ついに、ついにこの日がきてしまった。セローファイナルエディションが登場した頃から予感はあった……、でも実際にSRのファイナルエディションが発表されると僕はSRに感謝の気持ちしか湧いてこなかった。
YAMAHA SR400 Final Edition Limited
1,000台限定/74万8,000円
SRの記念モデルといえば、やはりサンバースト。ヤマハブラックのみの設定で、これまでにない高級感がある。
18歳から27年間SRに乗り続けている。もちろんこれからも僕は乗り続ける。SRを何台買ったか覚えていないし、エンジンも何回チューニングしたかわからないほど没頭した。メンテナンス、カスタム、ツーリング、スポーツライディングなどバイクの楽しさの大半をSRに教わった。初めて転んだのもSRだった。
SRのムックを何冊もつくったし、有名ショップのチューニングされたSRにも何十台と乗ってきた。今は1978年式の500と2010年式のインジェクション仕様を所有している。
ファイナルエディションの発表は確かに寂しい。でも、改めてSRに出会えて本当に良かったなぁと思う。
タンクはブラックサンバースト。ブラック×ゴールドの配色でとても上品な印象に
メーターはブラック文字盤にFinal Editionの文字が入る。メーターケースはスチールメッキで上質
前後リムはカッパーブラウンのアルマイト
サイドカバーにはFinal Editionの電鋳立体エンブレムが装着される。右側にシリアルナンバーが入る
1978年といえば……
SRが誕生したのは1978年。もう40年以上も前のことだ。
当時は400と500をラインナップ。今はすっかりクラシカルなバイクの代表格だが、デビュー当時はロードスポーツだった。
1978年は、サザンオールスターズが勝手にシンドバッドでデビューし、ピンクレディがヒットを飛ばしまくり、キャンディーズが解散した。野球では王貞治がホームランを打ちまくり、映画は「スターウォーズ」が公開。池袋にサンシャイン60ができ、渋谷には東急ハンズがオープンした。
SRはそんな時代から「空冷SOHC 2バルブ単気筒」「ティアドロップタンク」「始動はキックのみ」というらしさをひとつも変えずに生き延びてきた。
その間に気がつけば2ストロークのバイクが消え、カタナやGPZ900Rといったロングセラーバイクも生産を終え、スーパーカブでさえエンジン形式などを変えて生き延びている。
変えないことが正しかったのか……それは誰にもわからないし、ヤマハの中でも大きな葛藤があったと思う。でも、変わらなかったからこそ、ずっと新鮮だったのだと今は思う。
YAMAHA SR400 Final Edition
60万5,000円
通常のファイナルエディションは、ダークグレーメタリックN、ダルパープリッシュブルーメタリックXの2色を設定する
いかにもオートバイらしいスタイル。発売から42年、ついにファイナルエディションとなった
丸いヘッドライトにウインカー、そして細いタイヤがクラシカルな雰囲気を強調する
カスタムしまくって見えたノーマルの完成度の高さ
SRでイジらなかったトコロはないんじゃないかなぁ、と思うくらいカスタムしてきた。マフラーやキャブレター、タンク&シート&フェンダーなどの外装類、エンジンも何度もチューンしたし、フレーム補強も……。
でもノーマルのマフラーやフェンダーは、近年の市販車にはないほど職人さんが携わり、手作業で製作されている。
今、400ccのバイクでこれほど上質なメッキパーツが使われているバイクは他にない。エキパイの深いメッキはどんな走り込んでも焼けてこない重厚なつくりで、フェンダーの折り返し部分やクランクケースの絶妙なバフ具合など本当に手が込んでいるのだ。
SRには、現代のバイクが失ってしまったディテールがたくさんある。SRが存続したのは、ひたすら手作業で支えてきた職人さん達がいたからなのだ。
型から抜きました……そんな樹脂パーツが極端に少ないのもSRの特徴だ。
始動はキックのみだが、インジェクションになってからのモデルは慣れてしまえば始動に悩むことはないはず。昔のキャブレターモデルは本当にかからないタイミングがあったなぁ……
始めてのSR、もう一度SR、いつかはSR……
キャリアや世代によってSRへの思いは様々だろう。でも、上記した思いを叶えて欲しいなぁと思う。
始動性抜群のキックでエンジンを目覚めさせ、メッキパーツの曇っているところを軽く磨いて、シリンダーを手で触って少し暖まったところでスタートする。細いタイヤは一見頼りないけれど、どこまでも乗りやすい。
27年間SRに乗り続けているけれど、いまだに「SRはいいなぁ」って思う。乗るたびにそう思う。
エンジンやハンドリングの魅力は、またどこかでゆっくり語りたい。