一般的に“トルクス”と呼ばれ、専用の工具で緩めたり締めたりします
バイクの各パーツを固定するボルトは、昔ながらの六角頭のボルトだけでなく、近年はキャップススクリューと呼ばれる、ボルトの頭に六角穴が開いたタイプも多い。……が、ここ数年でさらに新しいタイプのボルトが出現している。
一見するとキャップスクリューに似ているが、よく見ると穴が六個の突起がある星形になっている。とくにBMWをはじめとする欧州車や近年はハーレーダビッドソンに多く使われ始めているが、このボルトは『トルクス(英語ではTORX)』と呼ばれている。
昔からある+や-のネジは、ドライバーで回す際に強く押し付けながら作業しないと、ドライバーの先端が外れてネジの頭をナメてしまうことがある。また従来の六角頭のボルトや六角穴のキャップスクリューも、ネジの頭(または穴)と工具が点で接触する場合が多いが、トルクスのボルトは工具と面接触になるため、工具が外れにくくナメる危険が少なく耐久性も高い。またボルトを回す力(トルク)がネジの中心にかかり、トルクの伝達効率が良くシッカリ締められるのもメリットだ。
このトルクスを回すには、もちろん専用のトルクスレンチが必要になる。サイズが細かく分かれているので、単品で揃えるよりレンチセットを手に入れた方が便利(ホームセンターやバイク用品店で手に入る)。愛車にトルクスが使われているなら、1セット持っていたい。
じつは“トルクス”は商標登録されている
トルクス(TORX)は1967年にアメリカのテキストロン・カムカー社が開発し、アキュメント社が商標登録しているためアキュメント社のライセンスや技術指導を受けた製品でなければ使用できない規格。そのためこのタイプのネジの一般名称はHEXALOBULAR INTERNAL(ヘクサビュラ・インターナル)とされ、または6個の突起や耳たぶを意味するヘックスローブ(ヘクスローブ)とも呼ばれる。とはいえ、この形状の六角星形のネジはトルクスの呼称が一般化しているのが実情だ。
トルクスのL型棒レンチ。そして写真はイジリ止めトルクスネジ(トルクスの穴の中心にピンが付いているタイプ。ドライバーや6角レンチなど、他の工具は差し込めず回せない構造で、イタズラ防止に役立つ)に対応する穴あきのレンチだ。
サイズはT〇〇(例:T25)と表記し、数字が大きいほどネジの頭やレンチが大きくなる。向かい合う2カ所の突起の先端と先端の間の寸法は、たとえばT25の場合は4.43mm(0.173インチ)という様に、表記と実サイズがイコールではないので少々ややこしい
トルクスボルトはサイズがピッタリ合う工具を使うコト。ボルトのサイズによっては、ワンサイズ小さいレンチ(たとえばT27のボルトに対してT25のレンチ)でも“多少ガタがあって緩いかな”という感じで回せなくもないが、ボルトとレンチの両方を傷める危険があるので要注意! 近似サイズのレンチを何本かあてがって、確実にピッタリと合うモノを選んでから使うのが安心だ
L字型タイプのトルクスレンチのセットは1,000円くらいから購入できる。写真はDAYTONAが扱うイジリ止めトルクスレンチ(T10、T15、T20、T25、T27、T30、T40、T45、T50の9本セット)で約2,000円。バイクの外装パーツの固定や小さめのステー等を留めているトルクスボルトなら、このサイズが揃っていればほとんど対応できる
BMWではツアラーやスーパースポーツなど、ジャンルを問わず様々なバイクにトルクスが使用されている