honda_cbx750f_bol_dor_20251205_main.jpg
このバイクに注目
HONDA
CBX750F BOL D'OR
1985~1988model

BOL D'OR 24時間の観戦カルチャーに育まれたベテラン向け長距離スポーツ!【このバイクに注目】

Photos:
HONDA

耐久レースに集うライダー群のサバイバル且つ超特急な走り!

honda_cbx750f_bol_dor_20251205_01

1983年の暮れ、ホンダはナナハンでは5年ぶりの直4NewエンジンのCBX750Fをリリース。
その頃ホンダはV4旋風で殴り込みをかけている真っ最中。
ホンダ伝統の直4(並列4気筒、インライン4とも呼ぶ)は影の存在的な位置づけにあった。
とはいえ、世界的にビッグバイクといえばインライン4気筒がメジャーで、その信頼感や乗りやすさはヨーロピアンのように国を跨ぐような長距離ツーリングを好む層には、半ば絶対的な存在という意識が定着しているのは明らか。
そんなファンに、ホンダはCBX750FにもフルカウルのBOL D'ORモデルを用意した。

honda_cbx750f_bol_dor_20251205_02
honda_cbx750f_bol_dor_20251205_03
honda_cbx750f_bol_dor_20251205_04

ところでBOL D'ORの車名の由来は、いうまでもなくフランスは南仏のポールリカール・サーキットで開催されるボルドール24時間耐久レースに由来したもの。
フランスでは春のル・マンと秋のボルドールで年に2回、24時間の長丁場を闘う耐久レースが人気。
ホンダも1967年以降に125cc5気筒や250cc6気筒などで闘った世界GPから身を引いて以来、モータースポーツへの参戦を控えていたが、CB750フォアをベースにDOHC化したRCB1000ファクトリーマシンでこの耐久レースへ1976年に参戦。
レースシーンからホンダの名前が消えていたが復活!ということで、フランスはもとよち英国やドイツにイタリアやスペインにオランダから北欧まで、ヨーロッパ中からファンが駆けつけた。
その期待に応えてRCBは何と4連覇、その盛り上がりに益々ファンが集まるムーブメントとなり、数千キロをもろともせずタンデムで超特急クルージングで駆けつけるライダー達を意識して、ホンダは新世代CB750~900や1000ccにフルカウルを装着したモデルにBOL D'ORの称号を与えるようになったのだ。

honda_cbx750f_bol_dor_20251205_05
honda_cbx750f_bol_dor_20251205_06

CBX750Fは、初代CB750フォアからCB750Fの第2世代でDOHC4バルブへと移り変わった後の第3世代。
課せられたテーマは、スリム軽量コンパクトで、まずクランクシャフトからの1次減速を、チェーンではなくギヤ駆動としたことで1軸省き前後長を短縮、さらにACG(発電ジェネレーター)をクランクシャフト先端ではなく、シリンダー背面で駆動することでエンジン華を思いきりナロウ化した。
そしてDOHCで16バルブと高度で精緻なメカニズムを、油圧タペットというエンジンオイルの油圧で押し続け、タペットのクリアランスを調整する必要のないメインテナンスフリー化。
さらにはNR500で培ったエンジンブレーキの過剰な減速を抑えるバックトルクリミッター(現在のスリッパークラッチ)を装備するという、V4に最前線を譲っている立場とは思えない最先端装備で構成されていた。
ダブルクレードルのフレームは、アンダーチューブを脱着式にせずオイルクーラーとを結ぶオイル・ラインとして活用、見た目にオイルのホースを取り回さないスッキリとして外観も新しさを感じさせる。
ボア×ストロークの設定は、67.0mm×53.0mmで747cc。バルブの挟み角を19°と立て燃焼室をフラット化した最新の高効率設計思想が反映されている。
そのパフォーマンスも、国内向けは77PS/9,500rpmと6.5kgm/7,500rpmだが、輸出向けは93PSとかなりのポテンシャルが込められていた。
パワーだけではない。このスリムでコンパクトな車体は、直4のハンドリングを大幅に変えてしまい、750ccが既にビッグな貫録バイクではなくコーナリングの醍醐味を楽しむクラスに捉えていた海外では大好評だった。

honda_cbx750f_bol_dor_20251205_07
honda_cbx750f_bol_dor_20251205_08

そしてBOL D'ORでは、前方からの走行風を開閉フラップでライダーへ達する風量を調整できるレバーを供えたり、カウル内側ポケットなど高速道路からチロルのような高速コーナーをひたすら連続して駆け抜けていく強者たちへの利便性を配慮した装備に包まれる。
そのライダー達のタフネスぶりが似合う、落ち着いたデザインとグラフィックも、こうしたヨーロピアン・バイク・カルチャーに寄り添った感性でまとめられていた。 いわばデザインの元は車名のままBOL D'OR風だったのだ。
そうした使われ方とは縁の薄い国内向けだったが、他にはない大人びたシックなフルカウルに、ベテランのホンダ・ファンには刺さったモデルだった。