とにかくVTECを楽しんでみたかったので、迷わずサーキットへ。エンジンをぶん回して400cc/4気筒そしてVテックならではのエキゾーストノートの切り替わりを存分に楽しんだ。最新技術でこのパッケージがあったら面白いと思うけどなぁ……
CB400SFデビューは1992年。ブームだった当時の400cc/4気筒はすべて旧車に……
1974年生まれの僕は、CB400スーパーフォア(以下SF)全盛期を過ごしている。教習車は大半がVFR400だったが、卒検の時にだけピカピカのCB400SFに乗せてもらえたのがこのバイクとの出会いだ。
免許取得後も周りは400cc/4気筒ネイキッドブーム。友人たちのバイクは、CB400SFを筆頭にXJR400、ゼファー400、ZRX400、インパルス400、CB1などなどで、集まると当時ラインナップにあったほとんどの400cc/4気筒ネイキッドとスティードやSRが揃った時代。すでに2ストレプリカは少数派だった。
僕はヤマハSR400だったけれど、毎週のように上野のバイク街に仲間と繰り出し、いろいろパーツやグッズを購入。何台ものバイクに集合管をはじめとするパーツを取りつけた思い出がある。
そんな400cc/4気筒ネイキッドもCB400SF以外はかなり昔に生産を終えている。中にはとんでもないプレミアム価格で驚くモデルも……。それもそのはず、CB400SFは1992年のデビューだから2022年で30年が経過する、超ロングセラーモデルなのである。
僕が免許を取得した頃から教習車としても大活躍中なのだから、CB400SFはもっとも多くのライダーが乗ったことのある400ccネイキッドだろう。
ロングセラーバイクは次々と生産終了に……。CB400SFは、まだ新車で買えることが凄いのだ
2021年に入って、日本のロングセラーモデルの代表ともいえるヤマハSR400やセローも生産終了を発表。人気がなくなったのではなく、今後の規制に対応できず、惜しまれつつ生産終了となった。
CB400SFも次の令和2年排出ガス規制に対応できないのでは? と言われている。これは令和4年(2022年)の11月までに規制に対応しないとそれ以降は生産ができなくなってしまうというもの。ちなみに市販車唯一の空冷4発であるCB1100シリーズもファイナルエディションを発表。往年のバイクらしさをアピールするビッグネイキッドであるCB1300シリーズも生産終了が囁かれている1台。コストをかけて規制に対応させるか? 生産終了とするか? その瀬戸際にいるバイクは実は多い。
ロングセラーのCB400SFは何度もこんな規制の波を乗り超えてきている。だからこその国産唯一の400cc/4気筒ネイキッドなのである。2008年には吸気をキャブレターからインジェクション化。エンジンはHYPER VTEC REVO(レボ)に進化し、その後も環境性能に対応してきた。
もう1度、VTECの咆哮を聞いてみたい!
僕が10代の頃は、スーパーフォアに乗っていればヒーローだった。VTECの特別感もあって、集合管を装着してブン回した時の音に酔いしれた。ディスコンになるかもしれないと聞いて、もう一度乗ってみたいと思った。全開にするのは何年ぶりだろう……。
ホンダから借りたCB400SFは、広報車にしては珍しく走行距離は1万2,000kmを超えていた。さすがロングセラー、広報車歴も長そうだ。
走り出すと、さっそくエンジンは高回転に飛び込む。というか回さないと加速していかない。7,000rpmあたりからムズムズとお尻が痒くなるような振動があるけれど、その振動を交わすように構わずにエンジンを回し続ける。
「もっと回れ! 回れ!」VTECサウンドとともに気持ちが昂る。
アナログ式のタコメーターの動きもいまとなっては新鮮。タコメーターの針が元気良く跳ね上がる。シングルやツインにはない4気筒のレスポンスに心が躍る!
