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【MotoGP第11戦 ついにMoto2ルーキー小椋 藍が表彰台へ!】早くMotoGPを走る姿を見てみたい!

ワクワクする順応力の高さ。早く最高峰クラスを走る姿を見てみたい!

あまり感情を出さない小椋 藍の笑顔が眩しかった。
Moto3では表彰台の常連だった小椋だが、納得のいかないレースでは表彰台の上でも笑顔はなかった。
自分に厳しい小椋は、あまり感情を表に出さないような印象を持つ。
その小椋がMoto2初の表彰台で喜びを爆発させた。

これまでに2回ほど彼にインタビューをさせてもらったが、1回目は2020年シーズンのタイトル争いの直後のタイミングだった。その時は、あまり何を考えているかわからない、不思議な雰囲気を持っているアスリートだなぁ、という感じだった。
MotoGPチャンピオンになりたいのか? それ以前にMotoGPクラスを走りたいのか? 
何を目標に走っているのか? 正直、まったく読みとれなかったから、とても印象に残っているのだ。
でも、終始負けず嫌いがにじみ出ていたから、いま思えば、最終戦までチャンピオン争いを繰り広げ、手が届きそうで届かなかった悔しさが残っていたタイミングだったのかもしれないとも思う。

2回目は桶川スポーツランドで2021年シーズンの夏休み。つい最近のこと。
(その時の記事はこちら。「【特別対談:世界で戦う若き日本人ライダー】Moto2小椋&Moto3國井&WSS 300岡谷」)
ファンや仲間と話をするリラックスした表情を見て、しっかりとオン&オフを切り替えているんだなぁと思った。
少年ライダーたちに接する小椋は優しくも厳しくもあり、皆んなの憧れの存在だった。
「いまから僕ら(世界戦を走る現役ライダー)が走りを見せないと国内のレベルが上がっていかない。引退してからやっている選手はたくさんいますが、現役でやっている人はいなかった。だからやろうと思ったんです」
20歳のライダーがそこまで考えているとは思ってもいなかったし、とても関心させられた。
話を聞いていて彼の信念はとても強い。
2回目のインタビューでは、目標に向かって一直線に進んでいるのが伝わってきた。

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常にトップ集団を走る“力”

そんな小椋がついにMoto2昇格後初めて表彰台に登った。ついに、と書いたが小椋はMoto2参戦1年目。20歳のライダーである。その順応力の高さには本当に驚かされる。毎戦確実に成長しているのがわかるし、それがファンやメディアの期待値をどんどん上げていってくれる。
今回の表彰台で「早く小椋がMotoGPを走っている姿を見てみたい!」と思ったファンは多いはずだ。
そしてそれはそれほど遠くないことをなんとなく予感させてくれる−−。

Moto3時代から常にトップ集団にいるライダーだったが、常にあの場所にいることは並大抵ではない。Moto3は順位の入れ替えが激しく、ときにはぶつかり合いながらのトップ争いが展開されるクラス。ワンミスでどこまでも順位が下がってしまう。
そしてその場所にコンスタントにいられない日本人ライダーが多い中、小椋だけは常にロジカルなレースを展開し続けた。
しかも、小椋の走りはどこまでもクリーンだ。無茶をしながらあの場所に一瞬居ることは可能かもしれないが、そうすると転倒に巻き込まれたり、もしくは転倒して相手を巻き込んでしまうリスクにつながる。

小中排気量クラスは勢いで走っているライダー、ガムシャラで走っているライダーが多いのだが、小椋は違う。よく考えていて、その場その場での対応力や判断力が正確だ。周りをよく見ているし、レース展開をチェッカーまで見据えている。

それは先日、桶川で実際に走りを見た時もその片鱗を感じさせてくれた。「バイクをこう走らせよう」明確にその意志を感じるのだ。なんとなく止めて、なんとなく滑らせて、なんとなく加速させている雰囲気がまったくない。一見するとアグレッシブさはないけど、「バイクってこんなに思い通りに操れるんだ」とただただ感心させられた。そのロジカルな走りこそがMotoGPへの可能性を感じさせる“力”なのだと思う。

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手前が小椋、奥はWSSP300の岡谷雄太。桶川スポーツランドでの練習風景

急速にライダーの世代交代、マシンの勢力図変更が進むMotoGP

2021年、後半戦の初戦であるスティリアGPでバレンティーノ ・ロッシが引退を発表した。「まだまだレースは大好きだけど……」とてもすっきりした表情だったが、トップ争いをできなくなった自分を、最高峰クラスは好きなだけじゃダメなんだと、無理やり納得させているようにも見えた。2022年、世界中にいるあのイエローの集団はどこに行ってしまうのだろう……。

そして、2019年まではマルク・マルケス一強時代がいつまで続くんだろう……と思ったが、マルクの怪我でMotoGP界は一変。若手もそのタイミングを見逃さなかった。2021年の開幕戦、カタールGPでドゥカティを駆るホルヘ・マルティンの身体の動きを見て驚いた。全身を使って常に荷重ポイントを変えてアグレッシブにバイクを操っている姿は、新しいライディングスタイルを予感させると同時に、年齢を重ねていくとこの激しい走りはできないだろうな、とも思った。

メーカーでいうとKTMの躍進も凄い。ファクトリーフル参戦は2017年からだから、まだ5年目。Moto3、Moto2、そしてMotoGPの流れを見据えた長期計画を着々と進行させている。国産メーカーはこの動きをもっと脅威に見た方がいいのでは、と個人的には思う。ホンダは2020年シーズンは0勝、2021年はマルクの1勝に留まり、ヤマハはランキングトップを走るが、そのファビオ・クアルタラロも安定感を欠いている。昨年タイトルを獲得したスズキも苦戦中だ。

ライダーのストーブリーグもメーカーの勢力図もまだまだ加熱しそうだが、Moto2での順応力の高さを見ると、小椋はこの激動のMotoGPで戦うセンスと速さを兼ね備えているような気がしてならないのだ。
日本人贔屓の見方かもしれない。気が早いと言われるかもしれない。いや、きっとそうなのだとも思う。でもどのメーカーからでもいいから小椋がMotoGPを走る姿を見てみたい!

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