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このバイクに注目
ENERGICA
ESSE ESSE 9
2023model

【電動ENERGICA ESSE ESSE 9 試乗インプレ】ウルトラスムーズな速さと取り組む新鮮な刺激!【このバイクに注目】

Photos:
RIDE HI編集部,ENERGICA

いつかはこれに乗らなきゃいけないのか?
そんな敵対心で見ずに新しい次元の楽しみ方を探ろう!

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前回10月のRIDE HI YouTubeNo.10で試乗した電動ENERGICAのEGO+RSに続き、No.11で同じENERGICAのネイキッドESSE ESSE 9を試乗した。
皆さんがまだあまり耳にしたことがないだろう、電気モーターの刺激的な高周波サウンドや、質量もある安定した走行ぶりなど、No.11のYouTube動画でご確認いただきながら、こちらのWEBでは記事としての試乗報告をお届けするが、その前に電動ビッグスポーツバイクの評価に対するスタンスをお伝えしておく必要がある。

まず世の中の大きな気運として、化石燃料の内燃機関は一刻も早く使用を止め、地球環境を救わなければいけないという、半ばヒステリックな風潮に、将来乗れなくなってしまうガソリンエンジンのスポーツバイクに替わって、これしか選択肢がないと我慢して乗らなければならない電動バイク……といった思いをお持ちのバイクファンが多いのはいうまでもないだろう。

ただゼロカーボンを最優先するのは社会人として異論ないが、株式相場を含む経済動向や政治家たちが姿勢を問われないようウケ狙いで「電動化」のみアピールし続けるのは科学的根拠に乏しく、既に電気化が定着をはじめた都市部でさえ自然環境で生活道具として機能しない未熟さも露呈していて、e-Fuelなど非化石燃料化が促進されれば内燃機関が再浮上する、という前提で読んで頂ければと思う。

つまり何れは乗れなくなってしまうエンジン付きの替わりが果たして電動バイクにできるのか?といった気持ちは皆さんにも傍らへおいて頂き、あくまで新しい手段を使う新しい次元の乗り物として、どんな楽しさがあるのか、そこをお伝えするのが筋だからだ。
たとえるまでもなく、どんなにスムーズなエンジンでも「鼓動」として毎回の爆発で後輪がパルシブに路面を蹴るフィーリングと比較したら元も子もない。
車体への搭載位置で、重心的な役割のクランクシャフトとシリンダーとのレイアウトで、ステアリングヘッドと前輪とのアライメントのハンドリング評価も、大きなバッテリーがフレームが抱えるスペースのほとんどを占める構成がみせる動的なハンドリングへの影響など全く違い、比較できる質のモノは皆無に近い。

そしてそもそも、まだ量産効果もないイタリアはモデナでの少量生産で、税抜きでも400万円を超える価格なのだから、既存のスポーツバイクと比較せず新しいモノ好きなライダーが、スポーツバイクに馴染んだ感覚でどう楽しめるか、そこのvalueをまとめてみた。

違和感はすぐに馴染めて便利さを感じる、
電動のメリットが大きい取り回しやタウンスピード

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スペックとしては420km、実質かなり激しく乗ったとしても、フル充電から200km以上が可能で、スマホのリチウムイオン・バッテリーのように1年も経つとフル充電しても80%→60%と劣化を生じない大容量ポリマー・バッテリーの仕様は、リッタークラスのネイキッドやツーリングバイクと同等かやや重い260kgの車重だ。
となると停車時の取り回しが気になるが、エネルジカは跨がったまま2km/hのパーキングアシストでモーターによってゆっくり前後へ楽々安心の移動ができるという電動のメリットが早くも顔を出す。
シート高が790mmなので、160cmくらいで両足のつま先が着けば、チカラ要らずでバイクの出し入れが可能になる便利さ。

発進はいうまでもなくクラッチがないため、スロットルを捻れば呆気なく走り出す。とはいえ、スクーターなどのオートマ発進のような、スロットル捻って一瞬のタイムラグで後にグワッと強めのトルクが出てくるのと違い、トルクが一定な感じなので慣れるまでは最強のスポーツモードでの発進のほうが感覚的に乗りやすい。

とはいえ走り出してしまえば、せわしくなく加減速しない乗り方にはアーバンの中間的なモードが柔軟性もあってリラックして走れるが、スロットルのON/OFFを繰り返すとエンジンブレーキ(電気なので回生ブレーキ)の設定によるとはいえ、身体が前後に揺すられ落ち着かない。4気筒の低いギヤを連想してもらえば良いと思う。
そこで思いきってスポーツモードにすると、パワフル&トルキーなビッグツインのように、加速で開けた途端ダンッと前に出てくれて、閉めれば4気筒と違うエンブレが遅れて強くなる、そんな感性で却って落ち着いた感じで疲れにくい感じだ。

