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このバイクに注目
SUZUKI
TL1000R
1998~2003model

TL1000Rは海外マニアに希少な日本製ハイパーツインと意外な人気!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

TL1000Sベースにスーパーバイクのホモロゲマシンを開発!

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スズキは知る人ぞ知る、Vツインスポーツにチャレンジしたメーカーで、海外では大成功を収めたSV650などの実績もある。
しかしその発端となった1998年のTL1000Sから翌年のスーパーバイク参戦を目指しホモロゲーション・マシンとしてTL1000Rを開発した初期の時代は、他より革新的に過ぎたこともありなかなか人気を得られなかった。

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実は当時、スーパーバイクが4気筒を前提としていた750ccの排気量制限を、3気筒なら900cc、2気筒であれば1,000ccに変更されたことで、日本メーカーもホンダとスズキがこれに対応。
スズキは1997年に、意外な伏兵として早々とTL1000Sをデビューさせ世界を驚かせた。
このTL1000Sをベースに開発したホモロゲーション・マシンは、エンジンをレースチューンを前提として、フレームは完全に異なるツインチューブを新たに設計していた。

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まず人々の関心を集めたのがそのハイパーぶり。
98×66mmのボア×ストロークは995cc。2インジェクター化され、ピストンやコンロッドも高圧縮と高回転化へ対応する仕様となり、国内向けは93ps/8,500rpm、8.8kgm/7,000rpmのスペックだったが、輸出向けでは抜きん出た135ps表示。
これを疑った海外バイク雑誌がダイナモで後輪計測すると確実に125psを上回り、当時のドゥカティ916やホンダのVTR1000Fが実測105psだったことから最高峰のお墨付きとなった。
車重も乾燥で197kgとフレーム剛性アップでSより若干増えたが、依然として!,000ccクラスで群を抜いた軽さ。
日本ではビッグツインへ関心が薄かったので注目されなかったが、主要マーケットの海外では相応に注目マシンとなっていたのだ。

エンジン全長の長いVツインを、
ショートホイールベースとする工夫の数々

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90°Vツインをスーパースポーツへ搭載しようとすると、まず問題なのがエンジンのアタマまわりがDOHCハイメカ搭載だとボリュームがあり、前輪との干渉でホイールベースが長くなりがちなこと。
TL1000SではDOHCで直接カムシャフトをチェーン駆動せず、ギヤ駆動を介することでヘッドをコンパクト化していた。
さらにリヤサスを常識的なダンパーとスプリングを一体化したタイプではなく、ダンパー部分を円形のオイル室で回転抵抗で減衰する、ロータリーダンパーを開発することで、全体コンパクト化をはかった車体設定としていたのだ。

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その結果ホイールベースはTL1000Sよりさらにショートな1,395mm、車重と共にクラスの常識を打ち破るスペック。
ただこの設定が、クイックさを補う前輪の安定を高めたアライメントを重く感じさせ、フロントフォークをトップブリッジから数ミリ突きだし、リヤサスも若干1G'を高める修正で、ライバルたちとワインディングで渡り合えるとユーザー間を情報が飛び交っていた。

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こうしてスズキらしく、マイノリティ好きのファンに支えられ2003年までカタログに残るモデルとなった。
この90°Vツインのシリーズとして、2003年からツーリング仕様を意識したSV1000SとネイキッドのSV1000も加わり、国内であまり知られていないミドルクラスで人気のSV650系と共に、扱いやすいスポーツとしてファンを獲得していたのだ。