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スポークでもキャストでもない、ホンダ独自の“コムスターホイール”って知ってる?【ライドナレッジ002】

ワークス耐久レーサーのために開発した画期的なホイール

バイクのホイールといえば、ロードスポーツ車の多くが装備するアルミニウムで一体成型された“キャストホイール”か、オフロード車やアメリカン、クラシックタイプが装備する“ワイヤースポークホイール”の2種類が主流だ。

そこで車輪の歴史を簡単に振り返れば、一番最初は“木製”。
次に木製車輪の外周にゴム板を貼ったモノが考案され、その後に現在のような空気入りタイヤが登場する。
そして木製のホイールは、耐久性とメンテナンス性に長けた金属のワイヤースポークホイールに変化。このワイヤースポーク時代が1900年代初頭から1970年代まで長く続き、1970年代中頃にアルミニウムを鋳造して作るキャストホイールが登場した。

この手の“最新パーツ”の多くは「レーシングマシンが装備→市販車にフィードバック」のパターンが多いが、ことキャストホイールに関しては市販車の方が先に広まり(標準装備もカスタムも)、レーサーは依然としてワイヤースポークホイールを履いていた。その最たる理由は“重量”で、当時のキャストホイールはかなり重かったからだ。

そしてキャストホイールには、チューブレスタイヤを使える大きなメリットもある(スポークホイールはスポーク穴があるのでチューブが必要)が、当時はチューブレスのレーシングタイヤが存在しなかった、という面もある。

しかしキャストホイールの普及とともにチューブレスタイヤも増え、レーシングマシンもキャストホイールを履くようになった……のだが、ここで独創性を発揮したのがホンダ。レーシングマシンで重要な“軽さ”に長け、高い剛性と強度を持ち、チューブレスタイヤも使える「コムスターホイール」を、挑戦を始めたばかりの欧州耐久レースのワークスマシンRCB1000用に開発したのだ。

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1976RCB1000 コムスターホイール

ホンダがヨーロッパ2輪耐久ロードレース選手権に参戦するため、CB750FOURの4気筒エンジンをベースに開発したワークス耐久レーサー。このマシンのために軽量なコムスターホイールが開発された

バイク用のチューブレスタイヤも、コムスターだから採用できた。

コムスターホイールは車軸周りのハブと、アルミ製の軽量なリムを“スポークプレート”で繋ぐ革新的な構造。

スポークホイールの“スポーク増し締め”といったメンテナンスも不要なうえに、チューブレスタイヤを履くことで釘など異物が刺さった際も急激な空気漏れを起こさないため安全性も増し、パンク修理も容易。そしてスポークともキャストとも異なるスタイルで独自性を主張できる。そこでホンダは'77年発売のCB750FOUR-Ⅱにコムスターを初採用し、その後は125クラスから輸出車のオーバー750まで多くのロードスポーツ車に装備を広げていった。

ちなみにコムスターとは「Composite(合成)」と「Star(星)」との合成語。ワイヤースポークホイールの軽さとキャストホイールの高い剛性など、それぞれのホイールのメリットを併せ持ち、星型をしているところから命名された。

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1977GL500 コムスターホイール

コムスターホイールの大きなメリットのひとつが“チューブレスタイヤ”の装着が可能になったこと。写真のGL500('77年12月発売)が二輪車初のチューブレスタイヤ装着車だ。ただし市販車で最初にコムスターホイールを装備したのは'77年4月発売のCB750FOUR-Ⅱ(この時点では二輪車用チューブレスタイヤが存在しなかった)

コムスターはデザインの自由度にも長けていた

市販車用のコムスターホイールは、登場当初はスポークプレートがスチール(鉄)製だったが、'79年のCB750F用を皮切りにアルミ製スポークプレートの“オールアルミコムスターホイール”が登場。そしてスポークプレートのプレス加工や形状変更で、毎年のように新デザインのコムスターホイールが生まれていった。

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1979 CB750F 通称「表コムスター」

初期のコムスターはスポークプレートがスチール(鉄)製だったが、'79年発売のCB750Fや、スタイルを踏襲するHAWKⅢ(CB400N)が“総アルミ製のコムスター”を装備した。“表コムスター”は、あくまで以降のコムスターと区別するための通称

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1981 CB750F 通称「裏コムスター」

従来のコムスターのスポークプレートを裏返したようなデザインからこう呼ばれる(もちろん裏返したワケではない)。プレートはブラックやゴールドに塗装され、豪華な雰囲気を醸した。'80年頃のアメリカンタイプ(CB750カスタム)等から採用が始まった

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1982 CB750F ブーメラン型コムスター

'81年発売のCBX400Fや'82年発売のVT250Fが、ホンダ独自のフロントブレーキ“インボードベンチレーテッドディスク”と組み合わせて装備。その後は通常のディスク車も多く採用した

WGPマシンの車名がホイールの名称に!

ホンダは一時撤退していた世界GPに'79年から復帰。その革新的な4ストロークマシンNR500にもコムスターホイールを採用。続く2ストロークのNS500、NSR500もコムスターホイールを履き、同デザインのホイールを「NSコムスター」として市販車のNSやNSR、CBRなど“レプリカ系”のバイクに装備した。

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1982NS500 コムスターホイール

スポーク部をプレス加工した細い帯板状のプレートで組み、軽さと剛性を追求したコムスターホイールの最終形態。'82年~'83年のGP500ワークスマシン(2ストローク3気筒)、そして4気筒になったNSR500でも'85年まで採用され('84年型はカーボン製!)、'86年からキャストホイールに移行。ちなみにホンダが1979年にGPに復帰した4ストロークのNR500も似た形状のコムスターホイールを履いていたが、市販車用には「NSコムスター」の名称が与えられた

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1984 NS250R NSコムスター

GPマシンNS500譲りのデザインをレーサーレプリカのNS250Rに採用(同年発売のNS250F(鉄フレームのノンカウルモデル)はブーメラン型コムスターを装備)。ちなみにNSコムスターを初装備したのは'83年12月発売のCBR400F

他メーカーと一線を画すコムスターホイールを開発したホンダも、1982年にV4エンジンを搭載するVF750セイバー/マグナにキャストホイールを採用した。以降、コムスターとキャストが混在したが、'86年にはロードスポーツのほぼ全モデルがキャストホイールを装備。レーシングマシンのNSR500もコムスターを履いたのは'85年型までで、'86年型からはキャストホイールを採用したので、市販ロードスポーツ全車キャストホイール化もこのタイミングに合わせたのかもしれない。

キャストホイールの進化・熟成による高性能化によって、ホンダのコムスターホイールは姿を消した。しかし空前のバイクブームだった1980年代を経験した多くのライダーにとって、確実に記憶に残る一品だろう。