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2気筒なのに低速トルクが弱いと勘違い!?【ライドナレッジ054】

Photos:
DUCATI,ヤマハ発動機,藤原 らんか

低回転域もクランクの錘ではなく燃焼で瞬時に加速へ転じるポテンシャル

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ビッグバイクでメジャーな4気筒に乗り慣れていると、800~1,000ccの2気筒、ビッグツインに乗り換えたら意外や低速トルクが弱々しく、主に中速以上を使うので期待したほど乗り方が変わらなかった、そう思い込んで勘違いしたままのライダーが少なくない。
ビッグツインは強大な低中速トルクの持ち主……そもそも単気筒の低速トルクが一番大きく、次いで2気筒が強く、気筒数が増えると低速より中速、そして高回転域へと力強い領域が変わっていく、これが一般的なイメージかも知れない。しかしそれはある意味、大きな排気量の単気筒は旧い時代のエンジンとオーバーラップしているからで、2気筒にも同じように思いがちだ。
メカニズムに詳しいと、単気筒や2気筒はクランクの錘(おもり)が大きく重く、それがゆっくりした回転でグルングルンと強い慣性力を発生して粘り強いトルクとなる、そんなイメージかも知れないが、現代のエンジンは高効率の燃焼でレスポンスよく加速に転じるほうを先に発揮する、その鋭さがパフォーマンスとなっている。
ビッグツインは気筒あたりの排気量が4気筒より大きく、毎回の爆発エネルギーとクランクが発生する慣性モーメントも強いのが本来だった。しかし最近では高性能化で、ピストンからクランクまでそれぞれが大柄だと高回転化は苦手だったはずが、1万回転でも軽々回るなど4気筒に負けないパフォーマンスを得るようになった。
当然そのためクランクなど、レスポンス良く瞬時に高い回転域まで吹き上がるよう慣性力を小さくしたり、各部分のフリクションロスを大幅に低減してきた。
その結果、以前のように低中速域の爆発の度に感じられた力強さが薄くなる傾向にはある。加えて排気ガス規制への対応が、どうしても低い回転域で希薄燃焼の必要性を生じるため、フィーリングから力強さを奪いがちだ。とはいえ慣性力のポテンシャルは依然として大きく、むしろそこにパワー特性やトルクの過渡特性を求める傾向もあって、このあたりを繰り返しながら進化しているのが最近の傾向でもある。

スロットルを思いきり捻って眠っていた2気筒の底力を呼び覚まそう

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しかし最新2気筒でも、4気筒と比べれば依然として低中速域での力強さでは実際にスペックを較べても優位だ。そこを感じにくくしているのが、4気筒に慣れたスロットル操作だろう。
ビッグツインは吸気の口径も4気筒より大きく、スロットル全閉から開けた瞬間の、大きな燃焼室のボア(内径)による吸気負圧の流速が速く、その直後のもう少し開けたとき吸気流速が下がるそのギャップが大きいという本来の特性がある。昔はそこをカバーするため、2気筒のスポーティな機種ではキャブレターに加速ポンプという、一瞬ガソリンを霧化せずそのまま送り込む工夫がされていたほど。
もちろん最新型では排気ガス規制対応でキャブレター仕様はなくなり、電子制御の燃料噴射化されていて、クリーンな燃焼となってはいるものの、昔のように生のガソリンで送り込む量を一気に濃くする、やや乱暴ともいえる方策はとれなくなっている。
そこをカバーできるのが、ライダーの右手の捻り方。4気筒に慣れたスロットル操作では、どうしても回転の上昇に従って徐々に大きく捻る感覚が身についていて、低い回転ですぐレスポンスできないのに無駄に大きく捻ることはしない流儀というかそうした感性がスロットル開度を抑えがち。
しかしビッグツインは低中速域で力強くレスポンスするポテンシャルがあるワケで、ラフな操作と思わず低い回転域でも半分くらい、もしくはそれ以上の開度までガバッと大きく捻ってみよう。それも丁寧に開けるのではなく、一気に素早く捻る割り切ったアクションが必要だ。
するとその瞬間は鈍い反応に感じるかも知れないが、ちょっとだけ遅れてグォッと下から湧き上がるような力強さを感じられるはず。
もちろん低い回転域なので、いくらビッグツインでもスロットルを大きく開けても、瞬時に最大トルクを発生するような、危険な状況に陥るわけではない。とはいえ大きく開けたまま、どうなるのか待っていたりすれば、気がつかないうちに中速域以上に回転が上昇して、猛烈なダッシュをはじめてしまいかねないので気をつけること。
コツはここぞという、後輪が路面を掴むトラクションを必要とするシーンで、最初のきっかけの短い時間、ガバッと開けてグイッと加速がはじまるのを感じたら、そこから本来の必要な加速力に準じた開度コントロールの操作や、低いギヤであれば矢継ぎ早にシフトアップしていく走りへと繋いでいく。
人によってはそんな燃費を無視したような捻り方に抵抗感があるやも知れないが、一回の吸気と爆発が4気筒より大きなビッグツインの醍醐味を楽しむためには、ぜひ従来の概念とは違う操り方を試してみるようお奨めしたい。