ABSが作動すると怖い、どうせ効かない……で、まったく使わないライダーが多い
リヤブレーキは、ビギナーだと「よくわからない」から”かけない”ライダーが圧倒的に多い。そしてベテランも「どうせ効かない」から”気にしてない”と使わないライダーが多い。
最近では新車を購入すればABSが標準装備なので、リヤブレーキを踏み過ぎるとガタガタガタガタッと後輪が揺れるため、そんなビックリするような体験をして触らなくなった人も少なくない。
ABS未装着の時代だと、後輪がブレーキ効き過ぎてロックしてしまい、キューッとタイヤが鳴く音で肝を冷やして2度と踏まないとココロに決めたライダーも多かった。
しかし、これらはブレーキペダルの操作が乱暴だから起きていることばかり。丁寧に踏めば、制動距離も驚くほど短くなり、あの嫌な前のめりも少なく安心してブレーキングができるのだ。
まずはイラストを見て、ご自分のブレーキペダル操作をチェック。どうしてABSが作動してしまうのか、もしくはすぐロックしていたのか、ご覧のように入力の加減が掴めないまま操作していたからだ。
覚えてしまうとわかるのが、やれたほうがやれないよりイイというレベルではない、バイクを操る上で安全はもちろん楽しさまで左右する大事なテクニックということ。
この機会にこのメソッドを試して、必ず身につけておこう!
ブレーキペダルを踏むとき、つま先にチカラを込めると土踏まずが浮き気味になり、支点がないので入力の加減がわかりにくい
クルマの運転で、かかとをフロアから離してブレーキペダルを踏んだらどうなるかはご存じの通り。支点がないと加減がわからずガツンと急ブレーキになる
ペダルの遊びから先にある入力の足応えを感じながら強弱管理を
支点がないから入力の加減がわからなかった原因を取り除くには、まずかかとをステップに載せ足が随分と前に出てしまう状態でもまずは試しにペダルを踏んでみよう。
こうするとかかとが明確に支点となって、どこまでがペダルの遊びストロークで、どこからが入力できる位置なのかも感じることができる。
できたら暫くこの位置で、日常的なブレーキングでリヤブレーキを使う感じに馴染んでおきたい。
次にこのままだと車体が傾くとつま先が路面に接してしまうので、ステップに土踏まずが載る定位置へ戻し、ブレーキ入力するときに土踏まずを踏みつけるようにしながら、その余力でペダルを操作する、支点を失わない操作方法で踏んでみよう。かかとを支点にしていた感触と近い状態になっているのが確認できるはず。
慣れてくると、くるぶしの内側をフレームなど車体側へ擦り付ける感じで支点にすると、同じような効果が得られるのでお試しを。
ブレーキペダルには遊びのストロークがあって、実際に効きはじめる入力位置からの入力を調整する。この微妙な足応えを感じるには、かかとをステップに載せ支点をつくるのが手っ取り早く、だれでも感じられるようになる
かかとを支点にしたときの足応えと同じ感覚にするため、ステップに土踏まずを載せた定位置でも、上からステップを踏みつけながらペダルを操作するよう工夫する。かかと側が浮かないようにしつつ、余力でペダル操作ができるのに慣れることだ
前後ともかけると驚くほどの制動力と頼もしい安定感、ブレーキングが楽しくなって自信もつく効果を身につけよう
そもそもリヤブレーキは、回転している後輪を制動する反作用で、リヤサスが縮む側へ働こうとする。これがベテランには後輪がロックしやすいと誤解されがち。操作を丁寧にすることで、ロックの誘発は確立が激減するのと、リヤブレーキをかけていないことでフロントブレーキをかけたときリヤサスが伸びてしまい、前のめりを助長していたのを抑える効果で、姿勢の安定性と制動力が驚くほど強まるのを実感できる。
ベテランであればなおのこと、後輪がリヤブレーキによって、リーンのきっかけや旋回中の向き変えコントロールなど、あらゆる微調整に役立つことはもっと知っておくべきで、なぜMotoGPではバンクしたままリヤブレーキが使えるサム(親指)ブレーキが愛用されているかを認識しておきたい。
そして、ブレーキングは必ず前後とも同時にかける大前提をお忘れなく!
リヤブレーキをかけるとリヤサスは縮もうとする。これを接地圧が減ってスリップしやすいと思いがちだが、操作次第で車体の姿勢制御やアクションのきっかけなどに利用できるベテランにとってなくてはならない機能となる
MotoGPマシンで多く見られる親指でレバーをプッシュ操作しながらリヤブレーキを使うサムブレーキ。右バンクでペダルが接地して踏めないのをリカバーする
ライダーによってはスクーターと同じに通常のレバーを握ってリヤブレーキ操作する。クラッチと2本のレバーが並ぶ