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油圧式とワイヤー式クラッチ……何が違うのですか?【教えてネモケン034】

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A.それぞれメリット、デメリットがあります

クラッチの操作に油圧式とワイヤー式があることを知りました。
油圧式のほうが高価なバイクに使われている気がしていましたが、
スーパースポーツやスポーツネイキッドにも使われています。
この2種類は、そもそも何が違ってどんなメリットや
デメリットがあるのでしょうか?

クラッチ操作に油圧式を採用したのは、いわゆるメンテナンスフリーを目指したのがそもそもの始まりでした。バイクのクラッチは、ダイアフラムスプリングを使った単板式のクルマと違って、多板式というクラッチプレートとフリクションプレートとが交互に組まれた構造が一般的です。

これはエンジンをコンパクトにするため、もっとも多い横置きクランクシャフトに対し、トランスミッションを並行に置く構成では、クラッチの径を大きくできないからです。またバイクのエンジンにはレスポンスに俊敏さが求められますが、大きな径だと回転したときの慣性力で速やかな回転上昇が妨げられてしまことになります。

要するに強大なパワートルクほど、クラッチは滑らずに駆動力を伝えるため相応の面積を必要とするのですが、この径が大きくなってしまうのを何枚にも分散して小径化しているわけです。

ところがこの多板式、ちょっとした摩耗でも6〜8枚もあるために、すべてが合わさるとクラッチの切れる位置や半クラッチの位置がすぐに変わりやすいという弱点があります。また強烈に半クラッチを使った後など、熱膨張で同じようにクラッチ操作のレバー位置が変化してしまいます。

これを昔からあるワイヤー式から油圧式にすると、限度はあるのですが構造上ほとんどレバー操作の位置が変わらずに済むというメリットがあるのです。

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バイクのクラッチは湿式多板式が一般的

エンジンにコンパクトさが求められるバイクでは、クルマのようにクラッチの径を大きくできない。そのためにクラッチプレートとフリクションプレートを交互に重ね合わせることで容量を稼いでいる。この構造から生じる問題点を解消することを目的に油圧式とワイヤー式が存在している

ワイヤーよりも油圧の方が取り回しの自由度が高い

さらにフレームがアルミのツインスパーのように大きな面積を占めたり、タイトなカウルが装着されたりと、以前より隙間がなくなりワイヤーの取り回しに苦労するようになった点もあります。油圧式なら金属パイプを介した取り回しにすれば、狭いところでも貫通させることができるからです。
またワイヤー式には長年使い続けると、ワイヤーが摩耗して切れることもあるのに対し、油圧式にはその心配がありません。

しかし弱点もあります。ブレーキと異なりクラッチレバーの操作には相応のストロークが必要となります。そこで油圧のピストン比でこれを稼ぐスペースがレバー側もエンジン側にも確保が難しく、油圧式であっても軽い操作にできにくいからです。これはレースのように一瞬でクラッチ操作をしたい状況には不利です。

そしてワイヤー式だと、わずか0.1mmの範囲で半クラッチをコントロールできていたのが、油圧式だと熱膨張していく段階まで微妙に対応していくのが難しいのが実際で、レーシングマシンではクイックシフターの普及もあって使われない傾向にあります。最新のスーパースポーツでも、この流れでワイヤー式が使われているというわけです。

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油圧式はクラッチの繋がる場所が変わりにくい

油圧式のメリットは、クラッチプレートが減ったときや膨張したときでも、クラッチが繋がる位置が大きく変わらないことが挙げられる。またワイヤーのように切れる心配をせずに済むことなど、メンテナンスフリーな構造といえる

ワイヤーの方が停止時の握力は少なくて済む?

コントロール性の問題だけでなく、ワイヤー式にはもうひとつのメリットがあります。クラッチを切ったままでいる交差点の信号待ちのような状況だと、ワイヤーを包むアウターチューブとの接触抵抗で必要とする握力が少なくて済むのです。油圧式ではクラッチを切ったままでも必要な握力は変わりません。これがそれほど握力を必要としない程度であっても、一定時間以上だと意外なほど辛くなるのです。
そのためにツーリング目的が前提のバイクであっても、あえてワイヤー式にするケースもあります。

あるエンジニアがいっていましたが、油圧式だとコストもかかるのに高級なバイクには使わないといけない……というような風潮があったそうです。いうまでもなく、ボクはワイヤー式のほうがありがたいと思う派です。

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ワイヤー式は繊細な操作にも対応する

停車時などにレバーを握り続けるときに重さを感じにくいことやダイレクトな操作性が得られることがワイヤー式のメリット。昔ながらの方式ではあるが、電子制御化が進み、クイックシフターが装備されるなど最新スポーツモデルに使われるケースが増えている