CB900Fのアッパースポーツに命名したSUPER BOL D'OR！
ホンダにはいまも使われているスーパーボルドールという車名がある。
その由来は南フランス地中海沿岸のマルセイユに近い、ポールリカール・サーキットで開催される24時間耐久レース名からきている。
24時間耐久レースというと、フランス中西部のブガッティ・サーキットで開催されるル・マン24時間レースが有名だが、フランスでは春のル・マンと秋のボルドールと年に2回が開催されている。
1970年代後半、ホンダはクルマの排気ガス規制のマスキー法をクリアするため、全エンジニアを投じていたので、その間に２輪の開発はかなりペースダウン。
とくにフラッグシップのビッグバイクでは、1969年にCB750フォアで世界をリードしたものの、後続が開発できずマイナーチェンジで延命する苦しい展開。
それをバックアップというかイメージ戦略で活動していたのがRCB1000というCB750をDOHC化したワークスマシンだった。
ヨーロッパ各国を転戦する耐久選手権や英国のT.T,レースで、同じ4気筒を引っ提げてきたカワサキやスズキだけを目立たせまいと、片っ端から優勝する勢いを見せていたのだ。
その当時のCB750FIIを見れば、Z1やGS750にかなりヒケをとるのは誰の目にも明らか。しかしホンダ・ファンはRCBの活躍にトップブランドの誇りを感じ、意気を揚げて他ブランドに乗らず待ち続けていた。
そして登場したCB750F/900F。RCBのDOHC16バルブそのままのエンジンフォルムによる爆発的なヒットで起死回生を果たしたが、ホンダにとってRCBが繋いだ4年間の意義はとてつもなく大きかった。
その由来の偉大さに依然としてSUPER BOL D'ORを名乗るCB1300！
そんなホンダがライバルの1,000cc化に対抗してCB900FをスープアップしたCB1100Fをリリース。
そこにホンダ・ファンならその意味が直感的に伝わる、スーパーボルドールの車名を与えたのだ。
スペックはCB900Fが64.5×69mmの901.8cc（750は62×62mmの748cc）に対し、70×69mmの1,062ccで110PS/8,500rpm 9.9kgm/7,500rpm。
果たしてこの響きの良いネーミングが好評で、ヨーロッパでは権威づけとして有効だったが、アメリカは例によって24時間耐久レースの情報に薄く、CB900Fでもスポーツ性のアピールにRCBを登場させていた。
ほどなくCB900Fにカウルを装着したCB900F2 SUPER BOL D'ORをリリース、日本ではまずカウルのないCB750Fのカラーリングや装備類をブラッシュアップしたモデルを同じ1982年にリリース、続いてカウルつきのINTEGRAがデビュー、国内モデルにはまだスーパーボルドールの車名は使われてなかった。
その後、1985年にフルカウルのCBX750Fボルドールが限定発売されたが、スーパーボルドールのネーミングのほうはCB400スーパーフォア、そしてCB1300で冠したモデルで受け継がれたのはご存じの通り。
ホンダファンを繋ぎ止め、ファンが応えてリーダーの尊厳を守った象徴であるSUPER BOL D'OR……消えることのない伝説の車名として輝き続けている。
