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このバイクに注目
HONDA
CBR400RR
1990model

CBR400RR(NC29)はV4と直4が合体したファイナルウェポン!【このバイクに注目】

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HONDA

剛性としなやかさを必要な箇所へ配置、LCGフレームは全く新しい車体性能を追求!

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1990年にリリースされたCBR400RR(形式名NC29)は、車名も同じひとつ前のNC23に対し特異なフレームやエアインテークが与えられた、それまでのスッキリしたスタイリッシュなCBRではなくなった。
なぜこのスタイル?そしてどこへ向かおうとしていたのか?
実は1991年から400ccクラスのレーサーレプリカ開発目標だったTT-F3が消滅することになり、レース出場のポテンシャル優先の必然性がなくなり、一般公道の特性重視のスーパースポーツ開発がスタートできるようになったのがひとつ。
そうなるとレースでパフォーマンス頂点をV4に占められていた直4には、大きなチャンスが巡ってきたことになる。

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そんなタイミングだからこそと、新しいCBR400RRの開発陣は迷うことなく次世代の究極ハンドリング追求に焦点を絞った。
シンプルで設計もしやすく、経験を積んだことでバランスに優れたハンドリングと、CBRは定評があった。
しかし、もっとライダーの感性に馴染みやすい、ナチュラルな運動性で吸い込まれていくようなリーンが可能で、リスクを感じさせない剛性と完璧なバランス。。。
レースが前提にあると、戦闘力を優先するがために、感覚的な満足度へスポットが浴びることは稀だ。
さらなる理想を求め、新しい進化への一歩が踏み出せる好機!
そんな意欲に満ちたコンセプトがNC29には込められていた。

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まず根底から模索しようと、エンジンの重心位置と車体のロール運動との位置関係から洗い直した。
その結果、ステアリングヘッドとスイングアームピボットを、ツインチューブで結ぶのではなくエンジンを介して繋ぐという思いきった手法を採り入れている。
ストレートなツインチューブは引き抜き材で、部分的に強度を強めたり弱めたりはしにくい。
開発されたL.C.G.(Low Center of Gravity)フレームとは低重心化を意図として、エンジンはシリンダー角度からすべてリーンのアングルでハンドリングがブレない、最も適宜な場所とカタチとして、ステアリングヘッドと一体化するレベルにガッチリ固定……そのため、シリンダーをクランクケース上面に一体化するホンダV4と同じ手法でエンジンを新設計、ココからピボットまでのフレーム後半は、裏側を抜きまくったしなやかさ重視の構成とする、これまでにないチャレンジと取り組んでいる。
そしてこの発想は、何とV4開発チーム。遂に直4とV4のエンジニアが共同で取り組む最強の開発チームだったのだ!

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なるほど、だからNC29は一見250ccと見間違うスリムさとコンパクトさなのだ。
ツインチューブがのたくった曲がり方で、エアインテークの取り回しに絡んでいるので、まさかそのため?と首をかしげたくなるが、実はその極端なガッチリ強固なフロント部分と、頼りないほど薄っぺらい後半との組み合わせのためだった。

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スイングアームも排気系の干渉を避けた3ピース・ガルアームで、外からは表面積が大きく見えているが、裏を見ると中空アルミ製としなやか且つ超軽量!
フレーム幅もフロント部分が超ワイドで後ろのスリムさとの極端な違いに唖然とする。

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果たして走り出すと、NC29は独特なフロント回りを感じさせる。重心位置が単に低いのではなく、リーンの動きで中心点がズレていかないため、呆気ないほどスタッとリーンしていくからだ。
それは従来のCBRが、フロントまわりを粘っこく感じさせ、それは良いバランスと安心感のややアンダー気味なハンドリングとして、信頼のCBRを構築していた。
が、NewCBRはひとまわり小さなマシンのように、しなるとか粘るといった感覚はなく、とても硬質な感じでスッと旋回へ移行する。
反対にリヤまわりは、路面へのトラクションや旋回時のフィードバックにやんわりとラグを感じさせるバランスで、これが案外と自信に繋がりグイグイと攻めさせる、そんな余裕を感じさせて攻める面白さにハマりやすい。

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このように、狙い通りにレースからのフィードバックなど、一連のレプリカ開発で得たハンドリングのノウハウが活かされ、CBR400RR(NC29)の扱いやすくナチュラルなフィーリングはホンダ史上でも優れたバランスとして名を残すレベルの高さだ。
いまココまでハンドリングにこだわるスポーツバイクは残念ながら極く僅かだ。速く走るだけでなく、乗り手の感性との結びつきまで開発のテーマとしていた時代……いつかまた、そんな高みを語れるスポーツバイクが登場してくれるのを切に期待したい!