img_article_detail_01

タイヤが減ってくると滑りやすくなるのはなぜですか?【教えてネモケン018】

oshiete-nemoken_018_main.jpg

A.トレッド面のゴム層が摩耗するとダンピング性能も落ちるからです

熱い闘いが繰り広げられるMotoGPやSBK。観ていて毎レース気になるのがタイヤです。
前半にペースを上げると最後にグリップしなくなるとか、
後半に備えて温存するとかタイヤのグリップ性能はそんなに変わるのですか?

最後までグリップするタイヤはつくれない⁉︎

レース結果を左右するタイヤですが、最後までグリップの変わらないモノを用意できれば問題ないはず。
なぜタイヤメーカーが開発しないのか疑問に思われるかもしれません。

レーシングタイヤ、溝のないスリックタイヤは、技術的にもさまざまな要素が絡んでいて簡単に説明できない部分もあるのですが、ここでは細かいコトは抜きにして概要だけでお話しましょう。
タイヤが摩耗するとグリップしなくなるのは、路面と接しているトレッド部分のゴム層が薄くなるからです。タイヤのグリップ力は、もちろん一般的にコンパウンドと呼ばれるゴム質の粘着力がベースですが、実はもっと大事なのがダンピング性能。

つまり、滑りだしそうになったとき、一気にスリップさせない減衰特性が大切になるんです。この特性は、ゴムの層がたわむことで得られるため、摩耗して薄くなると徐々にたわむ余裕がなくなり、厚みがなくなってしまうまで薄くなるといきなり滑りやすくなります。

例えとして、地震対策で使われる免震ゴムをイメージしてみましょう。あのゴム層が薄ければ横揺れに対し減衰できる性能は低くなりますよね。
トレッドのコンパウンドがどんなに柔らかく粘着力があっても、ゴム層が薄くなってしまうと、GPライダーでさえ深くバンクしたときのコントロールが難しくなるのです。

oshiete-nemoken_018_01.jpg

レースでは一定のグリップ性能が求められる

摩耗によってトレッドのゴム層が薄くなるとMotoGPライダーでさえ、思い切った走りができなくなる。レースでは一定時間グリップ性能が維持でき、ライダーが信頼できるバランスのいいタイヤが求められる

ゴムを分厚くすれば、減りにくくなるんじゃない?

だったらゴム層を、厚くすれば良さそうですが、これも厚すぎるとグリップ力の変化が常にある、とても乗りにくいモノになってしまいます。レースでは、一定のグリップ性能が維持されるコトが重要なのです。

もちろんグリップ性能が高くなければ、好タイムもマークできませんし闘えません。そうなると、ベストなグリップがある一定時間以上は得られて、ライダーに信頼されるバランスが、現在使われている仕様というワケです。

スリックタイヤって繊細なんだナァと思われたあなた、これはトレッドにパターンのある皆さんが履いているタイヤでも同じコトがいえるのです。
タイヤの溝が摩耗して浅くなれば、トレッドのゴム層が薄くなるワケで、グリップ力で大事な減衰力が急激にドロップして、いとも簡単にスリップしかねない状況に陥ります。

まだ溝があるから大丈夫……なのではなく、その溝にスリップサインという、わずかに盛り上がった部分があって、これが路面に触れるようになったら交換のタイミングなのをぜひお忘れなく。

溝がなくなるほど、接地面積が増えてスリックタイヤのようなグリップが得られると思うのは、いうまでもなく真逆の大きな勘違い。
危険この上ないのはいうまでもありません。

それと憶えておいて欲しいのが、トレッドは減っていなくても経年変化でタイヤは劣化し、ダンピング性能が落ちるのをお忘れなく!

oshiete-nemoken_018_02.jpg

グリップ力はもちろんダンピング性能が大事

タイヤのグリップ力は、コンパウンドと呼ばれるゴム質の粘着力と、ゴム層がたわむことで得られるダンピング性能によって発生している。トレッドのゴム層が摩耗して薄くなると、タイヤは滑りやすくなる

oshiete-nemoken_018_03.jpg

レースだけでなく公道のタイヤも同じ

摩耗によるグリップ性能の低下はスリックタイヤだけでなく、公道用タイヤでも同じ。公道用タイヤには溝の間にスリップサインを示す部分があり、ここが路面に触れるようなら、すぐにタイヤを交換しよう

Words:根本 健 Photos:ドゥカティ,スズキ,日本ミシュランタイヤ