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このバイクに注目
KAWASAKI
GPX750R
1986~1987model

GPX750Rの750cc専用設計ならではの扱いやすくコーナーを楽しめる醍醐味!【このバイクに注目】

Photos:
KAWASAKI

900や1000と共有しない750cc専用設計でピュアスポーツを狙う!

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1986年、カワサキはスーパースポーツの車名に、それまで定番のGPZを使わない「GPX750R」をリリースした。
GPXの新しいカテゴリーをスタートしたのは、スポーツバイクの進化がレーシーな方向へ偏り過ぎ、堅実なツーリングや唯々走りを楽しみたいファンには、過剰に大きく重い、パワーも手に負えないなどすべてにtoo mutch、そんなヨーロッパの600ccクラスからビッグバイクへステップアップしたいニーズを反映したからだ。
そこで750cc専用にエンジンから車体まですべてを新たに開発、ジャストサイズのピュアスポーツを目標に取り組んだ意欲作となった。

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スリムでコンパクトを最優先して開発したDOHC16バルブ4気筒は、エンジンの幅が420mmでNinja系より31mm狭く、シリンダーピッチ(間隔)は両外側の1番と4番との間で280mmと当時の750ccで最小、キャブレターもこれに準じてピッチが狭く、GPZ400Rより僅か2mm広いだけというコンパクトさだ。
ただシリンダーの上、燃焼室から動弁系を収めるシリンダーヘッドだけは高くそびえたカタチをしている。
これはバルブの挟み角を30°と立てて、燃焼室をフラットでコンパクトに設計、ボア径も68mm(ストロークは51.5mm)と小さくした燃焼効率優先の設定のため。
気筒あたり4バルブのカム駆動は、超コンパクトなロッカーを介しそれぞれにカムがダイレクトに押す、レーシングエンジン並みのメカニズムで14,500rpmまで回せる(レッドゾーンは11,000rpmで点火カットも12,200rpm)メカニズムだ。
因みに748ccで輸出用は106PSだが、国内仕様は自主規制値の77PS/9,000rpmで7.0kgm/6,500rpmとなっている。

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エンジンはスリム化を狙い、ACG(発電機)はシリンダー背面に設置しているが、この駆動はギヤではなく何とVベルト。
2輪スポーツバイクではそれまで例がなかったが、このおかげでギヤ騒音が無くなっただけでなく、レース用にチューンした場合に減速比を簡単に変えられるメリットもある。
因みに乾燥重量195kgで、0-400mは11.2secと俊足。
ホイールベースも1,460mmで適度にクイック過ぎず安心感のあるスポーツライディングが可能だ。
この走りを支えるフレームは、メインがスチールパイプのダブルクレードル。
スポーツライディングするならアルミとイメージしがちだが、カワサキは走るシチュエーションを考えると、運動性と剛性とのバランスがこのクラスだとアルミ素材で必要な剛性を得ようとすると却って重く大きくなってしまうため、敢えてパイプフレームを採用、僅か11.5kgに収めている。
ただサブフレームはアルミ製で1.5kgしかない。黒くペイントされているのでそれとわかりにくいが、剛性を必要としないのと重心から遠い位置は軽量化が優れたハンドリングに功を奏することからアルミ角パイプにする懲りようだ。

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また足回りでもフロントフォークのアンチノーズダイブ機構に電気式応答型を採用、それまでのフォークが沈んだ動きで圧縮側減衰力を強めるのに対し、ブレーキレバーに触れたタイミングから圧縮側減衰力を強めておくので、効果としてはより姿勢変化が起きにくい設定だ。
こうして750cc専用設計を貫いた仕様とあって、ベテランが多い750cc乗りには当然の高い評価を得ていた。
さらにカウル内を通過する冷却風の排出を意識したデザインなど、ユーザー側に立ったキメ細やかな配慮が多く見うけられるのもこのモデルの良さでもある。
とはいえ国内の750cc需要は限られる。予想していたことだが、それほど販売台数も稼げず、ベストハンドリングと絶賛されながら短命に終わってしまった。

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実は世界的にもリッターバイクが900ccなど、ややスケールダウンして軽量コンパクト化を進めたり、600ccクラスも650~700ccへとサイズアップする動きもあり、全体にオーバーラップした部分が拡がって750cc専用設計という潔さが薄れる傾向に埋没してしまった。
しかし、いかにも真面目に750cc専用設計に取り組み、その妥協しない姿勢が生み出した絶妙なハンドリングは忘れられない。
目立たないが名車の1台に違いない。