ホンダのビッグバイクを辿って気づいた魅了される強さ!

PROJECT BIG-1……1992年にデビューしたホンダの巨大な水冷ネイキッド、CB1000 SUPER FOURの開発スローガンだった。
この1990年代を迎えるにあたって、日本国内で主流となったネイキッドバイクの次世代を考えたとき、あらためてCB750フォアからのストーリーを見返しながら、CB1100Rのビッグな燃料タンクとカラーリングに、開発エンジニアたちが「強さ」を感じ、ひとりのバイクファンとしても魅了されるワケを紐解いてみたのだ。

実はマーケティング、つまり市場調査でニーズを探り当てたのではなく、デザイナーとエンジニアが自らホンダ・ファンとしてのこだわりから発想、社内でさほど注目されなかったのものの、粘り勝ちで製品化まで辿りつかせたというモデルだったのだ。
そして1991年の東京モーターショーへ参考出品として展示する許可を得て、ファンの反応を見て決めようというトコロへ漕ぎ着けた。
果たしてこのプロトタイプじは大きな話題となり、GOサインどころかCB400 SUPER FOURの同時開発もスタートする一大サクセスストーリーが展開されることになった。



PROJECT BIG-1、そのキャッチコピーでスペックは語る必要がなく、ファンの心をガッチリ掴み虜にできたそのオーラは凄まじかった。
冷却フィンのまったくない、ノッペリとしたシリンダーボディが大排気量を象徴してそそり立つ、そのシルエットが「絵」になるバイクにまで高めたのはさすがホンダというほかない。


エンジンはCBR1000Fをベースとして、ほぼ直立した武骨な水冷シリンダーを敢えて強調した冷却フィンもいっさい持たない直球勝負。
これが功を奏してCB1100Rフォルムの巨大な燃料タンクと共に「大きく、強く、逞しい存在感」を醸し出している。
とはいえ、これを走らせるとなるとホンダは本格的に乗り込むライダーの要求に応えるハンドリングの仕様を併行して開発、スイングアームを軽量で剛性と粘りのバランスが得られるアルミ角断面とするなど、大きさや重さがライディングのネガティブとならないよう意を尽くしていた。


998ccで93PS/8,500rpm、最大トルク8.6kg-m/6,000rpmと、装備重量260kg(乾燥重量は235kg)の巨体を、スロットルひと捻りで押しまくる超弩級のマッチョなバイクに仕上がっていた。
もちろん、ジェントルに走らせればハンドリングが素直そのもので、ホンダならではの安心感も、国内市場で大型バイクとしては記録的なベストセラーを支えていた要素だったのは間違いない。
1992年、待ち焦がれたファンへ向けリリースされたCB1000 SUPER FOURは、赤白のCB1100Rイメージのツートンと、モノトーンで且つ男気なお洒落さもあるガンメタもローンチ。瞬く間に大ヒットとなったのだ。

スポーツバイクは高性能であれば正解というものではない。とくにキャリアを積んだライダーほど、そこまでに感化されたバイクたちに育てられた価値観を持っている。
BIG-1プロジェクトは、そんなユーザーだったデザイナーとエンジニアが想いをカタチにした、まさにファンがつくったファンのためのバイク。共感を呼び熱い支持があったのも当然だろう。



