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このバイクに注目
SUZUKI
GSX-R400R
1990~1998model

GSX-400R(GK76A)のツインチューブフレームをダブルクレードルへ戻したスズキが目指すモノ【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

少し重くなるけれどリーン過程で変化のないハンドリングを優先して流行りのツインチューブを捨てた!

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1990年の冬が明けてすぐ、スズキからGSX-R400Rのイヤーモデルではなく、フルモデルチェンジのマシンがリリースされた。
2年前に完全刷新されたばかりなのに……ところがファンはそのフォルムを見て驚愕、何とフレームがツインチューブから、GSX-Rがデビューしたときのダブルクレードルになっていたからだ。
アルミのツインチューブフレームは、ステアリングヘッドとスイングアームピボットとを直線で結び、その距離が短いことで軽量高剛性が得られる。
このメリットの高さに、最後発で400レプリカへ参入したカワサキもツインチューブ。なぜスズキは敢えて旧いレイアウトに戻したのか……

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1984年にデビューしたGSX-Rは、1986年と1987年、そして1988年にモデルチェンジを重ねてきた。
とくに1988年モデルは2世代目から採用したアルミ・ツインチューブをエンジンの刷新とともに大幅な剛性アップと軽量化を果たし、いかにも最先端なフォルムと鋭い走りで注目度も高かったのだ。

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しかしレーサーレプリカブームが燃え盛るなか、差別化をはかれなくなったスズキはライバルと競うのではなく、自社のオリジナリティをアピールする方向へスイッチするコンセプトを決定。
それはGSX-R750/1100で培った、流行りのツインチューブではなくアルミのダブルクレードル・フレームとすることだった。
ツインチューブだと並列4気筒の両外側をフレームが覆うため、軽量でもマスが外側へ張り出しリーンなど左右への運動性で軽快性を損なうデメリットがあるからだ。
対してダブルクレードルは、シリンダー幅より狭くメインパイプがレイアウトできる。取り回しで長さがあるため剛性を高めると重量的にやや不利だが、ブレーキングなどの減速側ストレスにはツインチューブが開く方向にかかるのに対し圧倒的に強いメリットもある。
そしてこのフレームレイアウトの変更に伴い、水冷4気筒DOHC16バルブエンジン(ボア×ストロークは56×40,4mmと変わらず)も、正確な重心位置設定をはかるためダウンチューブに沿って16°の前傾を24°へと変更、バルブ駆動をロッカーを介するのをやめ、ダイレクトにリフターを直押しするレースエンジン同様の方式としたほか、オイルフォルターを水冷化したり、シリンダーに敢えて冷却フィンを刻むなど、ルックスを含めGSX-Rシリーズのアイデンティティを踏襲している。

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折りしも創立70周年の節目を迎え、スズキはコストを度外視してもアルミのダブルクレードルやエンジンの再設計など自社ならではの方向性にこだわっていた。
フロントフォークには倒立タイプを採用、丸目2眼のヘッドライトも、スラントノーズのカウルへフィットさせるためシールドに収まるデザインで、ステンレス・マフラーを含め、歴代で最もレーシーな仕様となり、同時にSPモデルも加え最強マシンをアピールできたと自信を深めていた。

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ハンドル位置の低さから燃料タンクに覆い被さる前傾姿勢が強く、GSX-R400Rの過激度はライバルを1歩突き放すレベル。ただタイミング的にレーサーレプリカのブームもユーザー側が追随するのに辟易するほどモデルチェンジのピッチが短かいなど、徐々に興味が失われつつあった。
レース出場のベースモデルとなるSP仕様も、贅沢なサスペンション仕様など徹底するスズキらしく豪華バージョンが居並んでいたが、生産台数も増えることなく推移していた。

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排気ガス規制でエンジン・スペックが変更になるなど、イヤーモデルを重ねていたが、依然としてGSX-R400RをSPバージョンを含め継続、5世代目のフレーム変更でニュートラルに狙い通りの旋回へ持ち込める鋭いハンドリングは、クラス最強のポテンシャルとの評価が揺らぐことはなかった。
とはいえ、SP モデルは1993年を最後に、ベースのGSX-R400Rも1995年モデルが最終型となり1998年まで継続生産されるレプリカとしては長めのモデルライフだった。
多少の重量増があっても、剛性とロール運動でハンドリングが優位になると、他が見向きもしなかったアルミのダブルクレードル・フレームを採用するGSX-R400Rは、400レプリカの最後を飾るに相応しいスズキらしさを満載したマシンだった。