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このバイクに注目
YAMAHA
XJ900S Diversion
1995~2002model

ヤマハXJ900S Diversionの輸出専用が残念な洗練された空冷4気筒!【このバイクに注目】

日本ではうけなかったDiversionコンセプトはツーリング好きのヨーロッパでは人気に!

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1991年、ヤマハはXJ400S Diversionという空冷DOHCで敢えて2バルブとした前傾35°の4気筒モデルをリリースした。
当時は1989年に登場したカワサキのゼファーが爆発的なヒットで、トラディショナルな空冷4気筒ネイキッドがブーム。
ヤマハも対抗して1993年にXJR400を投入、2007年に生産中止になるまで メジャーなモデルとして存在感を放っていた。

しかし、そのいっぽうで新しい空冷トラディショナルを模索していたヤマハは、主にヨーロッパで需要が高まっていたミドルクラスのトラディショナルなツーリングスポーツを企画、XJ600Sを開発する途上で国内むけ400ccバージョンが加わったのだ。

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そのXJ400S Diversionは、ボディマウントのハーフカウルがネイキッド・ブームの渦中ではいっさい注目されなかったが、ヨーロッパのほうは狙い取りの大ヒット。
その勢いの中、浮上してきたのが1980年のXJ650(653cc)をXJ900(853cc)まで排気量アップして得た成功した記憶だった。
ということで、前傾35°のXJ600Sの58.5mm×55.7mmで598ccだったのを、68.5mm×60.5mmの892ccまで拡大、DOHCの外観を左右するバルブ鋏み角を1970年代並みに拡げた敢えて2バルブの燃焼室から、89.4PS/8,250rpmと83.3Nm(8.5kgm)/7,000rpmのパフォーマンスを得ていた。
これをもともとのワイドなダブルクレードル・フレームを強度アップ、239kgの車重と1,505mmのホイールベースで、ミドルクラスの扱いやすいコンパクトさと900cc4気筒のトルキーな力強さで、ミドルのタンデムだとやや不足気味になるコーナリングや高速道路での醍醐味と快適さを大幅にアップしていたのだ。

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ヤマハは伝統的にスポーツバイクには扱いやすいマイルドさが必要というフィロソフィを貫いた時代が長かった。
この900cc Diversionも、エンジンをラバーマウントした快適性はもとより、燃焼室からして良き時代の空冷2バルブならではの、レスポンスが穏やかで人間の感性に馴染みやすいタイムラグとトルクの盛り上がり方、さらには定評の高かったシャフトドライブの安心感など、ヨーロッパで生粋のヤマハ・ファンには心惹かれる4気筒として定着した。
ハンドリングも狙い通りパイプフレームのしなやかさが功を奏し、35°前傾のもうひとつの理由だった、ニュートラルなセルフステアに調和しやすいエンジン重心位置と相まって、いかにもヤマハ感性の乗り味だったのはいうまでもない。 こうして最高速度209km/hで0-100km/hが3.9秒なら何の不足もないと、ハイパーな水冷4気筒には見向きもしない層に支えられ、手堅くシェアを伸ばしていたのだ。

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このヨーロッパならではの、スポーツバイクを長距離ツーリング、とくにタンデムしたときの総合性能や、タウンユースでも使い勝手にもこだわる厳しい選択眼は、ヤマハだけでなく日本製ミドルを鍛え上げていたのは間違いない。
そうした使われ方では選ばれない国内事情とは、大きく違った面ということになる。
ツーリングにどこかライダーの我慢が強いられて当然と思う国内事情とは、ここからしてバイク観が根本的に異なるのは仕方のないことではある。 ただ行程の長いツーリングに出かけるライダーも増えているので、これからそうした評価を気にする傾向が増える可能性も低くない。

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XJ900S Diversionは、メーカー純正のタンクバッグからパニアケースまで用意して、ヘビーなハイエンドツーリングバイクでなくても、もっと気軽に長距離やタンデムツーリングに出かけようというキャンペーンを展開。
ウインドシールドも、上部のスリットがヘルメットの風切り音や、雨天時の視界確保などに功を奏すると好評で、実用性を優先してきたこれまでの経験が見事に活かされていた。

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このどちらかといえば地味なコンセプトのDiversionだったが、ヨーロッパでツーリングファンの増加と共に需要も堅調で、2002年モデルまで存続する手堅い存在だった。
中庸なモデルは確かに派手さもなく、なかなか手が出にくいカテゴリーではあるが、キャリアを積んだライダーには自分にとってのメリットを優先する価値観があるはず。ヤマハが信じてきたのは、まさしくそこの共感狙いだったのは間違いない。