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このバイクに注目
SUZUKI
GSX-S1000

【SUZUKI GSX-S1000】「走る・曲がる・止まる」を追求し、ライダーのことを考え抜いたクラフトマンシップの真髄!

Photos:
長谷川 徹

カテゴリーに関係なくバイクの基本を追求し、一貫してライダーのことを考えたもの作りを続けるスズキ。2015年以来のフルモデルチェンジを果たした新型GSX-S1000は、精悍で鋭いスタイリングとは裏腹に、バイクの基本性能を磨き上げたスズキらしい仕上がりになっていた!

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見た目はアグレッシブになったが、その素性は驚くほど寛容。どんなシーンでもスズキらしさを感じられる仕上がりが嬉しい

新しいGSX-S1000は、全ての操作が滑らかだ。振動の少ないエンジンや、アップ&ダウンの良好なシフトタッチ、しなやかなサスペンションなど、尖った部分がどこにもない

ストリートファイターというカテゴリーからは、スーパースポーツからカウルを取り払ったアグレッシブなマシン、という印象を抱かせるが、ニューGSX-S1000は違う。電子制御が多数搭載され、点火や燃調も洗練されている。特に電子制御スロットルの味付けは印象的で、スロットルの開け始めから全開までに不快な振動やガサツさが一切ない。そこには、スズキのエンジニアが一貫してきたこだわりと愛情が感じられる。

選択できるドライブモードは「A」「B」「C」の3種類。「C」は穏やかで、市街地ではスロットル操作に対して車体の重さを感じる反面、雨の日や、冬の寒い時期にタイヤが冷えている場面で活躍しそうだ。対して「A」はレスポンスが良く、予想以上に加速する印象。すべて試した結果、もっともリニアな特性の「B」を選択することにした。

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New GSX-S1000の特徴は直線基調のデザイン。小さなウイングレットは、MotoGPからのフィードバック。部品点数を省略し、軽量化にも貢献する縦3灯に見えるヘッドライトも斬新だ

懐の深いエンジン特性が、ライダーを安心して楽しませてくれる

スーパースポーツモデルのGSX-R1000がベースの高回転型ユニットを搭載したエンジンであるにもかかわらず、市街地でもとことん従順なトルク性能を実現。クイックシフトも気持ちよく機能してくれるため、クラッチレバーの操作は停止時か左折の小回りの時にしか使わない。低速域でもこれほどスムーズなシフターは珍しい。

ワインディングを走り出すと、そのポジションの良さも顕著になる。先代のGSX-S1000からシート高は変わらないものの、自然といい場所に座れる印象。左右のグリップ幅を23mm広げたハンドルが手を伸ばしたところにくるため、前後サスペンションの動きをより感じやすいのだ。そのため、大きなアクションをしなくとも思ったラインの内側を旋回していき、これがタイトな下りヘアピンや先の見えないブラインドカーブでは心強いフィーリングとなる。

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23mm幅を広げたハンドルにより、マシンとのフィット感が大幅に向上。手の内に収まるコントロール性がより高まっている

フレキシブルなエンジンはコーナリングでも頼もしく、3、4、5速をメインに使って、低回転域からスロットルを大きく開けると車体はきちんとレスポンスしてくれる。スロットルワークで車体のピッチングモーションを作れるため、リズミカルにコーナーを駆け抜けられるのが気持ちいい。

試しにバンク中にギヤチェンジをしても車体の挙動は穏やかで、特にシフトダウン時のブリッピングは見事。このクイックシフトは、市街地などではフィーリングが軽く、スポーツ走行時にはレスポンスを重視した素早いギヤチェンジを可能にしてくれるため、場面ごとに最適な回転を手に入れることができ、一度体験したら手放せなくなってしまうほどだ。

トラクションコントロールは5段階用意されており、この日は「4」で走行。普通に走行している分には介入はなく、路面の荒れた場所でわざとスロットルを大きく開けるとメーター内のランプが点滅した。「1」「2」はスポーツ走行、「3」「4」は市街地やツーリング、「5」はウエットを推奨しているが、こちらはドライブモードと組み合わせながら好みを探っていきたい。

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エンジンは歴代でも傑作と名高いGSX-R1000 K5をベースにブラッシュアップ。カムシャフトのプロフィールを最適化しつつ、電子制御で緻密に制御。前モデルから2psアップを実現した

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メーターは、キーをオンにすると専用のオープニング画面が流れる。制御は直感的に触れる分かりやすさ

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メーターカバーやフレームカバーにフォージドカーボンをイメージしたグラフィックを配置

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フロントフォークはアジャスターを装備。キャリパーはブレンボ製

価格と機能の両面でライダーのニーズに応えてくれる

また、スペックを見て思わず嬉しくなったのは、燃料タンクの容量が19Lも確保されているところ。ライバルと比較しても容量は多く、航続距離に直結する数字だ。

価格は、最新の電子制御をふんだんに搭載したリッタークラスのネイキッドとしては破格の143万円を実現。多くのライダーが最新鋭の機能に触れやすく、中排気量からのステップアップとしても選択肢に入る価格だ。

市街地、高速道路、ワインディングを走って感じるのは、常に難しさを感じさせないこと。セパハンは疲れたけどまだまだ元気にスポーツライディングをしたい人はもちろん、最新鋭の制御機能を快適方向に使いたいライダーにもマッチするはず。どちらのニーズにも期待以上に応えてくれるのが、ニューGSX-S1000だ。

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一時のトレンドに流されることなく、バイクの基本性能をいかに高いレベルで向上させられるかをこだわり抜いてきたスズキのエンジニアたち。そんな明確なコンセプトがあるからこそ、スズキのバイクはいつの時代も多くのライダーに受け入れられてきた。パフォーマンスを追求するだけでなく、誰もが安心して楽しめるスポーツバイクを作るという真摯な姿勢が、このGSX-S1000にも強く表れている

SPEC

Specifications
SUZUKI GSX-S1000
エンジン
水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量
998cc
ボア×ストローク
73.4×59mm
圧縮比
12.2対1
最高出力
110kW(150ps)/11,000rpm
最大トルク
105Nm(10.7kgf・m)/9,250rpm
変速機
6速
フレーム
アルミツインスパー
車両重量
214kg
キャスター/トレール
25°/100mm
サスペンション
F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアーム(リンク式)+モノショック
ブレーキ
F=φ310mmダブル R=シングル
タイヤサイズ
F=120/70ZR17 R=190/50ZR17
全長/全幅/全高
2,115/810/1,080mm
軸間距離
1,460mm
シート高
810mm
燃料タンク容量
19L
価格
143万円
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