排気量を意識させない車格を250cc4気筒で狙う!
1989年にCB-1(400cc)からスタートしたホンダのスポーツネイキッド開発。
ビッグバイクでは1992年にCB1000 SUPER FOUR(BIG-1)で新たな重量級概念を構築、そのデザインコンセプトから同年、ご存じ名車CB400 SUPER FOURがデビュー、実に30年も生産が続いたモデルだった。
そうした400cc以上のスポーツネイキッドのコンセプトとは別に、ホンダには250ccにVツインのVT250F系と、4気筒カムギヤトレインのCBR250FOURやCBR250RをベースとしたJADEを1991年に投入していた。
JADEは4気筒カムギアトレインながら、SUPER FOUR系のようなスーパースポーツ・ネイキッドを目指すのではなく、250ccユーザーの実態に合わせた「自然体スポーツ」をコンセプトとしていた。
そして1996年、JADEが目指していた排気量概念を越えたスポーツバイクを、さらに一歩具体化したNewモデルとして投入したのだ。 それがHORNET(スズメバチ、群れをなして襲いかかる恐怖の攻撃的サウンドも意味する)と命名された新シリーズだった。
思い切ったフレーム設計と
250cc4気筒にトルキー特性を与える
実は最大の特徴が750cc以上、リッターバイクが装着するロープロワイドのラジアルタイヤと同サイズを装着したことだった。
フロント130/70ZR16、リヤ180/55ZR17。もちろん250ccでこのサイズは前例がない。
250ccがビッグバイクより下のクラスで、さらに400ccよりも下回るという、排気量がエライ順に並んでいるような概念を、まずタイヤサイズから打ち破ろうというのだ。
そして走りも250cc4気筒が思われがちな、ピークの高回転域以外で非力なイメージを払拭する意欲も具体的なカタチとなっていった。
ひとつはモノバックボーン・フレームという、スクエア断面の骨格を1本だけに絞った車体設計としたのだ。
これによる軽量化で乾燥重量149kgと驚異的なスペックとなった。
またピボット部分を一体化せずアルミプレートと分離したことで、剛性バランスの自由度や軽量化も両得する新しい次元のシャシー構成としている。
エンジンも吸気口径を思い切って縮めたり、排気系の取り回しに排気干渉の位置で工夫を凝らすなど、高出力化ではなくレスポンスの力強さとトルキーなフィーリング最優先の設定に徹底していたのだ。
海外では600と900のHornetが人気に……
果たしてCB400 SUPER FOURとは異なるユーザー層に受け容れられ、Hornetは人気車種となった。
ひと目でホンダとわかる造形など、他に似たところがないデザインに完成度の高さを感じさせるのは流石というほかない。
デビューの1996年から毎年マイナーチェンジが重ねられ、カラーリングも様々なグラフィックが加えられていた。
中でも燃料タンクのHornetロゴが、2003年からHONDAウイングに変更されたのが外観では大きな変化で、基本的な構成に変更はないまま10年以上も生産が継続されていたのだ。
またビッグバイクが主流となり過ぎていた西欧マーケットへ向け、このHornetの車体へCBR600Fのエンジンを搭載したHornet600が2000年、そしてCBR900RRのエンジンを搭載したHornet900も2001年から投入され、汎用性の高い機種として根強い人気を得ることになった。