ビッグバイクにはない一体感を楽しむ。車高がとても低く、コンパクトな感覚はあるが、鋭さはなく、ハンドリング的には旧車感が強い
HYPER VTEC Revoをおさらいしてみよう
Revoになる以前の「HYPER VTEC SPEC III」では、1〜5速間でエンジン回転数6,300rpm、6速では6,750rpmと、ギヤポジションとエンジン回転数を検知&演算することで、作動するバルブ数を2バルブから4バルブへと切り換えを行っていたが、「HYPER VTEC REVO」は、この機構にスロットル開度を検知する機能を追加。バルブの切り換えタイミングをより緻密に制御している。
これにより、巡航走行時など、スロットル開度が低開度の場合は、1〜5速間でエンジン回転数6,300rpmを超えても6,750rpmまでは、燃費の良い2バルブ作動を可能としている。また、加速時などスロットル開度が大きい場合は、瞬時に4バルブへと切り換わり、軽快な加速と伸びのある出力特性を発揮。6速においては、従来どおりスロットル開度に関わらず、6,750rpmを超えた時点で、4バルブへと切り換わる。
いまでは考えられない、メカ好きにはたまらない複雑な機構を採用する。クルマもプレリュードやS2000を乗り継いできた僕は、やはりホンダ独自のこの機構が好きだ。
昔ながらの鉄フレームに2本ショックと正立フォークを装備。いろいろなモデルを経験したキャリアを重ねた大人向けに、高性能サスや最新タイヤを履いたモデルも欲しかったなぁ
乗り味は、もはや旧車っぽい味わいが強い
感覚的には常に8,000rpm付近をキープする。実際4バルブに切り替わると昔よりは加速感の違いを感じないが、音の切り替わりが面白く、やる気になる。ビッグバイクではありえない高回転キープを楽しむ。
しかし、感覚的にはやはりいろいろな意味で旧車感が強い。ラジアルタイヤだけれど、立ち上がりでスロットルを大きく開けていくと、滑らずに跳ねるバイアスタイヤっぽい挙動や、サスペンションやフレームからのフィードバックもそうだ。バンク角もないから、あくまでも優しく乗ることが求められる。正直なところ、聞こえてくるサウンドの割に走らない感覚もあるが、エンジンは回すと胸が空く気持ち良さがある。そうそうこんな感じ、走るほどに懐かしさが蘇る。
シート高も低く、低重心だが、それ故にスポーティさはなく、ハンドリングもライダーを急かさない安定方向。というか最新バイクのクイックでよく曲がる感覚に身体が慣れてしまっているのだとも思う。
ちなみに同じ日にカワサキの250cc/4気筒、ニンジャZX-25Rにも乗ったがラップタイム的にはこちらの方が圧倒的に速い……。
サーキットで常用するのは8,000rpm以上。立ち上がりでは、レッドゾーンの始まる1万3,000rpmまで回す
速さよりもホンダならではのVTECサウンドとフィーリングを楽しむ。VTEC装備のバイクがなくなってしまうのも寂しい……
日本だけの400ccカテゴリーに未来はあるのか?
すでにこのクラスもビッグバイク同様、排気量の垣根が少なくなってきている。ヤマハは320ccのMT-03やYZF-R3だし、KTMやハスクバーナは373ccエンジンのスポーツモデルを用意。そう、昔では考えられない外車メーカーも参入してきているのである。しかし、これらのすべてのバイクは、アジア市場や欧米の若年層を狙ったもので、日本の普通自動二輪(中型)免許を強く意識しているわけではない。
ここにもCB400SFが生き残るのが難しそうな理由がある。CB400SFは国内専用車だから、今後の規制に対応しても販売台数が見込めないのである。さらに溶接箇所の多いスチールフレームや400にしては猛烈に部品点数の多いエンジンなど、どうしても生産コストが嵩んでいく。日本の市場だけで考えると、ユーザーの求めるものとメーカーの作りたいものが一致ないのである。悲しいけれど、これが時代の流れだ。
CB400SFは、いまも新車で買えることが奇跡なのだ!
ただ、いまならまだCB400SFとCB400SBは新車で買えるのだ。ホンダエンジニアリングを感じさせる、バイクだ。改めて乗ってみて、よくいままで生産を続けてくれたなぁ、と感謝の気持ちが強くなっていく。
価格は、CB400SFが88万4,000円〜、CB400SBが104万600円〜。当時から比べたら確かに高くなったけれど、まだまだ新車で購入できることが奇跡の1台。いまや、カスタムが施され、走行距離の伸びた中古車のゼファー400が100万円オーバーであることを考えると、僕にはかなりお買い得に思える。
ちなみに、ドリーム鈴鹿にいく機会があったので、「まだCB400SF&SBは買えるんですか?」と聞いてみると、まだ大丈夫とのこと。
「もう一度VTEC!」「いまこそ400cc/4気筒!」「このカタチこそネイキッド!」という方は早めに判断した方が良いかもしれない。
フロントフォークは正立タイプ。プリロードを調整できるが、これも足着き優先の機構でスポーティに走るためではない。リヤの2本ショックも同様。CB400SFでサーキットをもっと楽しみたい方はまずはタイヤを交換するのが良いと思う
SPEC
- フレーム
- ダブルクレードル
- 車両重量
- 201kg(206kg)
- ブレーキ
- F=ダブル
- タイヤサイズ
- F=120/60ZR17 R=160/60ZR17
- シート高
- 755mm
- 燃料タンク容量
- 18L