国内向けFZ400(4YR)は不人気でもFZS600はマイナーチェンジで2003年まで爆売れ!

ヨーロッパはスポーツバイクのメジャークラスが600cc。日本の250ccや400ccクラスと同様、マニアックなスーパースポーツからツーリングバイクまで、幅広い機種が勢揃いしている。
日本の4メーカーも、このドル箱クラスに注力した傑作バイクも多いものの、国内の400ccクラスへ転用して成功した例は少ない。
ヤマハのFZS600も、リリースから3年間で8万台を超える大ヒットだったものの、国内向けFZ400(4YR)は注目されず僅か2年で姿を消した。

1998年にリリースされたFZS600(5DM/5RT)は、エンジンが水冷DOHCの気筒あたり4バルブでボア62mm×ストローク49.6mmの599cc、95PS/11,500rpmと61.2Nm/11,000rpmのパフォーマンス。
ヨーロッパは高速道路のアベレージからカウルのないネイキッドは少なく、このFZS600もボディマウントのハーフカウル装着。
ただ位置づけとしてはアップライトで乗る姿勢の日本だとネイキッドのカテゴリーにあたり、運動性を前提とする浅いシリンダー前傾角と、バルブの挟み角を一気に狭くしたDOHCの2本のカムシャフトが近いコンパクトなヘッドまわりをアピール。
フレームはメインパイプが太いダブルクレードルをワイドにレイアウト、乾燥重量189kgに収めていた。




こうしてほとんどを国内向けFZ400と共通していたが、当時のヤマハXJR系譲りの豪華仕様、ブレンボ製キャリパーを奢っていたのはさすがにヨーロッパでは採用されていない。
トップスピードは200km/hを超えるパフォーマンスのため、見た目にサスペンションなど足回りは一般的な仕様だが、エンジンの重心位置からアライメント設定までバランス重視で設計されていて、ハンドリングは安定性ベースの乗りやすいとの高評価でこれが人気を支えていたのだ。


ヨーロッパはツーリングもタンデムが主流で、巡航速度も高く移動距離も長い。
ただ600ccクラスは価格設定もあって、実用性の高さや耐久性などユーザーの選択要素が堅実さのほうへ向く傾向がある。
見た目より疲れない、壊れない、燃費の良さなどが評価されている。
FZS600が爆売れしたのも、地味ながらこの総合評価の高さが要因だったのだ。



たださすがに好評でもライバルがNewモデルを投入してくると、新鮮味を保つ意味でマイナーチェンジは必要となる。
FZS600もFazerの流れに沿ったノーズがややスラントして尖ったデザインとなったが、2003年からはスーパースポーツのR6をベースとしたFZ6-Nをネイキッドで、さらにハーフカウルのFZ6-Sと、仕様も装備もパフォーマンス寄りな路線へと向かった。



FZ6-N系はその後バリエーションも増やし、ヨーロッパのスタンダートモデルとして位置づけされるまで認知度を高めたが、ライバルはツーリング向きな仕様へ注力した新しい路線を構築、ヤマハはこうした流れには関心を示さずFZS600の本来の意味での後継機種が姿を見せないままが過ぎていくことになった。