ウエス・クーリーの活躍が忘れられない!
スズキの400ネイキッドで最も成功したのは、インパルス(Impulse)シリーズ。
旧くは1982年にGSX400Fを、レーシーにメーカー自らがカスタムしたようなフォルムとカラーリングで特別モデルとしたのが発端だ。
Impulse(衝撃)は各世代で濃いスズキファンの熱いハートに支えられてきた。
その中でひと際スペシャルなバージョンがTypeS。
スズキは4ストのDOHC4気筒をリリースして間もなく、アメリカのAMAスーパーバイクレースでウエス・クーリー選手が果敢に先達メーカーに挑戦、勝利した熱いドラマのレース出場マシンと同じマスコットカウルを装着したGS1000Sを1979年にリリースしていた。
このフォルムに依然として憧れる層へ向け、イメージを再現したモデルとして1994年にインパルスのTypeSが加わったのだ。
この1994年からのインパルスは第3世代。
そもそものきっかけは、KATANAの400を新たに設計したことに由来する。
KATANAの400エンジンは、外観をGSX1100S KATANAのイメージを受け継ぐよう、BANDITのGK75A水冷4気筒をベースに、何とシリンダーの高さを22mmアップ、これに伴いボア×ストロークを56mm×40.4mmから、52mm×47mmと6.6mmもロングストローク化、ストローク/ボア比を1100の0.917に限りなく近い0.904としてフィーリングを少しでも近づけた、とんでもない懲りようだった。
そうなるとクランクシャフトの鍛造型から新設計となる。ストローク延長と同時にクランクウェブの形状を変更して回転慣性を11%増して、低中速域のフィーリングを粘り強く滑らかな特性としている。
その結果、アイドリングのままローギヤにシフトしてクラッチをゆっくり放すと、GSX400S KATANAはスルスルと発進できるという、400cc4気筒では異例の特性を身につけていた。
こんな素性の良いエンジンを、KATANAのフォルム再現のためだけに製造するのはもったいない……ということで、途絶えていたインパルスの車名を復活、その第3世代として製品化されることになった。
これはエンジンのみならず、ダブルクレードルのフレームからアルミのスイングアームまで、走りの醍醐味を味わえるハンドリングへと調整され、走り屋ライダーには垂涎のスポーツネイキッドへと仕上げられていた。
翌1995年モデルでもTypeSは継続され、マフラーのテール形状を変更すると共にブラックに塗装される変更を受けた。
またこの年がちょうどスズキの創業75周年で、その記念モデルにインパルスが選ばれ、TypeSにレースからの青白ではなく、オールブラックにペイントされたスペシャルバージョンが用意されている。
続く1996年にもTypeSは継続、シート面の形状を前方の外側を削ぎ落とす変更を加えることで足つき性を向上するという、小さくない修正が加えられた。
TypeSはこの1996年モデルが最終バージョンとなったが、インパルスそのものは一旦途絶えるものの、2004年にまた復活して2009年まで生産されるロングランモデルとなった。