PROJECT BIG-1のコンセプトは「大きく、強く、逞しい存在感」を直感に訴える感動性能!
ホンダCB1000 SUPER FOURといえば、旧くからのファンはまたの名をBIG-1と呼ぶ、ホンダで一時代を築いた超メジャーバイク。
1992年のデビュー後に続いた、まさに一世を風靡したあのCB400 SUPER FOURも、同系のデザインでリリースされネイキッドスポーツの中核的な存在となったのはご存じの通り。
しかしホンダのWeb記事などでご覧になったかも知れないが、この爆発的なヒットと記録的なロングランのビッグネイキッドは、実はマーケティング、つまり市場調査でニーズを探り当てたのではなく、デザイナーとエンジニアが発想したこだわりを、社内でさほど注目されなかったのものの粘り勝ちで製品化まで辿りつかせたという逸話の持ち主なのだ。
ホンダは1989年に400ccのネイキッドスポーツ、CB-1をリリースした。雰囲気でノスタルジックに訴える他社のネイキッドに我慢ならず、ホンダは性能的にもクオリティ的にも進化した完成度の高いスポーツバイクをつくる!このコンセプトを貫いた凛とした佇まいで、プロの評価も高かったのだがマーケットは曖昧なほうを好むタイミングで、狙った成果が得られずじまい。
そんなとき、開発の流れでCB750フォアからのストーリーを見返したとき、CB1100Rのビッグな燃料タンクとカラーリングに、あらためて「強さ」を感じ、そうした要素を採り入れたアイデアをカタチにしてみたのだ。
デザインスケッチは、後にデビューしたCB1000 SUPER FOURほぼそのまま。しかしこの段階でも開発プロジェクトとして認められておらず、1991年の東京モーターショーへ参考出品として展示する許可を得て、ファンの反応を見て決めようというトコロへ漕ぎ着けた。
果たして大きな話題となり、GOサインどころかCB400 SUPER FOURの同時開発もスタートしたのだ。
エンジンはCBR1000Fをベースとして、ほぼ直立した武骨な水冷シリンダーを敢えて強調した冷却フィンもいっさい持たない直球勝負。
これが功を奏してCB1100Rフォルムの巨大な燃料タンクと共に「大きく、強く、逞しい存在感」を醸し出している。
とはいえ、これを走らせるとなるとホンダは本格的に乗り込むライダーの要求に応えるハンドリングの仕様を併行して開発、スイングアームを軽量で剛性と粘りのバランスが得られるアルミ角断面とするなど、大きさや重さがライディングのネガティブとならないよう意を尽くしていた。
1992年、待ち焦がれたファンへ向けリリースされたCB1000 SUPER FOURは、赤白のCB1100Rイメージのツートンと、モノトーンで且つ男気なお洒落さもあるガンメタもローンチ。瞬く間に大ヒットとなったのだ。
スペックではなく「大きく、強く、逞しい存在感」に呼応したファンの多さがホンダの強み!
初代BIG-1は、998ccで93PS/8,500rpm、最大トルク8.6kg-m/6,000rpmと、装備重量260kg(乾燥重量は235kg)の巨体を、スロットルひと捻りで押しまくる超弩級のマッチョなバイクに仕上がっていた。
もちろん、ジェントルに走らせればハンドリングが素直そのもので、ホンダならではの安心感も、国内市場で大型バイクとしては記録的なベストセラーを支えていた要素だったのは間違いない。
PROJECT BIG-1、そのキャッチコピーでスペックは語る必要がなく、ファンの心をガッチリ掴み虜にできたそのオーラは凄まじかった。
冷却フィンのまったくない、ノッペリとしたシリンダーボディが大排気量を象徴してそそり立つ、そのシルエットが「絵」になるバイクにまで高めたのはさすがホンダというほかない。
BIG-1はCB400 SUPRT FOURと共に、日本国内のみに向けた機種。アメリカやヨーロッパの大型バイクユーザーには、高速クルージングが不可欠なツーリングにネイキッドバイクを敢えて選ぶユーザーは皆無に近いからだ。
ただフランスでは、ドゥカティのモンスターのように大排気量でも街中で乗る粋なライダーが少数派でも存在し、僅かではあるが輸出されている。
ただカタログはご覧のようにカジュアルで、重く受け止める狙いのキャッチコピーもない。
1998年、排気量を1300ccへとアップして足回りも見直したCB1300 SUPER FOURへとモデルチェンジ。
エンジンをX4と共用するため冷却フィンのあるルックスへとイメージも変わり、SUPER FOURのSPや、BOL D' ORでもSPが用意されるなど、CB1000 SUPER FOURから30周年を経た2024年モデルでも現役。
ただいよいよ手に入れられるラストチャンスであるのがアナウンスされた。
スポーツバイクは高性能であれば正解というものではない。とくにキャリアを積んだライダーほど、そこまでに感化されたバイクたちに育てられた価値観を持っている。
BIG-1プロジェクトは、そんなユーザーだったデザイナーとエンジニアが想いをカタチにした、まさにファンがつくったファンのためのバイク。共感を呼び熱い支持があったのも当然だろう。
ファンは次のファンのための想いがカタチになるのを待っている。