高まっていく勢いが強く、点火カット領域でもバルブが追従できない、小刻みの往復が管理できずバルブサージングというただ振動状態に陥るリスクがあるのです。
つまりバルブとピストンが衝突するリスクがあるということです。

ということで、冷寒時に高い回転域まで回してしまう空吹かしは百害あって一利なし。
冬場でなくても暖気をしてから、もしくは暖機しながら低回転域から走り出し、徐々に高い回転域を使うようにしましょう。

Photos:
BMW,Shutterstock,iStock