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【 MVアグスタ ドラッグスター800ロッソ インプレ Vol.2】俊敏さの先にある、高いスタビリティ

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長谷川 徹

唯一無二のスタイルを持つ、異形のストリートファイターが「ドラッグスター800ロッソ」だ。そのハンドリングもまた、個性が際立ち、目まぐるしいほどの軽やかさと頑とした落ち着きが混在していた。

必要最小限というよりも、それ以下にすら見えるシート周りのデザイン。それがドラッグスターシリーズ共通のアイデンティティだ。この「ドラッグスター800ロッソ」においても例外ではなく、格納されているタンデムステップに気づかなければシングルシーターにしか見えない。

だからといって、「2人乗りがしづらい」とか「荷物の積載性が悪い」というクレームをつける人はいない。あまりに大胆で、他のなににも似ていないそのカタチにこそ、多くの人が魅力を感じているからだ。

845mmのシート高は、車体の大部分を共有する「ブルターレ800ロッソ」よりも15mm高く、内包材が硬いことも手伝って、足着き性にそのまま反映。平均的な体格の男性がまたがった場合、かかとが少し浮く。ただし、シート前部が絞り込まれていることと、後退したステップバーのおかげで足の上げ下げは容易だ。極小シートもパッセンジャー側に限ったことで、ライダー側の座面はごく平均的なもの。体重移動を妨げるものではない。

ワイドなセパレートハンドルは、絞り角が変更できるようになっている。真ん中をスタンダードとし、手前に1ノッチ、前方に1ノッチ動かせる、計3段階を用意。調整幅自体はわずかではあるが、常に触れている部分だけにオーナーになれば試しておく価値がある。

シート形状やハンドル位置は、2018年に一度小変更が施されている。それまでは自由度が少なく、ライディングポジションが固定されがちだったのだが、この時ハンドルは少し前方へオフセットされ、シートは前後方向にゆとりができた。結果、フロントタイヤにもリヤタイヤにも荷重を掛けやすくなり、接地感がより分かりやすくなったのである。

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ブルターレ800ロッソよりもさらに小振りなシート周りが印象的だ。エンド部分は短くチョップされ、相対的にスイングアームが長く見えるところがデザイン上のポイント。車体色は。アゴレッド/メタリックカーボンブラックの1色のみが設定され、価格は198万円に抑えられている

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バーハンドルを備えるブルターレ800ロッソに対し、こちらはセパレートハンドルを採用。その取り付け角度は前後3段階の中から選ぶことができる。バーエンドミラーによってワイドな印象が強調されているものの、簡単に折りたたむことが可能だ

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リヤサスペンションはザックスのボトムリンク式を採用。プリロード/圧縮側減衰力/伸び側減衰力の調整が可能なフルアジャスタブルだ

トルクフルでありながら、高回転の切れ味も忘れていない

エンジンを始動させると、3気筒特有のザラついたアイドリング音を響かせる。ブリッピングした時のレスポンスはクランクマスの軽さを伝えてくるもので、タコメーターのバーグラフが抵抗なく上昇。生粋のスポーツユニットとして仕立てられていることが分かる。

クラッチレバーは重めの部類に入るが、ギヤのアップとダウンに対応するオートシフターを標準装備しているため、走り出してしまえば負担は少ない。感心するのは、そのシフターとギヤボックスの精度で、テスト車両は走行距離数kmという降ろしたての個体だったにもかかわらず、カツカツと小気味いいタッチでギヤが切り換わっていく。

140hpの最高出力を発揮する上位グレードのエンジンに対し、ロッソのそれは110hpに抑えられている。そのぶん、低中回転域の力強さが増している味つけは、ブルターレ800ロッソと同様だ。最大トルクの発生回転数も低く設定され、トルクバンドも拡大。コーナー立ち上がりでは少々回転数が低くともスムーズに、そして力強く立ち上がっていく。

もちろん、単にフレキシブルなだけではない。SPORT/NOMAL/RAIN/CUSTOMと4パターンあるライディングモードの内、最もアグレッシブなSPORTを選択した時の出力特性は刺激的だ。7,000rpmあたりを境にレスポンスとサウンドが2次曲線的に上昇。レブリミッターが作動する領域まで一気に吹け上がっていく。上位グレードよりトルク型なのは間違いないが、決して高回転をおざなりにしていないのがMVアグスタらしい。

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ブレーキング時のスタビリティ向上やフロントタイヤのリフトアップ抑制に貢献する逆回転クランクシャフトを採用。そこにライディングモード(SPORT/RACE/RAIN/CUSTOM)や8段階のトラクションコントロールの効果が加わり、高いドライバビリティを実現している

俊敏さにとまどっていては本質が見えない

では、ハンドリングはどうか?
車体が直立している時も、バンクしている時も存在感を主張してくるのが、200/50ZR17のリヤタイヤだ。ブルターレ800ロッソが採用する180/55ZR17と比較すると幅も外径も大きくなっている。

体感的な差はかなりあり、既述の通りシート高が高くなっていることも手伝って、目線も腰の位置も重心も全体的に引き上げられた印象が強い。車体はわずかな入力に反応し、パタンと倒れ込むようにリーンホイールベースが切り詰められたような、高い機動力をみせる。

最初はその機敏な動きにとまどうかもしれないが、バンク角が深くなるにつれてボリューミーなリヤタイヤが安定性のカギになっていることに気づく。そのトレッド面が路面をしっかり捉え、持てるパワートラクションに変換。リーン初期の軽やかな振る舞いと、フルバンク時のライントレース性をコントロールしながら、自分だけのリズムでコーナーを駆け抜けることができる。

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フロントブレーキには、ラジアルマウントされたブレンボの4ピストンキャリパーとφ320mmのフローティングディスクを組み合わせ、リヤホイールのリフトを検知するボッシュのABSシステムを搭載。マルゾッキのフロントフォークは右側で伸び側、左側で圧縮側の減衰力調整が可能になっている

直線番長を思わせる車名とは裏腹に、バンク角に応じて刻々と表情が変わるハンドリングに本当の醍醐味が詰まっている。それが、このドラッグスター800ロッソだ。見た目にたがわないひとクセはあるものの、手なずけた時の一体感はより深く、充実した時間をもたらしてくれるはずだ。

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協力/ MVアグスタジャパン