1万4,000回転を超えても怒涛のレスポンスで回転上昇するデスモドローミック。市販車とは思えないパワーを、超高機能パーツを高次元でバランスさせたシャシーが支える。モトコルセの知見と技術が、天性のアスリートをさらに鍛え上げた。
制限なく追求したスポーツバイクの究極
市販車をベースとするSBKレースに参戦するために作られた“ホモロゲーションモデル”。ドゥカティは旧くから、いわゆるベース車両ではなく、本気で勝つためのホモロゲーションモデルを市場に投入してきた。その最新マシンが「パニガーレV4R」だ。
そんなV4Rには、当然ながらレースのレギュレーションによって車両価格や装着部品に制限がかかっている。その頸木から解き放ち、純粋に走りのパフォーマンスを追求したのが、モトコルセが手掛けたこのマシンである。
足周りに400万円のコストをかけると……
エクステリアに変更がないので、一見するとライトカスタムかと思いきや、その足周りはよく見ると驚異。
ファクトリー級のレーシングマシンが装備するオーリンズ製のレーシングフロントフォークやブレンボ製のレーシングキャリパーやマスターシリンダー、さらにはモトコルセとSICOM社のコラボレーションで生まれたカーボンセラミックのディスクローターを投入。さらには軍事技術をも投入した超軽量で高強度のBST社のカーボンホイール等々……車体価格に迫るコストが足周りを中心にかけられているのである。
果たしてその走りは……。
「そもそもパニガーレV4Rは、V4Sと比較すると、かなりコンパクトなフィーリングだが、このマシンはいっそうコンパクト」と、筑波サーキットのコース1000を試乗した編集長・小川の第一声。
「カーボンホイールとカーボンセラミックディスクのいま考えられるもっとも軽量な組み合わせが、そう感じさせる要因なのは間違いない。とにかくバネ下が軽いからサスペンションもソフトな設定にできるし、ブレーキも良く効く。
カーボンセラミックブレーキは安心の制動力を発揮し、レーシングフォークは深く沈んだところでもインフォーメーションが豊富だから、前輪のグリップを存分に引き出せる。このフロント周りの信頼感の大きさは特筆モノ。そんな秀逸なシャシーは、同時に車体重量を大幅に軽減するため加速力は凄まじく、ショートコースのコース1000だとストレートを一瞬で駆け抜けてブレーキポイントに到達。もはや市販車のレスポンスを遥かに凌駕する。“天性のアスリートが、徹底的に身体を鍛え直した”とでも表現すれば良いのか、一分の隙もない」
タイトなコースだが、そこを水を得た魚のように周回を重ねる姿を見るだけでも、マシンとライダーの一体感の高さを伺える。純然たるスポーツバイクの究極に、限りなく近づいたコンプリートマシンがここにある。
フロントフォークはSBKマシンに採用されるオーリンズのFGR300に換装。フロントブレーキはモトコルセ/SICOM製のカーボンセラミックディスクに、ブレンボのCNCモノブロックP4-34/38をセットする
リッタースーパースポーツとは思えないほどどこまでも旋回スピードを上げたくなるパニガーレV4R
プリプレグモノコックカーボンファイバーの5スリットスポークのホイールはBST社のRapid TEK。超軽量な上に金属製ホイールを超える強度を持つ
V4Rはノーマルでも最高出力221hpを誇るが、レースキットのアクラポヴィッチ製のドゥカティパフォーマンスエキゾーストを装着すれば1万5,500回転で234hpを発揮!
ブレーキ/クラッチともにブレンボの削り出しラジアルマスターに交換。フォールディングレバーはモトコルセのドライカーボンを装着する
トップブリッジは繊細な切削で大幅に肉抜きしたモトコルセのオリジナル
モトコルセ
ビモータやヴァイルス、アヴィントンなどプレミアムなバイクをはじめ、STMやALTHなど高品位パーツの正規輸入元を務め、ドゥカティライフスタイル東京、ドゥカティ埼玉の母体でもある。ドライカーボンやCNC切削、チタニウムなど高品質素材を用いたオリジナルパーツの開発・販売も行う。取り扱うプレミアムバイクをベースに、世界の一流パーツやオリジナルパーツを組み込んだ「コンプリートバイク」の製作に力を注ぐ