MVアグスタの人気モデル「ブルターレ800RR」の2021年モデルが登場した。クラッチ操作の煩わしさから解放してくれる新システムが採用された他、電子デバイスも装備も大幅に刷新。かつてないビッグマイナーチェンジによって生まれ変わった。
MVアグスタのスポーツネイキッド「ブルターレ800」の登場は、2013年のことだ。以来、RRやROSSO、RC、RR LH44、RR PIRELLI、RR AMERICAといった派生モデルが追加されながら現在に至る。シリーズの中核を成しているのが「RR」の名を持つモデルで、その2021年モデルが上陸。「ブルターレ800RR SCS」(以下、ブルターレ)としてデリバリーが始まっている。
SCSとはスマートクラッチシステムの略称だ。2020年モデルの「ツーリズモベローチェ」と「ドラッグスター」に投入された自動遠心クラッチの一種で、このほどブルターレにも組み込まれることになった。
このSCSのフィーリングに関しては、vol.2でお届けする予定だ。クラッチレバーの操作が不要になる機構ゆえ、生粋のスポーツ派は懐疑的な印象を抱くかもしれないが、それはまったくの誤解である。快適性とスポーツ性がミックスした新しい世界があることを先にお伝えしておく。
3気筒エンジンの象徴にもなっている3本出しマフラー。スラッシュカットされたエンド部分がシャープなイメージに貢献している
エンジン内部もサスペンションも改良
さて、新型ブルターレで語られるべきトピックは、SCSのことだけではない。エンジンにも車体にも電子制御にも手が加えられ、ビッグマイナーチェンジと言えるほどの改良が多岐に渡って施されているからだ。
798ccの排気量を持つ水冷4ストロークDOHC3気筒エンジンの基本はそのままながら、タペットにはDLCコーティングを、バルブガイドには新素材を採用。これによってパーツの駆動フリクションの軽減が図られた他、インジェクターの設計が見直され、燃料の注入圧力が3.5barから4.0barに引き上げられている。
車体に関するアップデートは、スチールトレリスフレームとスイングアームを締結するアルミのサイドプレートに見られる。外観の形状こそ従来モデルと同一ながら、ねじれ剛性と縦剛性が最適化され、よりしなやかなハンドリングに貢献。これに伴い、リヤサスペンションのスプリングはソフトになり、減衰力にはリセッティングが施されている。
上面が大きく張り出し、エッジの効いた燃料タンクは16.5リットルの容量を持つ
前後ホイールはアルミ鋳造。標準装着タイヤにはピレリのディアブロロッソIIIが組み合わせられている
所有欲を満たす上級モデル譲りのディスプレイ
新型ブルターレにまたがった時、従来モデルと比べて大きく異なるのがコックピット周りの景色だ。これまでは小型のモノクロディスプレイだったが、今回からスーパーベローチェで実績のある5.5インチのフルカラーTFTディスプレイを採用。視認性といった実利面のみならず、所有欲や質感という意味でもオーナーを満たしてくれるはずだ。このディスプレイには走行中に必要な情報が表示されるのはもちろん、スマートフォンを介して電子デバイスを設定したり、ナビ画面として機能させることもできる。
そして、目には見えないが電子制御も既存のものとは異なる。新たに搭載されたIMUにはイタリアのe-Novia社のものが採用され、トラクションコントロールやABSと連動。スロットル開度やバンク角、車体姿勢に応じて最適な介入度がもたらされることになった。これによって従来モデルにはなかったFLC(フロントリフトコントロール)が機能するようになり、そのパワーをロスなく加速に生かせるよう、より緻密な制御を実現している。
これらの制御は基本的に3パターンのエンジンモード(RACE/SPORT/RAIN)毎に一括管理され、CUSTOMを選択すれば任意の値に設定することも可能だ。また、シフトアップとダウンに対応するクイックシフターは、よりスムーズなギヤチェンジをサポートする第3世代へと進化している。
これら大小様々な改良がもたらすパワーフィーリングやハンドリングは、vol.2の試乗記をお待ちいただきたい。
SPEC
- フレーム
- スチールトレリス
- 車両重量
- 175kg
- サスペンション
- F=テレスコピックφ43mm倒立
R=片持ちスイングアーム+モノショック - ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ220mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
- 全長/全幅
- 2,045/875mm
- 燃料タンク容量
- 16.5L
- 価格
- 253万円
ROSSOは198万円