レインモードについても触れておくと、これも雨が降っていなくても走りはじめに身体が目覚めていない状況に優しいレスポンスなのと、むしろ早いタイミングでスロットルを大きめに開け閉めできることから、意外なほどの馴染みやすさでウォーミングアップに最適。
この全開にしてレスポンスを待つ操り方は、身体へ感覚的な安心感を植え付けてくれる効果が高く、神経質なところが全くないのもラフに扱える楽しさと相俟ってお奨めでもある。

違和感はすぐに馴染めて便利さを感じる、
電動のメリットが大きい取り回しやタウンスピード

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タウンスピード前提での走りから、テスト走行したワインディングでの実力発揮にチャレンジしてみると、まずメリットとして挙げられるのが全体の安定感の大きさ。
フレーム下に収まるバッテリーの質量と重さが、いわゆる加減速のピッチングより上下動する範囲に抑えられているため、かなり路面が荒れていても整然と旋回する安定性をベースに走る。

それとスポーツモードで回生ブレーキを強めにしておくと、減速でブレーキングもあまり使わず進入できるのと、リーンしてからイン側へ寄せていくターンインの領域が、エンジンブレーキの回転が下がると効果が薄まるのと違い、グイグイと後輪の旋回グリップが維持される醍醐味が楽しめる。
加速側のトラクションに、きっかけのグイッと踏ん張る荒々しさがないスムーズなため、後半にグイグイ曲がる感じはあるものの、刺激の強さからいうと、このターンインの強めの回生ブレーキのほうが魅力だった。

ペースを上げていくと、60万円超えのオプション設定されているオーリンズ製フロントフォークとリヤサスを試したくなる。標準のマルゾッキ製フロントフォークとBitubo製リヤサスも充分な仕事をしてくれるのだが、あるエネルギーを越えると、わかりやすくいえばガンガン攻めるほど、この質量と重量に相応しい許容量のサスがあったらと思わせる。
ネイキッドでも大柄で重さもある、従来ならワインディングでスポーティな走りをイメージしないカテゴリーなのに、この安定感はハートに火をつけるアドレナリンを呼び覚ます質のもの。
言い換えれば、そんなにガンガンいける気になるほど、旋回の安定感とターンインの鋭さに新たな強みと思えるポテンシャルを感じるからだ。

MotoEで4シーズンの実績を積んだ圧倒的な優位さで、
まずは安心できる信頼性と知るほどに便利な使い勝手が魅力!

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前回に試乗したEGO+RSよりパワーを抑えめにした仕様とはいえ、台形に立ち上がったトルクが一定となる電気モーターらしい新しい力強さは、このESSE ESSE 9でも存分に感じることができる。
パフォーマンスとして、慣れるほどにスポーツ性の高さに酔える魅力は、新しいEVという選択肢を選んだ特別感に満ちている。

普通充電と急速(チャデモ)充電の2輪では唯一ふたつのソケットが装備されているメリットが大きいのは容易に想像できる。
家庭(エアコン用200V)での充電はバッテリー残量によるものの4~7時間、街中のパーキングやクルマのディーラーに高速道路のサービスエリアで見かける急速(チャデモ)充電だと、15~30分で済むという早ワザ。
またリチウムポリマーのバッテリーが、1200回のフル充電(48万キロ走破)でも目立って劣化がみられないという実績(保証は3年または50,000km)など、ご存じMotoEで4シーズン闘ったキャリアは他にない強みだ。

生産地がイタリアであることから、紛争による海上輸送の遅延から当初に予定されていたデリバリーがまだはじまっていないが、既に12月に公表された取扱いショップも出揃ってきたので、エネルジカのホームページでオプションやアクセサリーなどチェックしながら思いを馳せる時間はタップリとある。

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トレリスフレームに収まるバッテリーはかなりのボリュームを占める

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モーターはドライブスプロケット上に縦長の構成でマウントされている

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普通充電と急速(チャデモ)充電の2輪では唯一ふたつのソケットが装備される

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SPEC

Specifications
ENERGICA ESSE ESSE9
最高出力
180kW(109PS相当)
最大トルク
180Nm(207Nm +RS)
フレーム
スチールトレリス
車両重量
260kg
サスペンション
F=テレスコピック43φ倒立
R=スイングアーム+モノショック
ブレーキ
F=φ330mmダブル R=φ240mm
タイヤサイズ
F=120/70R17 R=180/55R17
全長/全幅/全高
2,140/870/1,152mm
軸間距離
1,465mm
シート高
790mm

ENERGICA ESSE ESSE 9 の動画(00:57:50から)とモーターサウンドも聞けるYouTube「RIDE HI No.11」はこちらから!