1,000ドルを謳い文句に全米で大ヒット!

カワサキは1972年のZ1以来、Z650RSにZ750TWINと念願だったビッグバイクの領域で世界のリーダーへと君臨することに成功。
またそのいっぽうで、ホンダCB350のようにニーズに多い中型クラスにもラインナップを揃えるよう全米のディーラーから求められていた。

これに応えて1973年、カワサキはZ400RSをリリース。しかも販売価格が350ccクラスより排気量が大きいのに、1,000USドルを下回るという思いきった作戦に出たのだ。
果たしてオイルショックが重なったこともあり、半端なクルマに乗るくらいならスポーツバイクが新車で買えるというお得感も手伝って爆発的にヒット、カワサキを先行日本メーカーの生産台数に追いつかせるという功労バイクとなった。



エンジンは空冷SOHCで64mm×62mmの並列2気筒398cc。スポーティな高回転域で刺激のある180°クランクではなく、低回転から扱いやすい360°クランクで2軸バランサーを駆動するカワサキにしては無難なキャラクターに収めていた。
パワーは35PS/8,000rpmで3.1kgm/7,500rpmのトルクと、快適でおとなしいエンジン特性。
しかしそれが功を奏し、誰にでも親しみやすく日常的に乗り回せると評判に。
実はその後のZ1000シリーズなどを成功へと導いたのも、このZ400RSの大ヒットがすべての基盤を支えていたからだ。

Z400は国内市場にも投入され相応に売れてはいたが、Z1のフラッグシップ的な位置づけイメージが強く、SOHCツインに飛びつくほどの人気は得られなかった。
対して全米はもとより、ヨーロッパでも好調なカワサキのイメージを追い風に、マーケットシェアを順調に拡げていくことに成功していった。

そのZ400も、デビュー時の前後ドラムブレーキからディスク化されるなどイヤーモデルで改良を加えていたが、1978年に車名もBを加えて初めてのモデルチェンジ。
それまでのZ1系の流れを汲むグラフィックから、中型を意識させるシンプルなカラーとフォルムを纏うようになった。

いま見てもバランスの良いフォルムとバイク好きが馴染みやすいグラフィックと共に、それこそ30PSを下回ってもこういったミドルクラスのスポーツバイクがあったらと思うファンは多いのではないだろうか。