エンジンを3冷却方式にアルミフレームもデュアルセル方式に挑戦!
1984年、スズキはGSX-R(400の排気量記号を車名につけず本命感を漂わせていた)をリリース。
前年に2ストローク250ccのRGΓ(ガンマ)を、オールアルミ製フレームや前傾セパレートハンドルにカウリング装着と、それまでのレーシーな雰囲気のマシンとは一線を画した本モノ感でライバルを慌てさせた。
GSX-Rはそんなレプリカ時代を牽引しながら、各メーカーがこぞって同じコンセプトに群がる状況に危機感を覚え、次なるモデルチェンジに次元の異なるフォルムを与える決意をしたのだった。
レーシングマシンそのままが「売り」だったGSX-Rを、中身はさらに最新テクノロジーを注ぎ込んだ斬新なマシンとして、外装を次世代スーパースポーツをイメージさせるフォルムに仕上げたのだ。
しかしエンジンは水冷だった冷却方式を燃焼で一瞬にして高温になるヘッド部分だけ水冷として、シリンダーは空冷とすることで4気筒間にあったウォータージャケットを省き、シリンダー全体の幅を縮めるコンパクト化を進め、エンジン内部でピストン裏へ目がけてオイルをジェット噴射する油冷という、冷却を3方式とする画期的なチャレンジを果たした。
フレームはアルミのダブルクレードルと耐久ワークスマシンそのままだったのを、ステアリングヘッドからスイングアームピボットまでを、デュアルセルという長方形断面の中にリブを設け剛性を高めた素材を採用、シリンダー部分を除ける湾曲した新しいレイアウトへと刷新した。
サスペンションもレーシングマシンそのままのフルフローター方式で、リヤブレーキのキャリパーもトルクロッドをフローティングして減速時の後輪ホッピングを抑えるレースからのフィードバックを反映していた。
そこまで内容的にはピュアレプリカ構成だったが、スズキは耐久レーサーの2眼ヘッドライトの顔から、敢えてスクエアな一眼ヘッドライトのデザインで他との差別化をアピールしたのだ。
2眼イエローバルブへフェイスリフト……
しかしスズキの狙いは完全な裏目にでた。内容的にはパフォーマンスアップの最強マシンだったが、一眼ヘッドライトの顔はパフォーマンスを感じさせないと不人気という結果だった。
発売してこのマイナスイメージが明白となり、スズキはこの一眼から以前の丸い2眼ヘッドライトへフェイスリフト、さらに耐久マシンの色濃くみせるためイエローバルブで正面からくるのはGSX-R400だとすぐわかるように配慮した。
車名も大ヒットしたGSX-Rから、人気のなかった1986年モデルのイメージを払拭するため、排気量の400を加えたGSX-R400として巻き返しをはかった。
ただ既にレプリカの熾烈な競争は激化の一途を辿っており、ひとたび崩れたイメージを覆すのは難しく、スズキはよりレーシーなエンジンやフォルムを纏った次世代の1988年モデルを投入するのだった。