ボルトやナットを回すのは、片口スパナが一般的……と思うなかれ
分解や部品交換が必要な難しい整備はバイクショップに依頼するのが安心だけれど、緩んでいるミラーを締め付けるような作業は自分でやりたい、という方は多いだろう。そしてバイクに限らず、機械を組み上げているボルトやナットを回すのに必要な工具といえば、パッと思い浮かぶのは「片口スパナ」ではないだろうか。もちろん正解だが、実際の作業では「メガネレンチ」を使うのがオススメだ。
片口スパナよりメガネレンチの方が安全!?
片口スパナはその名の通り“口が開いている”。そのため、ミラーをハンドルのホルダー等に留めているナットを回したり、シフトペダルの高さを調整するのにリンクシャフトのロックナットを緩めたりするのに便利だ。また、スパナの柄に対して口が傾いて開いているため(一般的に15度)、狭い場所でも表⇔裏と入れ替えて使えばボルトやナットを回すことができる。
これらのメリットがある反面、片口スパナは構造的に6角のボルトやナットを2点でとらえて、口が開いているがゆえに作業時にボルトやナットから外れる可能性がある。とくにサビや汚れなどで固く締まったボルトを緩める時が危険で、外れた勢いでスパナを握った手を周囲にぶつけてケガをすることも少なくない。それと同時に、ボルトの頭をナメて(傷付けて)しまったりもする。
対するメガネレンチは開口部が無いので、作業時に外れる危険が少ない。しかもボルトやナットを6点でとらえているため、大きな力を均等にかけられるので、硬く締まっていても緩めやすい。
また、片口スパナは柄と口が真っ平なのに対し、メガネレンチの多くは口径部と柄に角度が付いている(オフセットしている)。そのため柄を握りやすくボルト類に対してしっかり奥までレンチの口をかけることができるので、やはり作業時に外れにくい。
そんなメガネレンチのデメリットと言えば、シャフト類の途中にかかるナット(ミラーのナットなど)を回せないコトくらい。
整備は可能な限りメガネレンチを使うのが基本
もうおわかりと思うが“使い分け”というより、ボルトやナットを回すのはメガネレンチが基本。そしてメガネレンチが使えない場所のみ、片口レンチを使おう。ボルトやナット、周囲のパーツを傷めずに、そして作業者の安全を守るためにも、このセオリーを忘れずに! 工具を購入する際も、使用する場所をよく考えて選ぼう。
上が「片口スパナ(10-12)」で、下が「メガネレンチ(10-12)」。どちらもボルトやナットを締めたり緩めたりするのに使う代表的な工具だ
片口スパナ
ミラーを留めているナットなどは片口スパナでないと回せない。メガネレンチと比べ、作業中に外れやすいので、このような場所のみに使うのが得策だ
メガネレンチ
6角ボルトの頭を、6点でシッカリとらえるメガネレンチ。口と柄がオフセットしているので握りやすく、回しやすいのも特徴。ボルトやナットを回すのは可能な限りメガネレンチを使おう