肘擦りフォームに合わせタンク上面が湾曲するように
いまや肘擦りが常態化してきたMotoGP。ライダーの顔の位置も路面からすぐのところまで低い。上半身を可能なかぎり重心を下げ前輪から車体の旋回力と安定性を高めるためだが、このフォームがやりやすいようマシンの燃料タンク形状に変化が生じている。
’80年代のレプリカ時代からのファンは、レーシーなタンク形状といえば上面がフラットでステアリングヘッド近くまでスクエアなフォルムに憧れた。それが最新では上面が湾曲していて、前方が絞られた形状と大きく変わってきた。
ひとつは肘擦りフォームで上半身を路面近くまで移動できるよう、アウト側の前腕~肘~上腕を邪魔せずホールドしやすいように配慮しているのと、重量バランスで燃料タンクの前方に容量を稼ぎたくないこと、そして補機類の冷却など、配置関係も変化してきたからだ。
因みに最新ホンダCBR1000RR-RもRC213Vのタンク形状、ヤマハYZR-R1MもYZR- M1から受け継ぐフォルムで進化してきた。
最新パニガーレV4 SP2もMotoGPマシンと同じようにタンク上面がフラットではなくなっている
2004年の1098Rはタンク上面がフラットで、ライディングフォームから前腕~肘までがホールドしやすいフォルム
’80~’90年代ライポジのほうが一般公道向き……
ドゥカティ750 F1 パンタとスズキGSX-R750が同じ1985年に大型車のクラスにレプリカの先鞭をつけ、以来スーパースポーツはレーシングマシンのフォルムが前提となった。
その当時の燃料タンク形状は、上面がフラットで前方両縁の角が丸めてあり、前腕~肘までがホールドしやすいフォルムというのが定番。これが10~15年ほど変わらず続いたのも、膝擦りフォームが既に過激な走りの象徴からそこまではやらない流儀も定着したからだろう。
いずれにせよ、ハンドル位置さえレースより高めであれば、このポジションでツーリングするライダーも増え、一般公道でのライディングフォームとして馴染んでもきた。
対して最新の肘擦りフォームは、一般公道で試すのは自殺行為として憚られる。この過激なポジション設定は、サーキット走行でのみお試しが許されるということだ。そこを除けばライポジとしてシートのサイズやハンドル幅など、以前よりツーリング向きといえる余裕もあるはず。
いずれにせよ、この燃料タンクの形状に刻まれた歴史に思いを馳せて頂ければと思う。
916 1994年
750 F1 PANTAH 1985年
クリップオンハンドルとフルカウル+シートカウルを市販車として量産したのは1985年のF1パンタが初。その10年を経ずにドゥカティは916で日本勢を凌ぐスーパースポーツをリードする存在に
GSX-R750 1985年
VFR750R(RC30) 1987年
FZR750R(OW01)1989年
ビッグマシンのレプリカ時代に頂点としてリードした3機種。どれも頼もしいルックスの燃料タンクで、これを抱え込むライディングを夢見た世代には感涙のフォルム