水冷化でBIG BANDITは万能ベーシックスポーツとしてワイドに展開!

1990年代まで、スズキはビッグネイキッドに油冷エンジンのBANDIT1200を投入、2000年からはGSX1400と油冷を最大級まで拡大してオリジナリティを守り通していた。
しかし、さすがにその発熱量と排気ガス規制でビッグネイキッドも水冷化を決断、それはネイキッドというカテゴリーに限らず、ツーリングスポーツからグランドツアラーまで、ワイドな展開とする新カテゴリーが画策されていた。
その典型がBANDIT1250F。車名はBANDITでもフルカウルを装着して、レプリカやフラッグシップのハイエンドモデルではなく、街中からツーリングまで幅広い用途に応じたエンジン特性と装備類で、ヨーロッパではこうしたコンセプトが好まれることから、順調にニーズを伸ばしていくことに成功していた。


新規に開発された水冷エンジンは、ボア79mm×ストローク64mmで1,254cc。
最大出力が74kW(100ps)/7,500rpm、107Nm(10.9kgm)/3,500rpmと、これまで例がないほど低回転域で強大なトルクを発生していた。
実際、3,000~4,000rpmの底力は凄まじく、アイドリングより少し上の2,000rpm域でも扱いやすい実用トルクで疲れないと大好評だった。



当初はネイキッドとハーフカウルのSとの2タイプだったが、フルカウルのFが加わると、さらにパニアケースも標準装備したモデルまで用意され、万能ビッグスポーツとしての布陣が揃えられた。
ツーリングにうってつけのバイクはスズキ、そういった定評が益々需要を喚起してハイパフォーマンスだけを追いかけない戦略が功を奏する業績へと結びついていったのだ。



実際、BANDIT1250はツーリング好きに喜ばれるシート高が2段階の便利さなど細かい部分に行き届いた装備やクオリティで、価格を含め中庸をゆく万能スポーツとして定着、このブランドイメージはSV650系などミドルクラスで独り勝ちに導く好材料を浸透させてきた。
まさしくレプリカ全盛時代、GSX-Rで最も過激なブランドとして牽引役だったのとは好対照な路線を辿っていたのだ。



こうして多くのユーザーに受け容れられたBANDIT1250だったが、フルカウルFが登場するタイミングで、さすがに高速巡航の多いヨーロッパではネイキッドが生産をストップ、ハーフカウルのSとFが併売され2016年モデルまでほぼ10年のロングランとなった。