MVアグスタ最大の特徴は何といってもその珠玉のハンドリング。
1960年代の世界GPで、50ccから500ccクラスまで全制覇を目指す日本メーカーに、最後まで唯一ライダータイトルを明け渡さなかったイタリアの誇り高きブランドだったMVアグスタ。
そのMVが2輪事業撤退後に復活させたのは、世界タイトル争い時代に憧れていたエンスージャストで、伝説の3気筒エンジンと他を圧倒した優れたハンドリングを現代に甦らせようとあらゆる手を尽くし、「走る宝石」に仕上げた超プロフェッショナル集団だ。
F3 RR OTTANTESIMO
モーターサイクルは車体を傾けて旋回することでコーナーを曲がっていく。
このコーナリングで操作するライダーにとって、車体が曲がっていく動きに前輪が遅れずに追従旋回できるか否かが、いかに速く駆け抜けられるかの鍵を握っている。
そのために、直進の復元性と旋回へ舵角で応える追従性との設定が重要で、それはキャスター角やトレール量のアライメントだけに支配されていない。
エンジンの車体に対する重心位置、その慣性力の中心となるクランクシャフトの高さや前輪との距離、さらにそれらを支えるフレームとの剛性バランスから重量や質量の配置設定も大きく影響する。
この設定をパーフェクトにするのは至難のワザ。市販車にはバッテリーや発電系など様々な補機類が必要で、そのスペース確保にはじまり重量や質量バランスがコーナリングのためだけに設計するレーシングマシンとの違いになっている。
しかしMVアグスタは、とくにF3系3気筒ではこれがレーシングマシンと変わらない、ほぼピュアな要素で組み上げられている希有な存在だ。
それはエンジンの構成が、車体がリーンで傾く動きを阻害しないカタチに配列するという異例の設計で、クラッチがシリンダー真後ろに位置し、幅も2気筒並みのスリムなフォルムという、どこをとってもレーシングマシンそのもの。
だからキャリアの長いライダーがF3を駆ると「エンジンがいない!」といわせるどこかに重さの中心を感じさせない、まさにGPマシンのハンドリングなのだ。
コーナー立ち上がりに旋回加速で最大グリップを後輪に与える設定!
そして超コンパクトな3気筒エンジンのクランクは通常のバイクとは逆回転。
これは急加速のウイリーを抑えたり、エンジンブレーキ効果が働くときスイングアームのピボット軸を下へ抑える反作用のメリットと、そもそもバランサーシャフトを含めエンジン内部で応力を釣り合わせクランクケースの軽量化にも繋がる合理性の塊りでもある。
またコーナーからの脱出加速で、グイグイと後輪がグリップを強めながら旋回するトラクションの高いポテンシャルもMVアグスタの武器。
エンジンからの駆動が、後輪を路面に押し付けるアンチスクワット設定が大きめなのも、MVならではの曲がれるマシンを目指した特徴といえる。
とはいえ、スーパーバイクと同時開発された、レプリカのスーパースポーツも他に存在する。
しかしそうしたトップエンドのマシンと乗り比べると、ハンドリングというより運動性そのものがまるで異なるのに気がつくはずだ。
瞬く間にライダーと一体化するマシン……それはキャリアに関係なく、乗ればわかる違いとして人々を説得してきた。
そんな独自の感性を依然として継承する最新のMVアグスタのマシンたち。
先日のEICMAでMVアグスタ80周年を記念するモデルや、F3ではCOMPETIZIONEとさらにハイエンドを狙ったスペシャルマシンも発表になった。
ただご覧のように基本的な要素はそのままを継承、いかに完璧なつくりであるかを物語っている。
こうした他と違う価値を皆さんに知ってもらおうと、このブランドに資本参画したKTMグループが、RIDE HI主催のBIKE GATHERINGにエントリーされた方々限定で、サーキット試乗(先導車つき)できる企画を今シーズン毎回実施してきた。
広々としたコースでリラックスして試乗できるので、その呆気ないほど軽快で素直なハンドリングをすぐ感じることができる。
サーキット経験が浅くても、安心して参加できるRIDE HIバイギャザで、サーキット走行を楽しみながら、名車MVアグスタにも試乗できるこのチャンスにぜひ!
F3 RR COMPETIZIONE