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トラクションは速く走る人が使うためのものですか?【教えてネモケン045】

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A.一般的なライダーにとっても大事な乗り方です

雑誌などで見るトラクションという用語ですが、
速く走るためのテクニックのように感じます。
我々一般的なライダーにも関係ありますか?
どう使うと良いのでしょうか?

バイクを安定して加速させるために使う

トラクションという用語は、確かに近年のバイク雑誌で頻繁に使われるようになりましたね。実は、ボクが日本のバイク雑誌で最初に使いはじめた用語です。なぜなら’70年代から一般的にスポーツバイクでコーナーを楽しむようになったからです。

このコーナリングで基礎となるのがトラクションです。直訳すると駆動、つまり加速させてタイヤが路面を蹴る状態をつくることが大事なのです。メリットは旋回しているバイクが安定性を増して、目指す方向へ確実に曲がれるようになることです。

ピンとこない方は、ワインディングで上り坂と下り坂のカーブをイメージしてください。上り坂は怖くないのに対し、下り坂はどこか不安ですよネ。上り坂は速度が落ちないようにスロットルを開け続け、意識せずとも駆動力をかけっぱなしにしています。だからバイクが安定して安心感が得られているのです。

しかし下り坂は速度が上がらないようスロットルは開けずにいるため、フラフラしがちで心もとない感じがします。トラクションによる効果の違いを体感しているというワケです。

たとえばコーナー出口が見えるまで、速度を上げるのを控えてパーシャルという加速も減速もしない、一定のスロットル開度を保ちがちですが、この状態だと旋回も成り行きまかせ。ライダーが意志を持ってコントロールしている状態とはいえません。そこでコーナー入り口で曲がれると思えるより低い速度で旋回を始め、その余裕を使って早い段階から加速すれば、安定した状態を長く保てるようにできます。

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低回転域を使ってトラクションを引き出す

トラクションを実感するためには、スロットルの開け始めを低回転域で行う。たとえば1,000ccの4気筒なら2,000rpm+α、2気筒でも3,000rpmまで落とし、ギヤは4~5速で試す(カーブにもよる)。スロットルをスッと大きめに開ける操作が先行し、回転が後からついてくるイメージだ。エンジンの回転上昇に合わせるようにスムーズにスロットルを開けていくとトラクション効果は薄れる

スロットルをスッと大きめに開けてタイヤを路面に押し付ける

とはいえ、ビッグバイクのように大出力のマシンは、瞬く間に加速してコーナーを曲がれる速度を上回ってしまいがちです。そのため、エンジンが低回転の状態でコーナーに入り、そこからスッと大きめにスロットルを開ける乗り方が功を奏するのです。

4気筒といえど低い回転域は爆発による脈動が明確で、路面を刻むようにタイヤがグリップする効果もありますし、万が一滑り出しても高回転域のように一気に吹け上がってスリップダウンする危険性もありません。

ここで大事なのはスロットルは徐々に開けるとトラクション効果が得られないということです。ある程度以上タイヤを路面に押し付けて潰すような状態にすることで、安定性が高まるからです。

またバイクの構造でも、タイヤを路面に押し付けやすくしているのをご存じですか? よくバイクは加速するとリヤが沈むとイメージしている方がいます。実際はフロントフォークが伸びているのを相対的に後ろが下がっているように感じているのです。リヤはリフト、つまり加速時にはシートを持ち上げる方向に働いています。

考えてもみてください。もしも旋回中に加速したらスイングアームが引っ込む(沈む)方向に動いたら、タイヤは一瞬路面から離れてしまいますよネ。なので、スイングアームの付け根にあるピボット軸の位置を、チェーンを駆動するドライブスプロケットの位置より上にして、加速が始るとき距離の短いほう、スイングアームが路面の方向へ動く位置関係にしているのです。

このしゃがみ込まない設定を、“アンチスクワット”と呼んでいて、重要な車体の設計要素になっています。

そう、トラクション使うのは何も飛ばすためのテクニックではなく、バンク角が浅くても安心できる状態を生む大事な乗り方なのです。ぜひリスクのない条件下で、この安定感が増えることを実感して、低い回転域でコーナーへ入り、ジワッと早めに大きくスロットルを開ける操り方を身につけてください。

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車体の構造的にもリヤタイヤが踏ん張る方向に力が働く

低回転域からスロットルを大きく開けることでアンチスクワット効果が働き、リヤタイヤが路面に押し付けられる。この状態で加速することをトラクションを使って走るといい、安定した旋回ができることになる。スイングアームのピボット位置に対して、ドライブスプロケット軸をやや下げる位置関係とすることでアンチスクワットが働くように設定されている。ハイパワートルクMotoGPマシン(写真はホンダRC213V)では、市販車より繊細な設計が施される

Words:根本 健 Photos:真弓悟史,本田技研工業