発進と小さなターンでクラッチを使いこなす|RIDE LECTURE 031|RIDE HI
ビッグバイクに不慣れで、交差点の左折や路地裏の曲がり角で大回りしてしまいます。どうすればベテランのように小回りターンができますか?
A.小回りターンするとき、クラッチを切るだけで小さく曲がれます!
ビギナーの方は裏路地のような狭い道幅の交差点での右左折が苦手ですよね。道幅一杯になってしまったり、曲がりきれず一旦停車後にスイッチバックしてから曲がり直すなんてこともよくあると思います。
ビッグバイクは重さや大きさもありますが、ひと度走り出してしまうとその大きさや重さが功を奏し、むしろ中型車より安定して乗れます。教習所などで初めてビッグバイクに乗ったとき、そう感じた方も少なくないはずです。
それは停車してから足をついても間に合うくらい、極低速でも頼もしい安定感に満ち溢れています。ところが曲がろうとした途端、まるで思い通りにならない重くて不安定で厄介な状態に陥ります。なぜだと思いますか?
膨らんでしまう原因とは?
その原因は、極低速なのにコーナリングしてしまっていることにあります。エッそんなつもりは全然……なんて思うでしょうが、意味としてはそういうことになってしまうのです。
この歩くようなスピードで小回りターンするとき、一番厄介なのがエンジンの駆動力です。
車両によって差はあるものの、たとえばローギアでも時速20キロはアイドリングかそれ以下になります。
つまり一旦停止してからの半クラッチでの発進は、小回りターンの速度を上回ってしまいます。この速度でクラッチを繋いだまま曲がろうとすれば、当然それは大回りになってしまうでしょう。
ビッグバイクのエンジンは、アイドリング状態でもトコトコと前進します。1回の爆発で蹴るチカラが強い2気筒などはさらに顕著。
ということなので、ビッグバイクの小回りターンは、原則としてクラッチを切ります。
そして極低速で小さく曲がるには、ハンドルの切れ角も必要になります。しかしだからといって無理にハンドルを切ると、反作用で曲がりたい方向と逆側に車体が押されてしまい、慌ててハンドルを戻したりと。
しかし小回りの速度では、車体を傾けると前輪が追従して舵角バランスするセルフステアも期待できません。ではどうしたらいいのでしょうか?
小回りターンのコツはクラッチを使って”一瞬の不安定”を作ること
こんなときのアクションのコツは、曲がりたい方向の外側の膝で燃料タンクをイン側の方向に軽くひと押しします。もしくは慣れるまで、上半身は起きたままで下半身だけでリーンする、リーンアウトのフォームをとると意外にすんなりできるかもしれません。
このとき、同時にクラッチを切って無駄な駆動を途切る操作も併せワザとして使うと、フラッと車体が傾く勢いが促され、ハンドルが内側に切れてくれます。
「曲がろうとしている途中でクラッチなんて切ったら立ちゴケしちゃうじゃないか!」いやいや、フラッときたら、すかさず半クラッチをちょっとだけ使いバランスを補いましょう。
慣れてくると、クラッチを切ることで最初に曲がりたい角度の半分くらいは曲がれてしまうので、半クラッチは最後に曲がりきれるのがわかったあたりで、車体を安定させるちょっと使う程度になります。
つまり小回りターンの極意は、一瞬クラッチを切って素早く不安定にして、このフラつく勢いで舵角を稼ぎ、クイっと曲がってエンジンでまた安定状態に戻すということなのです。
小回りターンは、誰でも最初は苦手と感じるもののひとつだと思います。ましてやクラッチを切るなんて……ビギナーほどそう思いがちですが、今までの状態で大回りをするよりも、小回りターンのコツをしっかりと身につけて曲がる方がよっぽど安全だと思います。苦手と思っていたシーンがそうでなくなると、誰でもテンション上がりますよね。ぜひチャレンジしてみてください!
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- 藤原 らんか