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このバイクに注目
YAMAHA
FZ400R
1984model

ヤマハFZ400Rはスチール角断面フレームにハーフカウルが後のアルミデルタBOXフレームにフルカウルより売れていた!【このバイクに注目】

ヤマハが400のレプリカ第1弾でトップセラーに!

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1960年代から、ヤマハといえば世界GPロードレースで活躍するメーカーとして名を馳せていた。
しかし4ストの1980年にリリースしたXJ400は、ツーリングユースを前提とした高い次元の総合的な乗りやすさを重視。
過度に刺激的な性能を追い求めるスーパースポーツには否定的だった。
しかし1983年、時代の流れでXJ400を水冷化したXJ400ZSを投入したとき、あまりの関心の低さに、遂にカウルのついたレーシーなレプリカスタイルの開発を決断したのだ。

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既に国内F3レース(400ccクラス)ではワークスマシンを走らせていたこともあって、このノウハウをベースにXJ400ZSの水冷エンジンを搭載した初のレプリカフォルムのマシン開発を急ピッチで進めることになった。
1984年4月にデビューしたFZ400Rは、背面ジェネレーター搭載のナロウなXJ400ZSエンジンをベースに、圧縮比やバルブ径の拡大に吸気系に細いバイパスで効率をアップするYICSを採用するなど、55→59PS/12,000rpmへパワーアップ。
フレームはスチールの角断面パイプ構成でライディングポジションのスリム化に沿ってレイアウト、さらにロングタンクにシートカウル、そしてデザインを決定づけた2灯ヘッドライトの大柄なハーフカウルを纏っていた。

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ヤマハの商品企画は、レーサーレプリカでもフルカウルのレーサーまんまのフォルムではなく、ロードゴーイング・レーサー、いわゆるカスタム化したようなハーフカウルを層着する仕様としたのだ。
車重はXJ400ZSより15kgも軽量な165kg(乾燥)、前輪16インチは流行りの小径化に倣ったが、軽快なだけでなく路面追従性を重視したバリアブルダンパー内蔵のフロントフォークを奢り、後輪も18インチと標準的ながらバネレートが高荷重対応しやすいプログレッシブ・レートのリンクサスと、サーキットのみならずワインディングでも縦横無尽に走れる幅広いポテンシャルを追い求めて開発されていた。

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トップスピード202km/h、0-400mを12.4secのパフォーマンスと、1,385mmの250cc並みにショートなホイールベースは、それまでのヤマハ流評価だと過激過ぎてツーリングで一般ライダーが楽しめないとされた範疇にあった。
そこでこの時点でのヤマハの覚悟は、このスペックでキャリアが浅くても警戒心を持たずに親しめるハンドリングを何としても目指すこと。
前輪を流行りの小径16インチとしても、フロントフォークの沈み方を大型バイク並みに過渡特性を穏やかに設定することで違和感をなくし、リヤサスもヤマハにしては硬めの設定でトラクションの反応をわかりやすくしてライダーがスロットルを開けやすい特性へチューンする試行錯誤を繰り返した。
その結果、ユーザーからはレーシーな外観でもフレンドリーな乗り味との評価が得られ、丸目2灯の耐久マシンをイメージさせるフィルム、そしてハーフカウルが馴染みやすいフォルムであることも手伝って、FZ400Rはデビューから売れまくった。

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ヤマハ初のレーシーなFZ400Rは、これまで400ccクラスでは後塵を浴びていた販売台数でもトップとなる大成功。
車体色も翌年から赤がバリエーションとして加わり、1986年には世界GPのフランス・ヤマハでスポンサー色だったゴロワーズ(煙草)カラーのブルー系ツートンも用意された。
さらに2年目には、見事にスタイリッシュなまとまりを見せるアンダーカウルを装着したフルカウルモデルをリリース、オリジナルのグラフィックに加え粋なブラックにゴールド/白のピンストライプ仕様も揃え、圧倒的な存在感をアピールしていた。
しかし、依然として人気はハーフカウルのモデルに集中し、ツーリングのしやすさなどヤマハ本来の強みも評価され多くのファンを育むバイクとなった。
ご存じのように、レプリカブームのエスカレートへ対応して、ヤマハは次のFZR400からアルミのデルタBOXフレームを採用、カウルもフルカウルが標準となりレーシーさを増していくのだが、何と販売成績でスチール角断面フレームとハーフカウルのFZ400Rを追い抜くことができずじまい。
ツーリングには不向きなレプリカより、どんな用途にも使えるFZ400Rくらいのバイクがユーザーには好都合というのが大きかったに違いない。